巨人・原辰徳監督 (C) Kyodo News

◆ 「打高投低」の現状

 21日からの対ヤクルト3連戦を2勝1敗とした巨人。中日との開幕カード以来となる勝ち越しを決め、ゴールデンウィークを前に勢いに乗っていきたいところだ。

 25日からは甲子園で3位・阪神との3連戦、そして28日から本拠地・東京ドームで4位・広島との3連戦が控えている。順位がすぐ上の2チームが相手だけに、1週間後にはAクラス入りしている可能性も十分あるだろう。

 しかし、実際は中日と日替わりで順位が入れ替わるような目まぐるしい最下位争いに終始しているのが現実だ。

 巨人にとって、今季の大きな課題となっているのは投手力。チーム防御率は2.97と2点台をキープしているのだが、これはリーグ内で最も悪い数字である。

 一方で、1試合の平均得点はDeNAに次ぐ2位。つまり、今季の巨人は「打高投低」といっていいだろう。

◆ チーム本塁打は両リーグ最多も……

 巨人打線の主な得点源は主軸打者の一発。5本塁打の中田翔を筆頭に、大城卓三が3本塁打、岡本和真とブリンソン、オコエ瑠偉の3人が2本塁打で続いている。毎年のことながら、狭い本拠地の利点を最大限に生かした攻撃を披露しているといっていいだろう。

 その一方で気になるのが、機動力の欠如だ。特に盗塁の数が全く伸びていないのは気になるところ。昨季は2試合に1個近いペース(143試合で64盗塁)で盗塁を決めていたが、今季は20試合を終えた時点で僅かに1個だけ。4月11日の阪神戦で代走として出場した増田大輝が三盗を決めたのが最初で最後となっており、このペースなら「シーズン7盗塁」という前代未聞の少なさとなってしまう。

 盗塁数が少ない理由の一つが、昨季チームトップの16盗塁を記録した吉川尚輝の打撃不振だ。

 自己最多の132試合に出場した昨季は、チームトップタイの143安打をマークするなど大活躍。打順もほぼ1番に固定されていたが、今季は開幕から2番を打つことが多い。制約の多い打順だけに、これが打撃面で悪い影響を与えている可能性もある。

 その吉川に代わって、1番が定位置になりつつあるのがオコエ瑠偉だ。ただし、脚の速さに比べて走塁センスは今一つ。楽天時代もシーズン5盗塁が最多で、今季も唯一企てた盗塁が失敗に終わっている。

 もともと長打力自慢のチームカラーを誇る巨人だけに、盗塁の数とチーム成績はあまり結びつかないのも事実。しかし、ここまで走れないとなると、相手バッテリーは打者に集中できる分、巨人打線に対峙するのはかなり楽になるだろう。

 今季のチーム本塁打18は両リーグ通じてトップとはいえ、決してズバ抜けている数字ではない。20試合中13試合が3点差以内と接戦も多いだけに、重要な局面での機動力は長いシーズンを見据える上でも必要不可欠になるだろう。

 借金4の現状を打破するためにも、巨人の各打者からは走塁面で積極的な姿勢を見せてもらいたいところだ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

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