一軍に合流
3月9日に球団から都内の病院で『右肩甲下筋肉離れ』と診断され、全治4〜6週間ほどかかる見込みと発表されていたロッテの髙部瑛斗が、わずか2週間弱で一軍の実戦に出場した。
24日の中日とのオープン戦に『3番・指名打者』で出場し、0-1の3回二死走者なしの第2打席、先発・小笠原慎之介が1ボール1ストライクから投じた外角146キロストレートをレフト前に綺麗に弾き返し、オープン戦初安打をマークした。
打線において、髙部が開幕前に復帰できたことはかなり大きい。昨年の今頃は開幕一軍、レギュラーを目指す立場の選手だったが、この1年でチーム内における立ち位置を高めたと言っていいだろう。
「タイトルを狙っていけるよう…」
大卒3年目の昨季はオープン戦で12球団トップの打率をマークし、開幕してからも大きく調子を落とすことなく1年間戦い抜き、リーグトップの44盗塁、リーグ2位の148安打、守っても外野手部門最多得票でゴールデン・グラブ賞を受賞した。2年目まではファームで2年連続打率3割以上をマークするも一軍に定着できずにいたが、レギュラーを掴み取り、大きく飛躍を遂げた。
一軍定着、レギュラー入りを狙った21年オフは「技術、フィジカル面、メンタル面、この3つの要素が全て揃っていなかった」と、一軍で打てなかった原因を分析し、技術、フィジカル、メンタルの向上を図ったが、今オフは「まずは体の面を重点的にやって、体が大事だなと感じたシーズンでもあったので、体をまずやって技術に繋げられるように」ということをテーマに過ごした。
そして、レギュラーとなって、初めての石垣島春季キャンプ。練習を見ていてレギュラーとしての自覚、風格というものを強く感じた。髙部自身、心境やチーム内での立ち位置の変化などはあったのだろうかーー。「扱ってくれかたは変わったなと感じますけど、僕はそれに満足したりとか、それに慢心したりしたらダメだと思います。僕もそういうふうにしようと思っていない。そこは変えずに自分らしく、やり続けられるようにやっていきたいと思います」と立場の変化に気負ったりすることなく、自身の技術向上に励んだ。
2月14日以降も石垣島に残ってキャンプを送り、関東に戻ってからは3月2日のDeNAとの春季教育リーグで『3番・指名打者』で出場して2安打すると、翌3日の西武との春季教育リーグに出場。しかし、3日の試合を最後に二軍戦の出場がなく、9日に『右肩甲下筋肉離れ』と診断された。開幕一軍が絶望視されていた中で、19日のDeNAとの二軍戦で実戦復帰し、昨季11勝を挙げた大貫晋一から安打を放つと、24日の中日とのオープン戦で一軍の試合に出場。なんとか開幕に間に合いそうだ。
今季に向けて、「去年は少し形になった成績を残せましたけど、その中でもよくない面とか、いい面がたくさん出たので、そこを少しずつでも上げてしっかり打撃のタイトルを狙っていけるような位置まで持っていきたいと思います」と打撃でもタイトル争いに顔を出すつもりだ。
また、打順についても石垣島春季キャンプ中の取材時点では「それは監督さんにいってくれた場所で勝負したい。そこは変わらず僕らしく」と、どの打順でも自分の役割を果たすつもりだ。
昨季以上にマークが厳しくなることが予想される中で、今季も髙部が何度も出塁し、得点圏で山口航輝、ポランコといった主軸に繋いでいきたい。
取材・文=岩下雄太