ニュース 2023.02.20. 16:08

世界一奪還へ「メジャー組解禁」「早期来日で調整」…キューバ代表の仕上がり具合は?

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中日と練習試合を行ったキューバ代表 [写真=阿佐智]

“赤い軍団”弱体化のキッカケは…


 かつては「アマチュアの雄」と呼ばれ、主要国際大会にプロの参加が認められていなかった時代に世界を席巻していた“赤い軍団”キューバ。

 2000年のシドニー五輪において野球競技にもプロ選手の参加が解禁となると、マイナーリーガーで構成された宿敵・アメリカの前に屈し、銀メダルに終わってしまう。

 それでも、2004年のアテネ五輪では見事金メダルに返り咲き。2006年のWBC・第1回大会は決勝で王ジャパンに敗れて準優勝に終わったものの、各国のトッププロが参加する大会でも、アマチュアリズムを貫くこの国の野球が十分に通用することを世界に知らしめた。


 しかし、皮肉なことに世界中のトッププロとの遭遇は、キューバ野球の弱体化をもたらした。

 自分たちの力量の国際相場を知ってしまった彼らは次々に亡命。母国は彼らを「国を捨てた者」とみなし、ナショナルチームから追放してしまった。

 その一方で、敵国であるアメリカ以外の国のプロチームへの選手派遣の道を模索したが、トップ選手の多くは世界の頂点目指し、時には危険をおかしてアメリカを目指した。

 こうしてトップ選手の抜けた“赤い軍団”は、いつの間にか世界野球のトップ争いの舞台から遠ざかるようになってしまったのだった。


早々と沖縄に入り調整中


 しかし、今回の『2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™』に向けて、キューバはその舵を大きく切った。ナショナルチーム編成に当たって、アメリカへの亡命者にも門戸を開いたのだ。

 各選手の事情から“最強軍団”の編成とまではいかないようだが、メジャーリーガーを含めたナショナルチームが世界一に向けて編成された。


 こうしてチーム・キューバは今月7日には来日し、早々に合宿を開始。沖縄でテストマッチを中心とした合宿に入った。

 17日に迎えた初戦では日本ハム相手に大敗を喫し、“アメリカ組”がまだ合流していないチームの戦力不足をうかがわせたが、19日に中日のキャンプ地・北谷で行われた一戦では、その実力の片鱗を球場を埋めた満員のファンに見せつける。


 国際試合とあって、19日の北谷は普段以上の賑わいを見せていた。

 試合開始時間前には、昨年まで中日でプレーしてたアリエル・マルティネス(日本ハム)や、現在も中日に在籍しているライデル・マルティネスとジャリエル・ロドリゲス、フランク・アルバレスの投手陣、それにメジャー組合流までチームに帯同するギジェルモ・ガルシアがいるとあって、多くのファンがキューバ選手がウォーミングアップをするサブグラウンドを取り囲んでいた。

 あくまで“練習試合”のため、入場は無料。休日ということもあってか在留米軍のアメリカ人たちの姿も見受けられ、試合前にスタンドは満員となった。

 さらに試合前には両国の国家演奏とキューバ大使による始球式も行われ、国際試合のムードで球場は盛り上がった。


若手中心の中日を相手に辛勝


 中日が若手中心のメンバーで臨んできたのに対し、キューバは本番に向けて現状のベストメンバーと思われる布陣で臨んできた。

 クリーンナップは3番にジュリスベル・グラシアル、4番にはアルフレド・デスパイネという日本でもお馴染みの面々が並び、5番にも元日本ハムのヤディル・ドレイクと元NPB組で中軸を独占。

 さらに、トップバッターには前回大会で「走り打ち」が話題になった元ロッテのロエル・サントスが入り、6番にはA.マルティネス、そして8番にもガルシアという上述した2名。日本と縁の深い選手たちが6人もスタメンに名を連ねた。

 また、キューバの先発投手カルロス・ビエラは、昨季メキシカンリーグの強豪サルティージョで元DeNAの乙坂智とプレーをし、4勝を挙げている。この試合でも、3回を3安打・無失点に抑えた。


 試合は初回、いきなりキューバが得点。一死二塁のチャンスでグラシアルが遊ゴロに倒れた直後、デスパイネが中日先発の鈴木博志からバットを折りながらもレフト前へ運ぶ適時打を放ち、三塁走者を迎え入れた。

 対する中日は序盤からエンドランや盗塁など足を使った攻撃を仕掛けたが、2度の盗塁企図はともにA.マルティネスの強肩に阻まれた。

 なかなか得点の糸口をつかめない中日に対し、キューバは4回から早くもリバン・モイネロを投入。まだまだ本調子には遠かったものの、1回を無安打に抑えた。

 中日の反撃は6回。5回から登板したマルロン・ベガの制球難につけこみ2点を奪取。昨季日本海オセアンリーグ・石川でプレーした右腕を攻め、いったんは逆転する。

 しかし、キューバも7回にドレイクのセンターオーバーの二塁打を足がかりにして、A.マルティネスが犠飛。試合を振り出しに戻す。

 こうして迎えた9回。二死一・二塁から再三にわたりショートで好守をみせていた9番のマテオが適時打を放ち、勝ち越しに成功。この1点を9回に登板したフランキー・キンタナが守りきり、キューバが3-2で中日を下した。


 “一軍半”の中日相手に辛勝と、少々物足りなさが目立った試合だったが、これから“メジャー組”の8人が合流することを考えると、チーム力はまだまだこんなものではないだろう。

 キューバ代表はこのあと21日(火)に浦添でヤクルトと、翌22日(水)は那覇で巨人との練習試合を行い、九州本土へ移動。23日(金)に宮崎でソフトバンクと対戦した後、第1ラウンドの開催地・台湾へ向かう。


文=阿佐智(あさ・さとし)

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