トレードでライバル加入、DeNA・森は勝負のシーズン
第5回WBCが3月に控える野球界。新シーズンが始まる前に各球団のチーム状況を探りながら、活躍が期待される若手を球団ごとにピックアップ。今回はセ・リーグ編。
●ヤクルト:山下輝(投手/大卒2年目)
昨季はリーグ連覇を果たしながら、チーム防御率はリーグ4位の3.52だったヤクルト。中でも先発防御率はリーグワーストの3.86となっており、規定投球回をクリアしたのは小川泰弘のみだった。
先発ローテ立て直しの一角を担ってほしいのが昨年のドラフト1位で2年目を迎える左腕・山下輝。ルーキーイヤーはわずか2登板(2先発)に終わったが、プロ初勝利を8回途中無失点で飾るなどポテンシャルの高さは示した。勝敗は付かなかったものの、オリックスとの日本シリーズ第5戦(京セラD大阪)でも5回3失点と力投。2年目の今季はシーズンを通して活躍し、復活が期待される奥川恭伸らとともにチーム力を底上げしたい。
●DeNA:森敬斗(内野手/高卒4年目)
スピード感溢れるアグレッシブなプレースタイルで遊撃のレギュラー定着を狙う2019年のドラフト1位。軽快な足運びと三遊間深くからでも矢のような送球を放つ強肩を兼ね備え、守備面ではすでに高い評価を受けている。
3年目だった昨季はオープン戦で右太もも裏の肉離れと左足首捻挫の大ケガを負い、約3ヵ月間の長期離脱。復帰後は打撃面で苦しみ、61試合の出場で打率.234、2本塁打、6打点、5盗塁、OPS.586の成績に終わった。特に150キロ超えの直球に差し込まれる打席が多く、全168打席に対し三振数は42。出塁率は.293に沈み、自慢の快足を披露する機会が少なかった。新シーズンは大和と柴田竜拓に加え、トレードで獲得した京田陽太らとポジションを争う。森にとっては勝負の1年になりそうだ。
●阪神:森木大智(投手/高卒2年目)
昨季はリーグ1位の先発防御率2.81を記録した阪神。その中から、先発登板数チーム4位のガンケル、同5位のウィルカーソンが退団。同7位の藤浪晋太郎はポスティングでのメジャー移籍が濃厚な状況となっている。それでも、青柳晃洋、西勇輝、伊藤将司の3本柱を軸に駒は揃っている先発陣。才木浩人や西純矢ら、期待の若手も多い。
その中で注目したいがの2年目を迎える森木大智。一軍デビュー戦となった昨年8月28日の中日戦(バンテリンD)は6回3失点で負け投手となったが、5回まで圧巻の1安打投球を披露。1年目からファームでの平均ストレート球速は150キロに迫り、変化球の精度も首脳陣から高評価を得た。まだ19歳ながら完成度が高い本格派右腕。2年目は首痛の影響で出遅れる見込みだが、新生・岡田阪神に欠かせない存在になりそうだ。
秋季キャンプで新監督の目に留まった広島の2年目左腕・森
●巨人:井上温大(投手/高卒4年目)
失点数(589)が得点数(548)を大きく上回った2022年の巨人。チーム防御率はリーグワーストの3.70で、先発防御率も同4位の3.64と振るわなかった。V奪還へ投手整備は急務。WBC日本代表に選ばれた戸郷翔征に次ぐ若手の台頭が望まれる。
昨季終盤に大きなインパクトを残したのが左腕の井上温大だ。2021年5月に左肘を手術した影響で一時育成契約となったが、2022年7月に支配下復帰。同年9月23日の中日戦で待望のプロ初勝利を挙げ、11月には強化試合で対戦した侍ジャパン打線を3回1安打無失点に封じ、その名を全国に轟かせた。躍動感のあるフォームから最速150キロの直球を小気味よく投げ込み、日本代表メンバーを圧倒。快投を見守った原辰徳監督は「チームにとって非常にいいニュース」と4年目のブレイクに期待を寄せた。
●広島:森翔平(投手/社会人出2年目)
即戦力ルーキーとして期待された昨季は、オープン戦で結果を残せず開幕二軍スタート。それでも9月7日の中日戦(バンテリンD)でプロ初勝利を挙げるなど、8試合(2先発)の登板で1勝0敗、防御率1.89をマークした。宮崎・日南での秋季キャンプでは、紅白戦2試合(計5イニング)に登板し無安打無失点、8奪三振のパーフェクト投球。今季から指揮を執る新井貴浩監督から「いいものを見せてくれた」と高評価を得た。
広島の先発陣は、森下暢仁が昨年10月に「右肘関節鏡視下骨棘(こっきょく)切除、右肘関節内滑膜切除」の手術を受け、床田寛樹は8月に右足関節を骨折し、まだリハビリ段階。左右の柱が開幕に間に合うか不透明なこともあり、森にかかる期待は大きい。
●中日:土田龍空(内野手/高卒3年目)
昨オフ、チームは正遊撃手だった京田陽太をDeNA、正二塁手だった阿部寿樹は楽天へ放出。二遊間のレギュラー争いは文字通りゼロからのスタートとなる。昨秋のドラフトで村松開人(2位・明大)、田中幹也(6位・亜大)ら、活きの良い新人内野手を多数獲得。ハイレベルな競争に期待したいところだ。
若返りを図るチームの“旗印”として期待したのが高卒3年目を迎える土田龍空。2年目だった昨季は軽快な守備を武器に自己最多の62試合に出場したが、打率.248、0本塁打、12打点、OPS.573と打撃面での課題が露呈した。ただ、伸びしろは多大にあり、他球団の選手からも「顔つきがいい」とブレイク候補に推す声が多数。チームでは昨季、正右翼手の座をつかんだ岡林勇希が、最多安打のタイトルを獲得するなど飛躍。先輩に続く“3年目の大ブレイク”に期待が膨らむ。