球団右打者初の5年連続30発
2年連続で優勝を逃した巨人。投打ともに苦しいシーズンを強いられ、終わってみれば5年ぶりのBクラスに沈んだ。
来季は逆襲が求められるところだが、このオフはそこまで目立った動きはなかった。FA権を行使した選手の獲得はなく、外国人選手も様々な報道はあれど、正式な獲得発表があったのはタイラー・ビーディ投手とヨアンデル・メンデス投手の2人だけである。
10月のドラフト会議で指名した新人や、これから獲得する新外国人選手がいれば上積みがあるかもしれないが、やはり軸となるのは現有戦力。レギュラー陣の奮起と、新たな力の台頭が待たれるところだ。
打線では、坂本勇人の後を受けて主将に就任した岡本和真にかかる期待が大きい。
今季の岡本は開幕から4番を任されていたが、8月11日の中日戦からは中田翔にその座を譲り、自身は6番へと降格。8月20日の阪神戦では5番に昇格したが、最後まで4番に復帰することはなかった。
岡本にとって不本意なシーズンであったことは間違いないが、それでも最終的には140試合に出場して5年連続となる30本塁打を記録。打率.252(520-131)で30本塁打・82打点の成績を残したのはさすがと言っていい。
5年連続の30本塁打は、巨人では王貞治(19年連続)と松井秀喜(7年連続)に続いて3人目。長嶋茂雄終身名誉監督や原辰徳現監督も成し遂げることができなかった記録であり、右打者としては球団初の快挙でもあった。
来季は6年連続の30本塁打超えを狙うことになるが、これは巨人に限らず長い球界の歴史の中でも大きな記録になる。6年連続で30本塁打以上をマークしたのは8人だけ。まさにレジェンドの領域となる。
“5年”と“6年”の間にある壁
NPBにおいて6年連続で30本塁打以上を記録したのは、前述した王と松井のほかに秋山幸二(9年連続)、山本浩二(8年連続)、野村克也(7年連続)、大杉勝男(6年連続)、タイロン・ウッズ(6年連続)、小笠原道大(6年連続)とそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
この8人のうち、日本で6年しかプレーしなかったウッズを除く7人は全員が2000本安打を達成。名球界入りを果たしているのだ。
一方、5年連続30本塁打で止まった選手に注目して見ると、クラレンス・ジョーンズに田淵幸一、池山隆寛、中村紀洋、ロベルト・ペタジーニの5人。このうち、2000本安打を達成したのは中村だけ。5年連続と6年連続というわずか1年の違いではあるが、“6年連続”の壁を破った選手は将来的に名球界まで到達する可能性がかなり高くなるということが見て取れる。
岡本は壁を打ち破って一歩先に進むことができるか。開幕から全試合4番打者として自身の力を発揮することができれば、30本塁打は当然のようにクリアしてくれることだろう。同時にそれは、巨人がV奪回するうえで欠かすことのできない条件でもある。
2022年シーズンはヤクルト・村上宗隆の圧倒的な数字が目立ったが、岡本も昨年と一昨年は本塁打と打点の二冠に輝いた実績がある。今年の悔しさも糧に、主将としてどんな活躍を見せるのか。9年目の岡本和真に大いに注目したい。
文=BASEBALL KING編集部