「この時を想像しながら頑張っていました」。
ロッテの森遼大朗が19日の日本ハム戦に先発し、5回1/3を投げ2失点でプロ初勝利を手にした。プロ初勝利を挙げるまでの道のりは長く険しいものだった。森は17年育成ドラフト2位で入団。左膝の手術明けということもあり入団会見に松葉杖姿で参加した森は、18年1月に行われた新人合同自主トレは別メニュー。同年6月に二軍の全体練習に合流した。
当時森は「メニューは毎日別々というか、日替わりでやっています。(練習後に一人残り練習は)自分が合流したばかりで、みんなと遅れている部分がある。ちゃんとしたやり方を教わりながらやっています。人より少し遅くなっている部分がありますね」と日々のトレーニングについて明かしていた。
その時、森の練習を最後まで見守っていたのが当時二軍投手コーチだった小野晋吾コーチだ。「まだ彼は育成していかなければいけないピッチャーなので、みんなと同じようにというか、今までは種市、島、原、成田にしても2対1だった。マンツーマンで色々できるので、膝の状態を確認しながら、少しずつ体力強化と技術練習をやっている段階です」。
9月9日のBC・武蔵との二軍練習試合で初実戦を踏み、「練習試合で投げたのがあったので、そこまで緊張とか不安はなく挑めた部分があります」と、同年9月19日の楽天戦で公式戦デビューを果たし、同日の最速は143キロだった。
当時小野コーチは「ストライク先行でしっかり投げ切れていたと思うので、大きな当たりとはいってもプロのバッターをストレートで打ち取れたのは評価できますし、良いスタートをきれたのではないかと思います」と評価していた。
1年目のオフに台湾で行われたウインターリーグに参戦し、2年目の19年は2月の春季キャンプで台湾・ラミゴ戦で一軍の試合に初登板。「すごいいい機会を与えてもらって、結果としても自分的には良い感じで出せたのでよかったです」と1回を無失点に抑えた。小野コーチは当時「彼の場合は育成なので、アピールしていかないといけないところがある。高卒2年目のくくりなので、育成の部分が多くなるが、とにかく、今年1年投げられる状態に作ってもらいたい。とにかく状態を作るということです」と1年間投げ切ることの重要性を説いていた。シーズンが始まってから森は7月に月間3試合・11回1/3を投げて、2勝0敗、防御率0.79の好成績を収めたが、シーズン終盤に右肘を痛め離脱。
森は高卒3年目まで故障で離脱することが多かった。森は当時のことについて「とにかく一軍で活躍したいと思ってやっていましたし、そのために二軍でしっかりやらないといけないということはわかっていた。地道にやって来れて良かったと思います」と、支配下選手となって一軍で活躍することを目標にリハビリ、トレーニングに明け暮れた。
転機が訪れたのは4年目。技術面では3年目まで勝負球の変化球としてスライダーとカーブを使うことが多く、この2球種にどこか頼りがちなところがあったが、「そこまで頻繁に使えるようなボールではなかった」と話していたフォークを決め球として使えるようになった。そして、「右のインコースは、自分の生命線といってもいいくらい重要な球」と右打者のインコースにも、ガンガン攻めるようになったことで投球の幅が広がった。この頃からマウンドでの表情も目つきが鋭くなり、自信を持って投げているようになった。
森を取材していて、小野コーチとの面談、普段のやりとりを含め、“自分で考えさせる”小野コーチの指導が実を結んでいるように感じた。小野コーチは「性格的に結構のんびりやなので、それをどう変えていけるか、話を聞いていきながら、自分からどんどん発信できるように会話はしてきたつもり。その中でも色々自分の感情を出せるようになってきた」と話す。
ただ、小野コーチは「いい方向にはいっていたんですけどなかなか結果に結び付かなかったり、自分でチャンスを逃したりしてきた。その辺は歯がゆいところがあったんですけど、やっとチャンスをものにしてくれたなと思います」と、4年目にイースタンで10勝を挙げ最多勝利を獲得しオフに支配下選手となり、5年目の昨季一軍デビューを飾りながらも、プロ初勝利の壁を破ることのできなかった森に歯痒さを感じていた。
それでも、森は4月19日の日本ハム戦で最速151キロをマークするなどプロ初勝利を挙げた。小野コーチは「やっと、ですね。僕からしたらですけど」と話しながらも、「付き合いは長いというか、色々あったことがちょっと…、はい、巡ってきました。思い出してきましたよね」とプロ1年目から指導してきた森のプロ初勝利に感慨深いものがあった。
小野コーチの指導を受けてきた森も「最初からずっとつきっきりで教えてもらっていて、フィールディングとか牽制とか教えてもらいましたし、ピッチングのことも教えてもらった。一軍に(小野)晋吾さんがいてくれているのは、大きいなと思っています」と感謝する。
森が小野コーチから教わったことで、心に残っている言葉がある。「二軍でずっと“一軍だともっとすごいぞ”と言われていた。それが一番言われてきて頭に残っている感じです」。この初勝利を“通過点”に、すごい選手が集う一軍の打者を抑えて、白星を挙げいき、チームの勝利に貢献していって欲しいところだ。
