指揮官も「いやらしい選手になってきた」
打率.452、出塁率.469はともにリーグトップ。OPSも1.049を叩き出す打棒を発揮しながら、時には意表を突くバントで相手をかく乱し、さらに守備でも好プレーを連発するなど攻守で躍動。10年目を迎えた関根大気に、ブレイクスルーの雰囲気が漂っている。
ファームの監督時代から関根をよく知る三浦監督も、「打席でも守備でも塁上でも、常にいやらしい選手になってきたなと思います。チームとしても非常に大きい存在」と、その成長ぶりに目を細める。
好調の要因について、本人は「自分がやれることしかできない」というシンプルな思考で挑んでいることを明かし、「自分のできることを探して、確立が良いことを選択できたらと打席では思っています」と語る。
続けて「ヒットを打とうとか、そういう欲を今は少なくして、2ストライクだったら絶対にバットに当てる。ボール球は振らない。その時できることに徹するというところで、ひとつだけを考えて取り組む」という姿勢が好結果につながっていると振り返った。
“浮かれない”強さ
「今はたまたまがヒットになってくれている」と、絶好調の中でも浮かれた様子は全く見られない。
それどころか「逆が絶対に来ると思っている。良い当たりが凡打になったり、絶対に下がってくるときが来るので、その準備もしている」。本人はあくまでも冷静だ。
その裏にあるのが、オフに単身乗り込んだメキシコでの日々。「10月に結果を残して、11月に全く結果を残せずに長引いて、ロースターを外れたりとかいろいろな悔しい思いをした。あの時すぐに復活できず、すぐ結果に結びつけることができなかった」と忸怩たる思いをした経験がある。
「あの時いろいろな工夫をしながら、考え方や目標の持って行き方とか、いろいろトライしながらやっていた。あそこで経験したような“悔しい時”が、こっちでも絶対に来る。その時にトライしたいし、活かしたい」と語り、苦心の上で結果を残した武器を懐に忍ばせる。
だからこそ、充実した現状にも「好循環で運が良いところがある」と言い、「セーフティバントにしても、アウトになる確率もあった中で、結果的に暴投になったりとか。あれをして、次はアウトになることも絶対ある」と分析。
「今の心の持ちようを、そういう時でもやってみるというところが次のトライになるのかなと思って、その準備をしています。結果が出てこないとネガティブなものを想像したりとか、そういう部分が強くなって行くと思う。この状態でやれたら、また確率が上がっていくのかなと」とし、今の考え方や感情を新たな引き出しとして加え、自らのピンチに備えていく。
「プロ野球選手でいられる時間は有限」。常にそう口にする関根大気。プロ10年の経験と、冷静な分析力で磨き上げた野球IQを開花させるときが、目前まで迫っている。
取材・文=萩原孝弘