WBC戦士がプロ野球に凱旋
侍ジャパンの3大会ぶり3度目となる優勝に沸いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。その余韻に浸る間もなく、NPBのレギュラーシーズンは3月30日に開幕する。注目はやはりWBCで活躍を見せた選手たちだが、彼らのシーズンでの注目ポイントについて紹介してみたいと思う。今回はパ・リーグの投手3人についてピックアップした。
■ 山本由伸
生年月日:1998年8月17日(24歳)
身長・体重:178cm・80kg
投打:右投右打
出身地:岡山県
所属チーム:オリックス・バファローズ
メジャーでプレーする選手も含めて、現役の日本人投手でナンバーワンは山本だということを改めて証明したWBCだったのではないだろうか。1次ラウンドのオーストラリア戦では4回を被安打1、8奪三振の快投。準決勝のメキシコ戦では展開によって起用法が変わるという難しい状況だったものの、5回から7回まで強力打線をノーヒットに抑え込み、チームの逆転劇につなげて見せた。主に先発を任された4人の投手の中でもダントツとなる14.73という奪三振率をマークしたことも山本の実力をよく物語っている。昨年まで史上初となる2年連続での投手4冠(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率)に輝いており、そういう意味でも完全に追われる立場となっている。ただそんな立ち位置になっても、オフには左足をほとんど上げないフォームに変更するなど、守りに入るような姿勢は見られない。『山本が投げればオリックスが勝ち』、そんな印象を更に強めるような投球を見せてくれることを期待したい。
■ 佐々木朗希
生年月日:2001年11月3日(21歳)
身長・体重:192cm・92kg
投打:右投右打
出身地:岩手県
所属チーム:千葉ロッテマリーンズ
“令和の怪物”がついに世界デビューを果たしたWBCだった。1次ラウンドのチェコ戦では味方のエラーで1失点(自責点)、準決勝では先制のスリーランを浴びて4回を投げて3失点と結果だけ見ればそこまで目立つものではなかったが、ストレートは当たり前のように160キロを超え、140キロ台中盤から後半のスピードで鋭く落ちるフォークは強烈で、イニング数を大きく上回る三振を奪って見せた。大会前から『SASAKI』の名前は既にメジャー関係者の間でも有名だったが、改めてその能力の高さを示したことは間違いないだろう。昨年は惜しくも規定投球回到達と二桁勝利を逃したが、4月には完全試合を達成し、13者連続奪三振の日本記録を達成するなど好調時の投球は手をつけられないレベルにある。奪三振率は12.04、1イニングあたりの被安打と与四球で示すWHIPは0.80といずれも先発投手としては驚異的な数字をマークしていることからも、いかに支配的な投球を見せているかがよく分かるだろう。ポイントはとにかく1年間コンディションを維持できるかどうかという点だ。吉井理人新監督も今年は1年を通じて先発ローテーションを任せる予定と話しているが、それが実現すればタイトル争いに絡む可能性は極めて高い。山本由伸の牙城にどこまで迫れるかに注目だ。
■ 伊藤大海
生年月日:1997年8月31日(25歳)
身長・体重:176cm・82kg
投打:右投左打
出身地:北海道
所属チーム:北海道日本ハムファイターズ
パ・リーグの先発投手ではここまで紹介した山本由伸、佐々木朗希がタイトル争いの中心になりそうだが、そこに割って入る可能性を秘めた投手として推したいのがこの伊藤だ。そう思わせるのはやはり国際舞台での強さにある。一昨年はルーキーながら東京五輪でも3試合に登板して無失点と好投。韓国戦では相手打者からロジンをつけ過ぎではないかという指摘がありながらも、更にロジンをつける強心臓ぶりを発揮し“追いロジン”という言葉も話題となった。WBCでも3試合に登板し、1人の走者も許さず、決勝でもアメリカ打線を完璧に抑え込んでいる。そしてこの大舞台での強さはプロ入り後に始まったことではなく、大学時代にも3度出場した国際大会で21回2/3を投げて自責点1と圧巻の投球を見せていたのだ。勝負所でギアを上げることができ、コントロールを間違えない投球は安定感抜群である。そんな活躍のインパクトが強いからこそ、2年続けて10勝9敗という成績はどうしても物足りなさを感じてしまう。もちろん短期決戦でのリリーフでの出力を先発投手として1年を通じて発揮することは難しいが、それでも持っているポテンシャルを考えるとまだまだ成績を伸ばす可能性は高いはずだ。チームはもちろん、山本、佐々木と並んでパ・リーグを代表するエースの座を確立するシーズンとなることを期待したい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)