取材・文=岩下雄太
ロッテの森遼大朗が19日の日本ハム戦に先発し、5回1/3を投げ2失点でプロ初勝利を手にした。プロ初勝利を挙げるまでの道のりは長く険しいものだった。森は17年育成ドラフト2位で入団。左膝の手術明けということもあり入団会見に松葉杖姿で参加した森は、18年1月に行われた新人合同自主トレは別メニュー。同年6月に二軍の全体練習に合流した。
当時森は「メニューは毎日別々というか、日替わりでやっています。(練習後に一人残り練習は)自分が合流したばかりで、みんなと遅れている部分がある。ちゃんとしたやり方を教わりながらやっています。人より少し遅くなっている部分がありますね」と日々のトレーニングについて明かしていた。
その時、森の練習を最後まで見守っていたのが当時二軍投手コーチだった小野晋吾コーチだ。「まだ彼は育成していかなければいけないピッチャーなので、みんなと同じようにというか、今までは種市、島、原、成田にしても2対1だった。マンツーマンで色々できるので、膝の状態を確認しながら、少しずつ体力強化と技術練習をやっている段階です」。
9月9日のBC・武蔵との二軍練習試合で初実戦を踏み、「練習試合で投げたのがあったので、そこまで緊張とか不安はなく挑めた部分があります」と、同年9月19日の楽天戦で公式戦デビューを果たし、同日の最速は143キロだった。
当時小野コーチは「ストライク先行でしっかり投げ切れていたと思うので、大きな当たりとはいってもプロのバッターをストレートで打ち取れたのは評価できますし、良いスタートをきれたのではないかと思います」と評価していた。
1年目のオフに台湾で行われたウインターリーグに参戦し、2年目の19年は2月の春季キャンプで台湾・ラミゴ戦で一軍の試合に初登板。「すごいいい機会を与えてもらって、結果としても自分的には良い感じで出せたのでよかったです」と1回を無失点に抑えた。小野コーチは当時「彼の場合は育成なので、アピールしていかないといけないところがある。高卒2年目のくくりなので、育成の部分が多くなるが、とにかく、今年1年投げられる状態に作ってもらいたい。とにかく状態を作るということです」と1年間投げ切ることの重要性を説いていた。シーズンが始まってから森は7月に月間3試合・11回1/3を投げて、2勝0敗、防御率0.79の好成績を収めたが、シーズン終盤に右肘を痛め離脱。
森は高卒3年目まで故障で離脱することが多かった。森は当時のことについて「とにかく一軍で活躍したいと思ってやっていましたし、そのために二軍でしっかりやらないといけないということはわかっていた。地道にやって来れて良かったと思います」と、支配下選手となって一軍で活躍することを目標にリハビリ、トレーニングに明け暮れた。
転機が訪れたのは4年目。技術面では3年目まで勝負球の変化球としてスライダーとカーブを使うことが多く、この2球種にどこか頼りがちなところがあったが、「そこまで頻繁に使えるようなボールではなかった」と話していたフォークを決め球として使えるようになった。そして、「右のインコースは、自分の生命線といってもいいくらい重要な球」と右打者のインコースにも、ガンガン攻めるようになったことで投球の幅が広がった。この頃からマウンドでの表情も目つきが鋭くなり、自信を持って投げているようになった。
森を取材していて、小野コーチとの面談、普段のやりとりを含め、“自分で考えさせる”小野コーチの指導が実を結んでいるように感じた。小野コーチは「性格的に結構のんびりやなので、それをどう変えていけるか、話を聞いていきながら、自分からどんどん発信できるように会話はしてきたつもり。その中でも色々自分の感情を出せるようになってきた」と話す。
ただ、小野コーチは「いい方向にはいっていたんですけどなかなか結果に結び付かなかったり、自分でチャンスを逃したりしてきた。その辺は歯がゆいところがあったんですけど、やっとチャンスをものにしてくれたなと思います」と、4年目にイースタンで10勝を挙げ最多勝利を獲得しオフに支配下選手となり、5年目の昨季一軍デビューを飾りながらも、プロ初勝利の壁を破ることのできなかった森に歯痒さを感じていた。
それでも、森は4月19日の日本ハム戦で最速151キロをマークするなどプロ初勝利を挙げた。小野コーチは「やっと、ですね。僕からしたらですけど」と話しながらも、「付き合いは長いというか、色々あったことがちょっと…、はい、巡ってきました。思い出してきましたよね」とプロ1年目から指導してきた森のプロ初勝利に感慨深いものがあった。
小野コーチの指導を受けてきた森も「最初からずっとつきっきりで教えてもらっていて、フィールディングとか牽制とか教えてもらいましたし、ピッチングのことも教えてもらった。一軍に(小野)晋吾さんがいてくれているのは、大きいなと思っています」と感謝する。
森が小野コーチから教わったことで、心に残っている言葉がある。「二軍でずっと“一軍だともっとすごいぞ”と言われていた。それが一番言われてきて頭に残っている感じです」。この初勝利を“通過点”に、すごい選手が集う一軍の打者を抑えて、白星を挙げいき、チームの勝利に貢献していって欲しいところだ。
取材・文=岩下雄太