開幕ローテ入りへアピール
「先発のつもりで調整してきているので、今は先発の気持ちでいます」。
今から2週間前の石垣島春季キャンプ中の2月8日に取材した時に、このように決意を述べていたロッテ・西野勇士は、ここまで対外試合2試合・6イニングを投げて1失点、23日の日本ハムとの練習試合では先発登板し4回を無失点に抑えた。
日本ハムとの練習試合では初回先頭・江越大賀から空振り三振を奪った101キロカーブは素晴らしかった。同日の日本ハム戦の映像を見ると、変化球はカーブが多めで、西野の武器であるフォークを投げていないように見えた。シーズン開幕に向けて、色々と試しながら調整しているのだろう。
ストレートの球速アップ
西野は20年6月に『右肘側副じん帯の手術』を受け、本格復帰初年度となった昨季は新型コロナウイルス陽性判定を受け離脱した時期はあったものの、37試合に登板して3勝3敗15ホールド、防御率1.73という成績を残した。
昨季は右肘トミー・ジョン手術明けということもあったのか、前半戦は連投が1度もなく、しっかりと登板間隔をあけてマウンドに上がっていた。7月27日に新型コロナ陽性判定を受け離脱すると、8月14日のヤクルトとの二軍戦で実戦復帰し、8月19日、20日の日本ハムとの二軍戦ではトミー・ジョン手術後初めて連投。8月23日に一軍復帰すると、23日、24日の西武戦で連投し、24日の西武戦ではオグレディの初球にボールとなったが150キロを計測した。
新型コロナから復帰後、ストレートの球速が150キロ以上計測する試合が増え、9月26日のソフトバンク戦では甲斐拓也に投じた初球、2ボール2ストライクから投じた5球目に最速152キロをマーク。
19年5月に取材した時にストレートの球速が145キロ、146キロを計測し、気温が上がる夏場に球速はさらにアップするのか質問すると、当時西野は「気温は関係ないと思います。(19年の)開幕戦で149キロとか出ているので、もうちょっと自分のなかのタイミング、投げ方があってくれば、もうちょっと出るのではないかなと思います」と話していた。
17、18年低迷したが、19年に“新しい感覚”をつかみ復活。過去の取材で気温は関係はないと話していたが、トミー・ジョン手術後にまた新たな“感覚”を掴んだからストレートの球速が上がったということなのだろうかーー。
西野は昨年8月以降、ストレートの球速がアップした理由について「1回コロナで休んで、その後から急に(ストレートの球速が)上がってきたんですけど、新しい感覚というのは、ちょっとあるかもしれないです。肘を下がらないようにというのをしっかりドライブラインのボールとかでトレーニングをやり直したというか、コロナ明けで投げるのを作るためにしっかりイチからやり直すというか、自分で必要な動きを確認して作り直したら良くなりましたね」と教えてくれた。
コロナから復帰後、ストレートだけでなく、新たな変化球を投げているように見えた。8月24日の西武戦で愛斗に2ボール1ストライクから4球目に空振りを奪った127キロの縦に落ちるスライダー、9月12日の日本ハム戦で上川畑大悟を1ボール2ストライクから空振り三振を奪った124キロ縦に落ちるスライダーがそうだ。西野が投げている変化球といえば基本的にはフォーク、スライダー、カーブの3球種。
西野は「縦カーブは新しく投げはじめました」と、縦に落ちるスライダーに見えた変化球は“縦カーブ”とのこと。“縦カーブ”は「前から投げられたんですけど、あんまり使っていなかっただけです」と、実戦で使う機会があまりなかった球種のようだ。
昨年8月以降、必要な動きを確認しストレートの球速がアップし、変化球も新たに“縦カーブ”を投げはじめ、今季は昨季の後半戦を踏まえても、さらに“進化”した姿を見せてくれそうな予感。西野本人も「去年1年間でいいステップは踏めたと思います」と振り返る。
だからこそ今季は「小島もそうですし、(佐々木)朗希とかに見劣りしないようないい(若い)ピッチャーがいる。先発の競争が激しいですけど、まだまだ負けるつもりもないですし、勝ち抜いてしっかりそういう選手たちに見劣りしない成績を残したいなと思います」と若手に負けじと、“先発ローテーション”を掴み、結果を残すつもりだ。
取材・文=岩下雄太