中日・小笠原慎之介 (C) Kyodo News

◆ 「数年が勝負」

 いつ言うのか。中日・小笠原慎之介は考えた。

 2月のキャンプが差し迫ったら口にできないし、考えもしなくなる。昨年12月はすでに過ぎた。最後のチャンスは、ぼんやりと、1月だと思った。

 同月中旬、自主トレを公開した沖縄・北谷球場で、将来的なメジャー挑戦の考えを明かした。

 「野球を始めた小学校からの夢です。夢が現実になるか、数年が勝負です」

 今年10月で26歳。年齢を考慮すると、ひとつの目安は2~3年後。30代になっての挑戦は厳しくなる。移籍するならば、海外FA権取得を待たないポスティングになるとみられる。

◆ 「タイトルもとりたいです」

 きっかけのひとつは、年明けにマイアミで行った初めての米国自主トレだった。

 もともと、野球をはじめた小学生のころからメジャーリーグを身近に感じていた。そういう世代なのだろう。

 「松坂さんとかジョン・レスター、サバシア、フェリックス・ヘルナンデス、ヨハン・サンタナ……」。好きだった選手はポンポン出てくる。

 訪れた米国の施設のボスも、気持ちを昂ぶらせた。ドジャースなどで活躍した通算135勝のラモン・マルティネスのジムだった。サイ・ヤング賞に3度輝いたペドロ・マルティネスの兄としても知られる。

 多くのメジャーリーガーが通う。昨季までヤンキースで活躍したチャップマンを見て「すごくデカかったです」。巨人からロッテへ移籍するグレゴリー・ポランコとは記念撮影もした。

 堂々と海を渡るために、まずNPBで圧倒した数字を残したい。

 「まだ規定投球回も2年連続、ギリギリで到達しただけです。2ケタも昨季の1度です。今年、チーム内はもちろん、NPBで誰にも負けないような成績を出したいというのがモチベーションです。タイトルもとりたいです」

 一番近いタイトルは奪三振か。昨季142個で、154個でトップだった巨人・戸郷翔征に及ばず2番目だった。

◆ 目指すは3.31東京ドーム

 まずは開幕投手を狙う。チーム内の競争相手は大野雄大や柳裕也ら。意気込みを問われて「(やりたい気持ちは)ボクが一番強いと思います。誰にも負けないです」と即答した。

 なぜやりたいかも間髪入れずに言葉にする。「チームの顔ですから」。3.31のシーズン開幕、敵地・巨人戦のまっさらなマウンドに是が非でも立ちたい。

 新球に、ペドロ・マルティネスも操ったツーシームを用意している。兄・ラモンから手ほどきを受けた。

 「曲がり幅が小さくて球速の出るハード系と、シンカー系です」

 人さし指と中指を開き、指を縫い目に掛ければ、スピードの出るハード系。閉じる握りは5本の指いずれも縫い目にかからない。それがシンカー系。球速を抑え、変化は大きい。

 自主トレをともに行う大野雄大は「慎之介は自信に満ち溢れている。すごいボール投げていますよ」と語った。

 エースをうならせる姿勢と、ボールの強さや勢い。夢を口にして動きだした小笠原のシーズン。竜のローテ投手としてフル回転する。

文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)

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