今年も育成選手4人入団
ロッテは今年10月に行われたドラフト会議で育成選手を4人指名した。支配下で指名された選手に比べると、現時点では知名度、注目度は低いかもしれない。プロ入りしてからの活躍次第で、自分たちの未来を明るくすることができる。
ロッテでは、育成選手でプロ入りした岡田幸文(現楽天コーチ)が2年連続でゴールデングラブ賞を受賞し、西野勇士は14年から3年連続20セーブを挙げ、トミー・ジョン手術から復帰した今季は37試合に登板して防御率1.73と完全復活を遂げた。ロッテ投手陣に欠かせない存在だ。近年では和田康士朗が21年に盗塁王のタイトルを獲得し、今季も開幕前に小沼健太と佐藤奨真、7月30日に山本大斗が支配下選手となり、小沼が5月26日の広島戦、佐藤奨が6月12日のDeNA戦でプロ初勝利を挙げた。
野手に関して言えば、岡田は守備、和田は足、山本は長打力と“一芸に秀でた選手”が支配下選手登録を掴めている印象がある。高卒2年目で支配下登録をつかんだ山本は1年目にプロ初出場となった3月20日のDeNA戦で田中健二朗からプロ初本塁打を放つなど、5本のアーチを描くと、2年目の今季は支配下登録される前の7月29日までにチームトップの6本塁打。7月6日の楽天戦では4-4の11回に決勝3ラン、7月8日の西武戦は0-0の7回に先制ソロ、7月27日のヤクルト戦では2-3の8回にレフトへ弾丸ライナーの逆転2ランと、チームトップの本塁打数だけでなく、試合を決める重要な場面での一発が多かった。
投手はじっくりと育成し、西野や森遼大朗は大卒がプロ入りしてくる4年目のオフに支配下選手登録を掴んでいる。森は入団当初は故障が多く、左膝の手術明けということもあり入団会見に松葉杖姿で参加し、18年1月に行われた新人合同自主トレは別メニュー。同年6月に全体練習に合流し、9月9日のBC・武蔵との二軍練習試合でと初実戦を踏み、9月19日の楽天戦で公式戦デビューを果たした。1年目は二軍の公式戦1試合の登板にとどまり、2年目も7月に月間3試合・11回1/3を投げて、2勝0敗、防御率0.79の好成績を収めたが、シーズン終盤に右肘を痛め離脱。3年目にチームトップの61イニングを投げると、4年目の昨季は開幕してから大きな故障なく投げ、イースタントップの10勝を挙げた。そして、オフに支配下選手となった。
育成選手たちの武器
支配下選手登録となるために、自身の強み・武器を知り、一軍で活躍するためにどんな選手になっていく必要があるか、どんな技術を身につける必要があるのか考えて練習、試合に挑むことが大切だ。和田や森が育成選手から支配下選手になる過程を取材してきて、和田からは自身の武器を知る・磨くことの大切さ、森からは一足飛びではなく一歩ずつ成長していくことの重要性を学んだ。
7日にロッテ本社で行われた新入団会見で、育成で入団した4選手に「支配下選手になるためにどんな技術を磨き、どういうアピールをしていきたいのか」という質問をぶつけた。
▼ 吉川悠斗投手(育成1位・浦和麗明高)
「自分のアピールポイントは真っ直ぐと変化球の緩急をつけた投球だと思っているので、まずは真っ直ぐを磨いていきたいです。その後、変化球を低めに集めたりして、球速以上に球速差があるように見えるピッチングができるように、支配下登録されたらなと思います」
▼ 白濱快起投手(育成2位・飯塚高)
「体も全然できていなくて、体も細いので体づくりをこの1年間やっていきたい。角度のある真っ直ぐが自分の売り、この先伸ばしていけたらなと思います」
▼ 勝又琉偉内野手(育成3位・富士宮東高)
「まずは体づくりというところから始まって、自分の売りはスピードであると思うので、攻守で安定性、確率性のある選手を目指してやっていきたいと思います」
▼ 黒川凱星内野手(育成4位・学法石川高)
「打撃の技術を特に磨いていきたいと思っています。フィジカルを強化してプロの強い球に負けない、再現性を高く打率が残せるようなバッティングをして、走攻守全てにおいてトップレベルなアピールをしていきたいと思います」
この4選手の中から数年後、チームの顔、そして日本代表になっている選手が出ているかもしれない。ただ支配下登録の枠を争うのはこの4人だけではない。このオフ育成選手となった土肥星也、古谷拓郎をはじめとした育成選手たちとの競争もある。森が高卒でプロ入りしたときは高卒の育成投手は森しかいなかったが、現在は1学年上に田中楓基、永島田輝斗がおり、当時と状況が異なる。じっくりと体を作りをしながらも2年目以降、結果を残していく必要がありそうだ。その道のりは険しいが、未来を切り拓くのは自分自身。将来支配下登録となって一軍で活躍するため、1日1日を無駄にすることなく過ごしていって欲しい。勝負は始まっている。
取材・文=岩下雄太