WBCで躍動したセ・リーグ3投手に注目
侍ジャパンの3大会ぶり3度目となる優勝に沸いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。その余韻に浸る間もなく、NPB(セ・リーグ)のレギュラーシーズンは3月31日に開幕する。注目はやはりWBCで活躍を見せた選手たちだが、彼らのシーズンでの注目ポイントについて紹介してみたいと思う。今回はセ・リーグの投手3人についてピックアップした。
■ 今永昇太
生年月日:1993年9月1日(29歳)
身長・体重:178cm・86kg
投打:左投左打
出身地:福岡県
所属チーム:横浜DeNAベイスターズ
栗山英樹監督がWBCの決勝戦となるアメリカ戦で先発を任せたのが今永だったが、その決断に異を唱えるファンはほとんどいなかったのではないだろうか。それくらい今大会での今永のピッチングは素晴らしいものがあった。1次ラウンドの韓国戦ではダルビッシュ有(パドレス)の後を受けて3イニングを1失点にまとめると、イタリアとの準々決勝でも1回を三者凡退、2奪三振と圧巻の投球を披露。決勝戦では緊張もあってか苦しい投球だったが、2回をターナー(フィリーズ)のソロホームラン1点に抑え、勝ち投手となっている。シーズンで期待されるのはもちろんエースとしての役割だ。過去7年のシーズンで3度の二桁勝利をマークしているが、2年連続で万全の結果を残したことはない。ただ、昨シーズンの後半戦は7勝1敗と圧倒的な投球を見せており、WBCでの投球を見てもワンランク上のレベルに到達した印象を受ける。ポイントはとにかくこの状態は維持できるかどうかだ。現在の状態を維持することができれば、自身初となる2年連続の二桁勝利の可能性は高いだろう。
■ 髙橋宏斗
生年月日:2002年8月9日(20歳)
身長・体重:186cm・86kg
投打:右投右打
出身地:愛知県
所属チーム:中日ドラゴンズ
今大会の日本投手陣でメジャー・リーグ関係者に最も驚きを与えた投手と言えばこの髙橋だったのではないだろうか。チーム最年少の20歳(大会当時)という若さながら3試合に登板。決勝ではリードを2点差に広げた5回から登板すると、トラウト(エンゼルス)、ゴールドシュミット(カージナルス)というアメリカの中軸から連続三振を奪い、1回を無失点に抑える好リリーフを見せた。躍動感あふれるフォームから投げ込むストレートはコンスタントに150キロ台中盤をマークし、その勢いはメジャーのトップクラスを圧倒する勢いがある。また140キロ台で鋭く落ちるスプリットも超一流と言えるボールだ。ボールの質に関しては、現在のセ・リーグでトップと言っても過言ではないだろう。昨シーズンは6勝7敗と負け越しているが防御率は2.47と見事な数字を残しており、打線の援護に恵まれなかった部分が大きかった。ただ高橋自身にももちろん課題がある。無駄なボールが多いため投球のテンポが悪く、立ち上がりから球数がかさむケースが非常に多いのだ。この点は野手の打撃、守備にも悪影響を与えている部分はあるだろう。ただ繰り返しになるが、ボール自体の威力は圧倒的であることは間違いない。制球力と投球テンポの部分さえ改善されれば、タイトル争いに加わることも十分期待できるだろう。
■ 戸郷翔征
生年月日:2000年4月4日(22歳)
身長・体重:187cm・84kg
投打:右投右打
出身地:宮崎県
所属チーム:読売ジャイアンツ
WBCでは第2先発として1次ラウンド初戦の中国戦と決勝のアメリカ戦に登板。中国戦ではソロホームランを浴びたものの、決勝では2回を無失点と見事に役割を果たし、チームの優勝にも大きく貢献した。特に素晴らしかったのが決め球となるフォークボールだ。ストレートと全く変わらない腕の振りから投じることができ、ブレーキ鋭く打者の手元で落ちる。アメリカ戦で奪った6個のアウトのうち、4個はこのフォークが決め球となったものだった。今年で高校卒5年目とまだまだ若いが、既に通算31勝をマークしており、過去2年間はローテーションを守りぬいているのは見事という他ない。特に昨年は課題だった夏場以降も調子を落とすことなく1年を通じて安定した投球を見せ、初の二桁勝利をマークし、最多奪三振のタイトルも獲得した。チームは昨年まで5年連続開幕投手を務めていた菅野智之が右肘の違和感で開幕ローテーションから外れることとなり、そういう意味でも戸郷にかかる期待は大きい。WBCでの経験を糧にして、今年は名実ともに巨人のエースとして十分な結果を残してくれることを期待したい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)