2023.04.06 18:00 | ||||
横浜DeNAベイスターズ | 4 | 終了 | 0 | 読売ジャイアンツ |
横浜 |
「1年目の投球は参考にもしていない」
DeNAに頼もしいサウスポーが帰ってきた。
巨人打線を相手に150キロに迫るキレのあるストレートを投げ込み、7回無失点8奪三振と圧巻のピッチング。今季初登板初勝利を挙げた東克樹の快投は、メスを入れた左腕の完全復活を印象付けるのに十分なものだった。
2017年ドラフト1位で立命館大からDeNA入りした東は、ルーキーイヤーに11勝を挙げ新人王を獲得。左肘の違和感を払拭できず20年2月にトミー・ジョン手術を敢行し、昨年は開幕投手に指名されながら1勝6敗に終わっていたが、今季初登板はプロ1年目の姿を思い起こさせるような快投だった。
しかし、当人は「もう5年も前のこと」とそっけない。
「僕自身も1年目の投球に関しては参考にもしていないんで。色んな人は僕の1年目の姿を強く思い描くと思いますし、比較されることも多いんですけど、過去は過去なんで。今は身体も変わったので、そこは過去に固執しないように、常に今の自分の身体がどうあるかを考えています」
満足に投げられない時期もあった左腕は、あくまでも“今”を生きることにフォーカスしている。
球速アップは副産物
日々レベルアップを目指す取り組みを続け、身体のみならず技術的にも変化した。
「今年のキャンプ以降にフォームのばらつきが出ていたので、自分で意識的に横の時間を長くしています。今も並進運動の時間を長くしようというところを意識して投げています」
調整の成果は球速となって表れ、「スピードは去年と比べて上がった」という。
ただ、「特に(球速を)上げたいと思ってやっている訳ではなくて、自分にしっくりくる、自分に合ったフォームが徐々にできつつある中で、上がっていったという感じ」とし、「球速をあげようとするとフォームが崩れてしまうというのが僕の悪いところでもある」と冷静に分析。
回転数にも「こだわってないです。こだわったら色々変わってくると思います。結果としてそういう数字が出ていたらいいなくらいです。ぼくは今はそこには焦点を当てていないんで。目に見えるモノ(数字)を追い求めていったわけではないです」と、あくまでフォーム固めの副産物といった認識だ。
ローテの一角「役割を果たせたら」
速く、強くなったボールを武器に、7イニングを89球でまとめた前回登板は、「非常に良かったと思いますし、細かな反省点はありますけど、ゼロに抑える、長いイニングを投げるというところは一番大事かなと思いますので」と手応えも掴んだ。
チーム全体として“ストライクゾーンでの勝負”をテーマに掲げており、三浦大輔監督も「ストライク先行でゾーンの中でファール打たせたり、カウントをよく作ってくれた」と評価。
東は「やっぱりゾーンに投げないと勝負にならないので、ゾーン内でどれだけ強度のある球、変化球も含めて投げられるかだと思います」と話した。
復活の第一歩を踏み出し「オープン戦はすごく調子の波がありましたけど、シーズンではそれをなくしていくというところを心がけて、先発として役割を果たせたらいいかなと思っています」と目を輝かせた左腕。
今後はWBCから帰ってきたエース・今永昇太、大物助っ人のトレバー・バウアーら実力者が先発ローテーションに加わり、東はローテーションの一角を守る立場に。
ブレない姿勢で進化を続ける背番号11は、しっかりとした芯の強さで戦い抜く。
取材・文・写真=萩原孝弘