待望の新球場で日本一を目指す
新庄剛志新監督(昨年の登録名はBIG BOSS)を迎えたことで大きな話題となったものの、昨年は5位に9ゲームという大差をつけられての最下位に沈んだ日本ハム。
「優勝なんか目指さない」という方針から一転、今シーズンは「日本一を目指す」と宣言し、また待望の新球場である『エスコンフィールドHOKKAIDO』が開場することもあって、ファンからの期待も高まっている。そんなチームが浮上するためのキーマンは果たして誰になるのだろうか。昨年までのプレーと、チーム状況から探ってみたいと思う。
まず投手で最初に名前を挙げたいのが伊藤大海だ。
2020年のドラフト1位で入団し、2年連続で二桁勝利をマーク。しかし勝ち負けの数字を見てみると、2年とも10勝9敗と貯金はいずれもわずかに1にとどまっており、この数字に対して物足りなさを感じているファンも多いのではないだろうか。
それだけ期待値が高いのにはもちろん理由がある。昨年の東京五輪、そして今年のWBCと国際大会ではいずれも3試合を投げて無失点と抜群の安定感を見せているからだ。特にWBCでは1人の走者も許さない完璧なピッチングであり、強力投手陣の中でもその存在感は際立っていた。
チームでは先発、侍ジャパンではリリーフと役割が違ったということはもちろんあるが、日本代表のユニフォームを着て投げている時の姿からは、シーズンを通して貯金が1という数字の投手にはとても見えない。持っているボールの力を考えれば、もっと打者を圧倒できるポテンシャルはあるはずだ。3年目の今シーズンは最低でも15勝、そして二桁の貯金を稼ぐくらいの飛躍を期待したい。
投手でもう1人、キーマンとなりそうなのがドラフト2位ルーキーの金村尚真だ。
富士大では層の厚いチームの中で1年から先発を任され、リーグ戦通算成績は25勝5敗、防御率0.88という圧倒的な数字を残している。地方リーグということと、全国大会では4年間で1勝しかできなかったこともあって指名順位は2位となったが、完成度の高さは今年のルーキーの中でも屈指と言えるだろう。
最大の持ち味はその高い制球力だ。摂津正(元ソフトバンク)を彷彿とさせるテイクバックの小さいフォームでボールを上手く隠し、体の近くで鋭く腕が振れ、左右のコントロールミスが非常に少ない。打者の手元で鋭く変化するカットボールは必殺のボールで、緩急をつけるカーブも面白い。オープン戦でも見事な投球を続けており、開幕ローテーション入りが濃厚だ。現在の状態を維持することができれば、1年目の伊藤に並ぶような成績も期待できるだろう。
球団初の日本人40本越えの期待
野手で最大のキーマンとなるのはやはり清宮幸太郎だろう。
昨年は新庄監督からの指令で減量したことも奏功し、いずれもチームトップでキャリアハイとなる18本塁打、55打点と成績を残した。今年も順調に調整を続け、オープン戦でも12球団トップとなる5本塁打を放っている(3月26日終了時点)。打率は2割台前半とまだ確実性には課題が残るものの、5本塁打中2本が昨シーズンには見られなかった左方向への打球というところにも成長が感じられる。
そして清宮にとって大きな追い風になりそうなのが新球場のエスコンフィールドHOKKAIDOだ。昨年までの本拠地だった札幌ドームと比べて両翼は狭く、フェンスの高さも低くなるなど、ホームランが出やすい仕様となっているのだ。チームは日本ハムファイターズという名前になってから日本人選手で40本塁打をクリアした選手はいないだけに、今年は一気にその大台クリアを目指してもらいたい。
野手でもう1人期待したいのが3年目の五十幡亮汰だ。
中学時代に陸上の100メートル、200メートルで全国大会優勝を果たし、『サニブラウンに勝った男』という愛称でも知られるが、その脚力は間違いなくプロ野球の歴史の中でもナンバーワンである。
しかし1年目は太もも、2年目は腰を痛めていずれも長期離脱となり、2年間の通算成績は22安打にとどまっている。ただそれでも33試合の出場で12盗塁を決めているのはさすがという他ない。今年のオープン戦でも守備でフェンスに激突して途中交代となり、また怪我かと心配したファンも多かったが、大事に至ることはなく、打撃でもしっかり結果を残している。足の速さが注目されるが、肩の強さも一級品であり、外野手としての能力も高い。1年を通じて一軍に定着すれば、盗塁王のタイトル獲得も見えてくるだろう。
二刀流・矢澤宏太のポテンシャルは?
そして最後に挙げたいのが二刀流で注目されるドラフト1位ルーキーの矢澤宏太だ。
日本体育大では投手、外野手、指名打者でベストナインを受賞。プロ入り後も二刀流を継続している。まず即戦力として最も期待できるのが外野の守備と走塁だ。投手としても150キロを超えるスピードを誇るが、外野から見せる返球は既にプロでもトップクラスのレベルにあり、守備範囲も広い。
4年時には大学日本代表候補合宿での50メートル走で全体トップになるなど、その脚力も超一流で、ベースランニングの迫力も十分だ。まだ確実性には課題が残るが、飛ばす力も十分にあり、外野のレギュラー争いに加わってくることも十分に考えられる。
センター五十幡、ライト矢澤という布陣が実現すれば、12球団でもトップの外野陣になることも期待できるだろう。一方の投手としても短いイニングであればストレートは150キロを超え、スライダーも一級品だ。スライダー以外の球種が課題で、一軍の先発となると少し時間は必要だが、リリーフであれば1年目から戦力となることも十分に考えられる。チームは左の中継ぎが手薄なだけに、その穴を埋める存在としてもマッチしそうだ。ベースは外野手で、リリーフとしても登板するという大谷翔平とは違う形の新たな二刀流をぜひ確立してもらいたい。
他にも投手では根本悠楓、北山亘基、田中正義、野手では万波中正、今川優馬、上川畑大悟など飛躍が期待できる少なくない。彼らがポテンシャルを十分に発揮し、新球場のエスコンフィールドHOKKAIDOで躍動するようなことになれば、日本ハムがパ・リーグの台風の目となることも十分に期待できるだろう。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)