話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は各球団で活躍が目立つ「現役ドラフト」選手のなかから、中日・細川成也、巨人・オコエ瑠偉、阪神・大竹耕太郎にまつわるエピソードを紹介する。
プロ野球は開幕から1ヵ月。セ・リーグは順位が目まぐるしく変わり、パ・リーグでは一時1位に3球団が並ぶなど混戦が続いている。どの球団も頭ひとつ抜け出せないなか、印象的な活躍を見せているのは、昨秋に初めて実施された「現役ドラフト」で移籍した選手たちだ。
今回はその「現役ドラフト1期生」のなかでも特に活躍が目覚ましい3選手、DeNAから中日に移籍した細川成也、楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎の「成功の要因」を掘りさげたい。
■中日・細川成也の場合
現役ドラフト組のなかで、現段階でもっとも目立っているのは中日の細川だろう。4月26日終了時点で16試合に出場し、打率.346は規定打席未満ながらリーグ5位相当。DeNA時代のシーズン最多安打は2019年の16安打だったが、早くも18安打と更新したことが話題となっている。
「新しい気持ちでチャレンジ」という精神面も現在の活躍にあたっての要因だろうが、「コーチの方々も新しい目で見てくださっている」部分にこそ、大きなカギがあった。和田一浩打撃コーチの指導のもと、間とタイミングが改善したのだ。
新天地で新たに出会うコーチとの一期一会で、プロ人生が激変する可能性がある……この点に現役ドラフトの大きな意義があるように思う。
■巨人・オコエ瑠偉の場合
楽天時代の2019年以来となる開幕スタメンを「1番レフト」で飾ったのは巨人のオコエ瑠偉。以降も、4月9日からは毎試合トップバッターでのスタメン出場を続け、5年ぶりとなる猛打賞を早くも2度記録した。
また、4月はすでに2本塁打。過去のシーズン自己最多本塁打である3本(2017年と2019年)に早くもあと1本に迫っている。
このオコエの覚醒も、細川同様に「新たなコーチとの出会い」がトリガーになっていた。阿部ヘッド兼バッテリーコーチの徹底指導のもと、試合前にティー打撃での特訓を重ねているのだ。
そもそも阿部ヘッドは2軍監督時代、楽天の2軍でくすぶるオコエを見て、こんな感想を抱いていたという。
オコエには他にも、ハッスルしなければならない原動力がある。東京・東村山市生まれのオコエにとって、巨人はずっと憧れていた球団であること。そして、愛する祖父の応援するチームだからだ。その祖父は数年前に脳梗塞で倒れ、現在も闘病中。祖父の励みになるプレーをしたい、ということが強いモチベーションになっていた。
■阪神・大竹耕太郎の場合
移籍後初登板で6回を投げて3安打無失点の好投を見せ、3年ぶりとなる勝利をマークしたのは阪神の大竹耕太郎。2度目の先発でも6回途中1失点で2連勝。阪神への移籍選手で、初登板から2戦2勝は2003年の伊良部秀輝以来。左腕では初の出来事だ。防御率も0.71の安定感を見せている。
そんな大竹にアドバイスを送ってくれたのは、早稲田大学の先輩であり、古巣・ソフトバンクの大先輩でもある42歳の和田毅だ。オフの自主トレで和田に弟子入りした際、「気持ち」の大切さを教わったという。
だからこそ、初勝利のあとのお立ち台では「気持ち」の部分に言及したのだ。
もう1人、大竹の投球を支えている「六大学野球」つながりがある。明治大学出身、2学年先輩のキャッチャー、坂本誠志郎。阪神のスタメンマスクは梅野隆太郎が務めることが多いなか、大竹が先発の際は坂本がスタメンに座り、好リードで投球をサポート。大竹も坂本のリードに全幅の信頼を寄せている。
三者三様、新たな「師匠」と「サポート」の元、新天地で好スタートを切った。この他にも、巨人から広島に移籍した戸根千明、オリックスからロッテに移籍した大下誠一郎らも、すでに昨季以上の成績を残している。
彼らが好結果を残すほど、「現役ドラフト」の意義が高まり、今後さらなる活性化も期待できるというもの。シーズンを終えたとき、改めてその戦いぶりを振り返りたい。
プロ野球は開幕から1ヵ月。セ・リーグは順位が目まぐるしく変わり、パ・リーグでは一時1位に3球団が並ぶなど混戦が続いている。どの球団も頭ひとつ抜け出せないなか、印象的な活躍を見せているのは、昨秋に初めて実施された「現役ドラフト」で移籍した選手たちだ。
今回はその「現役ドラフト1期生」のなかでも特に活躍が目覚ましい3選手、DeNAから中日に移籍した細川成也、楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎の「成功の要因」を掘りさげたい。
