通算130勝の沢村賞右腕「また違う形で金子千尋を見せていけたら」
日本ハムから自由契約となっていた金子千尋投手(39)が23日に会見を行い、今季限りで現役を引退することを表明。今後は日本ハムの「特命コーチ」としてアメリカにコーチ留学することも発表した。
金子は長野商高からトヨタ自動車を経て2004年ドラフト自由枠でオリックスに入団。14年には投手2冠に沢村賞、リーグMVPにも輝くなど、球界屈指の技巧派右腕として活躍した。
大型契約が終わった18年オフに自由契約を経て日本ハムに加入すると、登録名を「金子弌大」に変更。移籍後は新戦術“第2先発”というリリーフの役回りも経験したが、なかなか成績が振るわず、今季はデビュー後最少となる3試合の登板に終わっていた。
日本ハムから戦力外通告を受けた後も、現役続行を目指しトレーニングを続けていたものの、NPB球団からのオファーがなく引退を決断。今回の会見は「リアルタイムで僕の声を少しでも多くの方に聞いてほしい」と球団に直訴し、日本ハムの公式Youtubeアカウントで生配信された。
スーツ姿で席についた金子は、「オリックスで14年、ファイターズで4年、順風満帆とはいえる成績ではなかったかもしれませんが、入団したときの自分を考えると、よくやったんじゃないかと思います」と、通算130勝を挙げた18年間の現役生活を振り返った。
落ち着いた丁寧な口ぶりで、オリックスや日本ハムの球団関係者、ファンへの感謝を述べていくなかで、思わず言葉が詰まったのは家族への思いを語っていた時だった。「どんなときでも僕の味方でいてくれて、辛いこともたくさんあったと思います。迷惑もたくさんかけたしまったと思います。それでも、いつも暖かく家から送り出してくれた妻、家族……。その支えがなかったら本当に今の僕はありません。負けて帰ってきたときも明るく迎えてくれたことに本当に助けられてここまでこれました。本当にありがとうございます」と涙を堪えるように言葉を紡いだ。
また、前日に自身のSNSで会見を告知した際には反響が大きく、「辞めないでほしいとか、引退だけはしてほしくないとか、僕にとって嬉しい言葉をかけてくれたのは嬉しかったです」とファンからのメッセージに感謝。「その期待に応えることはできませんが、また違う形で金子千尋を見せていけたらと思います」と話した。
今後は、スプリングトレーニングが行われる来年2月から約半年間渡米しコーチ修行を積む予定で、「選手を評価して、こうすれば伸びる、こうしたら良くなるという“見る目”を付けたい」とコメント。「ただ僕が現役中にやっていたからやれという、根拠のない指導はしないようにしたいと思います。その選手のいいものをどんどん伸ばせるような、スケールの大きな選手をひとりでも育てることができたらなと思います」と、指導者としての意気込みを語った。