話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、第5回WBCに臨む侍ジャパンで重要なキーマンとなる、福岡ソフトバンクホークス・近藤健介選手にまつわるエピソードを紹介する。
いよいよ近付いてきた、3月9日からのWBC本番。3大会ぶりの世界一奪還を目指す野球日本代表・侍ジャパンは、3日・4日とバンテリンドームナゴヤで、中日との強化試合に臨みます。
二刀流・大谷翔平(エンゼルス)と、日系メジャーリーガーのラーズ・ヌートバー(カージナルス)もチームに合流。事前の取り決めで、この2試合にダルビッシュ有(パドレス)、吉田正尚(レッドソックス)を含むメジャー組は出場しませんが、ようやく侍ジャパンが本格的に動き出します。
キャプテンを置かない方針を打ち出している栗山英樹監督。投手陣に関しては、メジャー組で唯一、宮崎合宿から合流したダルビッシュが実質的にリーダー役となってピッチャー全員を束ねていますが、野手のまとめ役は誰になるのか?
各球団の顔となるスターが勢揃いとあって、このメンバーをまとめるのはなかなか難しいところですが、ここにきて存在感が高まっているのが、今季からソフトバンクに移籍した近藤健介です。
1993年8月生まれで、現在29歳ですが、今年(2023年)30の大台を迎えるプロ12年目。シュアな打撃はプロの間でも評価が高く「4割打者に最も近い男」とも呼ばれています。2011年、ドラフト4位で日本ハムに入団。ルーキーイヤーの2012年はちょうど、栗山監督の日本ハム監督就任1年目でもありました。「栗山チルドレン」の1人であり、ダルビッシュから見ると、在籍はかぶっていませんが、ファイターズの後輩になります。
その1年後、日本ハムに入団したのが大谷翔平で、近藤は1年先輩になります。大谷がメジャーに移籍するまで5シーズン、同じユニフォームを着てプレー。オフのトレーニングも一緒に行ったり、2016年にはともに日本一の美酒を味わった仲です。若いメンバーが多い今回の侍ジャパン。彼らにとって大谷は「雲の上の人」であり、大谷も一緒にプレーしたことがない選手たちが多いので、合流してすぐ馴染め、と言われても難しいでしょう。近藤は大谷と若手野手をつなぐ重要な役割も担っているのです。
近藤は、侍メンバーに選出されたとき、大谷とLINEですぐに連絡を取ったそうで、そのやりとりについて記者に聞かれ、こう語りました。
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そう答えて、記者たちの笑いを取った近藤。考えてみれば、大谷を気安く「あいつ」と呼べるのは近藤くらいかも知れません。大谷にとっても、気心の知れた1年先輩がチームにいてくれることは、たいへん心強いことです。
また、鈴木誠也の離脱で、外野陣の起用をどうするかも重要な課題になりました。2日にバンテリンドームで行われた守備練習の際、近藤はセンターとライトを守り、こう決意を語っています。
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2月末に行われたソフトバンクとの壮行試合で、近藤は初戦に「5番・レフト」、2戦目に「2番・センター」でいずれも先発出場、守備位置も打順もオールラウンドでいく構えを見せました。
WBC本番では、レフトを吉田正尚が守ることになりますが、他の外野手3人、ヌートバー・牧原大成・周東佑京の使い方を考える上で、近藤が「センター・ライト、どっちでもやりますよ」と言ってくれたのは、これも栗山監督にとってありがたい話です。
そして近藤は、言うまでもなくバットでも頼りになる選手です。出塁率の高さは特筆もので、プロ通算で何と4割1分3厘。つまり10回打席に立つと、4回以上はアウトにならず、塁に出ていることを意味します。別名「出塁の鬼」。
ソフトバンクとの壮行試合も、初戦が四球・センター前・センター前。2戦目がセンター前・四球・センター前。6打席で4打数4安打2四球。打率10割で、かつ全打席出塁という完璧な仕事をしてみせました。ヒットが全部センター前ということも含め、まさに「出塁の鬼」の面目躍如です。
栗山監督は近藤を、ここぞという場面での代打の切り札として使いたい考えでしたが、鈴木誠也がいなくなり、ヌートバーも未知数ないま、近藤を先発で使うケースも増えそうです。
そして、面倒見のよさでも、近藤は侍に欠かせない存在になっています。こんな記事も……。
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松原と重信は、メジャーの外野組が練習試合に参加できないため、その試合限定の助っ人として呼ばれたメンバーですが、彼らも侍の一員として接する気遣いは素晴らしいの一言です。途中参加のヌートバーと牧原、そして吉田正尚についても、近藤は早くチームになじんでもらおうと、こんなプランを披露しました。
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「出塁の鬼」はまた「気遣いの鬼」でもありました。2月23日には他の野手陣とともに、ダルビッシュとも会食しています。その後、こんなコメントも。
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チームをまとめるだけでなく、向上心も忘れない。侍だけでなく、新天地・ソフトバンクでも近藤は今季、欠かせない存在になりそうです。
いよいよ近付いてきた、3月9日からのWBC本番。3大会ぶりの世界一奪還を目指す野球日本代表・侍ジャパンは、3日・4日とバンテリンドームナゴヤで、中日との強化試合に臨みます。
二刀流・大谷翔平(エンゼルス)と、日系メジャーリーガーのラーズ・ヌートバー(カージナルス)もチームに合流。事前の取り決めで、この2試合にダルビッシュ有(パドレス)、吉田正尚(レッドソックス)を含むメジャー組は出場しませんが、ようやく侍ジャパンが本格的に動き出します。
キャプテンを置かない方針を打ち出している栗山英樹監督。投手陣に関しては、メジャー組で唯一、宮崎合宿から合流したダルビッシュが実質的にリーダー役となってピッチャー全員を束ねていますが、野手のまとめ役は誰になるのか?
