奥川と及川は故障でわずか1登板に終わる
プロ野球もいよいよキャンプイン。ファンにとっては待望の球春到来を迎える。
このオフシーズンは、NPBで実績ある有力選手を多数獲得したソフトバンクの大型補強が話題となったが、その他11球団も新外国人選手にFA移籍、トレード、初めて開催された現役ドラフトなどを通して新戦力を獲得。キャンプインを前に補強作は一段落し、ここからは現有戦力の上積みが大事になってくる。
昨季との戦力比較という点で各チームを見れば、特に“失速”した選手たちの復活は欠かせない要素だろう。
セ・リーグでは若手投手が故障に泣いた。リーグ2連覇を達成したヤクルトでは奥川恭伸投手、開幕9連敗から巻き返し3位に滑り込んだ阪神では及川雅貴投手。いずれも2021年シーズンにブレイクの兆しを見せ、さらなる飛躍が期待されていた若手投手たちである。
21年のヤクルト日本一の立役者でもある奥川は、昨季の本拠地開幕戦に先発するも緊急降板し、そのまま長期離脱。奥川と同学年の及川も脇腹のコンディション不良が影響し、一軍では1試合のみの登板にとどまった。
パ・リーグでは、16年ドラフト1位の佐々木千隼(ロッテ)が苦しんだ。佐々木は21年に中継ぎとして54試合に登板し26ホールド、防御率1.26の好成績を残した。しかし、昨季は23試合の登板で防御率6.39と低迷。不本意なシーズンだっただろう。
先発ローテーション、それもカード頭を任せられる奥川はもちろん、貴重な左腕の及川に、勝ちパターン入りも期待できる佐々木。いずれも2021年の輝きを取り戻すことができれば、チームにとっては確実に戦力の上積みとなる。
わずか1年で背番号“剥奪”も
野手では、松原聖弥(巨人)がその筆頭だろうか。育成契約からプロキャリアをスタートした松原は、20年に頭角を現すと、21年は外野のレギュラーポジションを掴み135試合に出場。打率.274(431-118)、育成ドラフト出身者としてはNPB史上最多となる12本塁打と結果を残した。
その活躍が認められ、21年終了後には亀井善行(現コーチ)が背負っていた背番号9を託された。チームとしてもレギュラー格としての期待をかけていたわけだが、昨季は50試合の出場で打率.113(71-8)、本塁打は0本と低迷。背番号9を1年で返上することになってしまった。
その他にも、林晃汰(広島)や岸潤一郎(西武)も苦しんだ。いずれも2021年に規定打席にこそ届かなかったものの、100試合以上に出場。林は三塁、岸はレギュラー不在の中堅で存在感を示していたが、昨季の林は不振で一軍出場がなく、岸は股関節の故障で出場45試合と大幅に出番を減らした。
松原と岸には、ともに外野3ポジションを守ることができる強みがある。また、巨人も西武も外野のポジションが3つとも埋まっているわけではなく、アピール次第でレギュラーに返り咲く可能性は十分にありそうだ。
広島はこのオフ、林の守る三塁がメインポジションであるマット・デビッドソンを獲得した。デビッドソンはMLB通算54本塁打の実績がある右打ちの大砲だが、日本で結果を残すことができるかは未知数。右と左の違いはあるものの、林も同じ大砲候補である。再アピールに成功すればレギュラー争いに名乗りをあげてくるだろう。
まもなく始まる春季キャンプと、その後のオープン戦は、選手たちにとって生き残りをかけたサバイバル。逆襲を期す男たちのアピール合戦に注目だ。