各球団の顔となるスターが勢揃いとあって、このメンバーをまとめるのはなかなか難しいところですが、ここにきて存在感が高まっているのが、今季からソフトバンクに移籍した近藤健介です。
1993年8月生まれで、現在29歳ですが、今年(2023年)30の大台を迎えるプロ12年目。シュアな打撃はプロの間でも評価が高く「4割打者に最も近い男」とも呼ばれています。2011年、ドラフト4位で日本ハムに入団。ルーキーイヤーの2012年はちょうど、栗山監督の日本ハム監督就任1年目でもありました。「栗山チルドレン」の1人であり、ダルビッシュから見ると、在籍はかぶっていませんが、ファイターズの後輩になります。
その1年後、日本ハムに入団したのが大谷翔平で、近藤は1年先輩になります。大谷がメジャーに移籍するまで5シーズン、同じユニフォームを着てプレー。オフのトレーニングも一緒に行ったり、2016年にはともに日本一の美酒を味わった仲です。若いメンバーが多い今回の侍ジャパン。彼らにとって大谷は「雲の上の人」であり、大谷も一緒にプレーしたことがない選手たちが多いので、合流してすぐ馴染め、と言われても難しいでしょう。近藤は大谷と若手野手をつなぐ重要な役割も担っているのです。
近藤は、侍メンバーに選出されたとき、大谷とLINEですぐに連絡を取ったそうで、そのやりとりについて記者に聞かれ、こう語りました。
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「『よろしく』みたいな感じでLINEをして。『頑張りましょう』みたいな感じで返ってきて」
「まぁ冷めてるんで、あいつは」
~『Full-Count』2023年2月13日配信記事 より
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そう答えて、記者たちの笑いを取った近藤。考えてみれば、大谷を気安く「あいつ」と呼べるのは近藤くらいかも知れません。大谷にとっても、気心の知れた1年先輩がチームにいてくれることは、たいへん心強いことです。
また、鈴木誠也の離脱で、外野陣の起用をどうするかも重要な課題になりました。2日にバンテリンドームで行われた守備練習の際、近藤はセンターとライトを守り、こう決意を語っています。
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『自分の中でどっち守ってもいい準備はしていきたい。両サイドを誰が守るか分からないですし、コミュニケーションもより大事になってくるので、そういうところは大事にしていきたいと思います』
~『スポニチアネックス』2023年3月2日配信記事 より
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2月末に行われたソフトバンクとの壮行試合で、近藤は初戦に「5番・レフト」、2戦目に「2番・センター」でいずれも先発出場、守備位置も打順もオールラウンドでいく構えを見せました。
WBC本番では、レフトを吉田正尚が守ることになりますが、他の外野手3人、ヌートバー・牧原大成・周東佑京の使い方を考える上で、近藤が「センター・ライト、どっちでもやりますよ」と言ってくれたのは、これも栗山監督にとってありがたい話です。
そして近藤は、言うまでもなくバットでも頼りになる選手です。出塁率の高さは特筆もので、プロ通算で何と4割1分3厘。つまり10回打席に立つと、4回以上はアウトにならず、塁に出ていることを意味します。別名「出塁の鬼」。
ソフトバンクとの壮行試合も、初戦が四球・センター前・センター前。2戦目がセンター前・四球・センター前。6打席で4打数4安打2四球。打率10割で、かつ全打席出塁という完璧な仕事をしてみせました。ヒットが全部センター前ということも含め、まさに「出塁の鬼」の面目躍如です。
栗山監督は近藤を、ここぞという場面での代打の切り札として使いたい考えでしたが、鈴木誠也がいなくなり、ヌートバーも未知数ないま、近藤を先発で使うケースも増えそうです。
そして、面倒見のよさでも、近藤は侍に欠かせない存在になっています。こんな記事も……。
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『宮崎では合宿のサポートメンバーとして参加していた巨人・松原と重信を常に気遣い、キャッチボールの際には、サポートメンバーの2人が端っこに回らないよう先回り。コンビを組む周東(ソフトバンク)とともに率先して端っこの位置を取り、他の侍メンバーと“サンドイッチ”する気配りを見せた。壮行試合の円陣の声出しでは、サポートメンバーに直接感謝の思いを伝える心遣いもあった』
~『東スポWEB』2023年3月3日配信記事 より
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松原と重信は、メジャーの外野組が練習試合に参加できないため、その試合限定の助っ人として呼ばれたメンバーですが、彼らも侍の一員として接する気遣いは素晴らしいの一言です。途中参加のヌートバーと牧原、そして吉田正尚についても、近藤は早くチームになじんでもらおうと、こんなプランを披露しました。
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『まだ(食事会の予定は)ないですけど、外野手でご飯に一度、行ったりとかコミュニケーションを。遅れてる分、向こうも気を使うと思いますし、こちらから積極的にコミュニケーション取って行けたらなって。翔平もそうですし、(吉田)正尚もそうですし、そこはあるのかな』
~『スポニチアネックス』2023年3月2日配信記事 より
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「出塁の鬼」はまた「気遣いの鬼」でもありました。2月23日には他の野手陣とともに、ダルビッシュとも会食しています。その後、こんなコメントも。
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『僕らが細かいことを意識しても(ダルビッシュは)もう一つ、二つ上のところを意識している感覚だった。やっぱりそこまでしないとあれだけの選手になれないのかなと思う。バッティング一つにしても、もっと細かく砕いて考えられるようになりたい』
~『西日本スポーツ』2023年2月26日配信記事 より
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チームをまとめるだけでなく、向上心も忘れない。侍だけでなく、新天地・ソフトバンクでも近藤は今季、欠かせない存在になりそうです。