■中日・細川成也の場合
現役ドラフト組のなかで、現段階でもっとも目立っているのは中日の細川だろう。4月26日終了時点で16試合に出場し、打率.346は規定打席未満ながらリーグ5位相当。DeNA時代のシーズン最多安打は2019年の16安打だったが、早くも18安打と更新したことが話題となっている。
『あのままDeNAに残っていたら、今も試合には出ていないと思います。中日に来たということは環境が変わったということです。僕自身も新しい気持ちでチャレンジできますし、コーチの方々も新しい目で見てくださっているのかなと思います』
~『中日スポーツ』2023年4月24日配信記事 より
「新しい気持ちでチャレンジ」という精神面も現在の活躍にあたっての要因だろうが、「コーチの方々も新しい目で見てくださっている」部分にこそ、大きなカギがあった。和田一浩打撃コーチの指導のもと、間とタイミングが改善したのだ。
『ドラゴンズに来て、キャンプで和田さん(打撃コーチ)に指導いただいてからです。テニスを打つ練習などにも取り組みましたが、あれも間を取る練習です。そういった一つ一つの練習が少しずつ、身になってきたのだと思います』
~『中日スポーツ』2023年4月18日配信記事 より
新天地で新たに出会うコーチとの一期一会で、プロ人生が激変する可能性がある……この点に現役ドラフトの大きな意義があるように思う。
■巨人・オコエ瑠偉の場合
楽天時代の2019年以来となる開幕スタメンを「1番レフト」で飾ったのは巨人のオコエ瑠偉。以降も、4月9日からは毎試合トップバッターでのスタメン出場を続け、5年ぶりとなる猛打賞を早くも2度記録した。
また、4月はすでに2本塁打。過去のシーズン自己最多本塁打である3本(2017年と2019年)に早くもあと1本に迫っている。
このオコエの覚醒も、細川同様に「新たなコーチとの出会い」がトリガーになっていた。阿部ヘッド兼バッテリーコーチの徹底指導のもと、試合前にティー打撃での特訓を重ねているのだ。
そもそも阿部ヘッドは2軍監督時代、楽天の2軍でくすぶるオコエを見て、こんな感想を抱いていたという。
『なんでこんなところ(2軍)にいるんだって思うくらいのね、モノは持っているとは思っていたからね』
~『スポーツ報知』2022年12月11日配信記事 より
オコエには他にも、ハッスルしなければならない原動力がある。東京・東村山市生まれのオコエにとって、巨人はずっと憧れていた球団であること。そして、愛する祖父の応援するチームだからだ。その祖父は数年前に脳梗塞で倒れ、現在も闘病中。祖父の励みになるプレーをしたい、ということが強いモチベーションになっていた。
『本当に小さい頃から見ていたチームで。こういうでっかいチーム、また地元球団でプレーしたいなという気持ちはありました。おじいちゃんも宮崎出身でジャイアンツファンなので、本当に喜んでいましたね。まずは自分が頑張らなきゃな…と改めて感じています』
~『スポーツ報知』2022年12月15日配信記事 より
■阪神・大竹耕太郎の場合
移籍後初登板で6回を投げて3安打無失点の好投を見せ、3年ぶりとなる勝利をマークしたのは阪神の大竹耕太郎。2度目の先発でも6回途中1失点で2連勝。阪神への移籍選手で、初登板から2戦2勝は2003年の伊良部秀輝以来。左腕では初の出来事だ。防御率も0.71の安定感を見せている。
そんな大竹にアドバイスを送ってくれたのは、早稲田大学の先輩であり、古巣・ソフトバンクの大先輩でもある42歳の和田毅だ。オフの自主トレで和田に弟子入りした際、「気持ち」の大切さを教わったという。
『和田さんは頭脳派のイメージがあるかもしれないけれど『気持ちがないと技術も伴わない』とすごく言われる。戦場に行くような感覚で野球をするというのがある。僕はここ最近、優しくなりすぎていたかなと思う。腹を据えて投げていきたい』
~『サンスポ』2023年1月25日配信記事 より
だからこそ、初勝利のあとのお立ち台では「気持ち」の部分に言及したのだ。
『想像以上の声援を自分の力に変えることができた。逃げる投球ではなく、しっかり“攻める”ことを心がけた。それが最後までできたと思う』
~『東スポWEB』2023年4月8日配信記事 より
もう1人、大竹の投球を支えている「六大学野球」つながりがある。明治大学出身、2学年先輩のキャッチャー、坂本誠志郎。阪神のスタメンマスクは梅野隆太郎が務めることが多いなか、大竹が先発の際は坂本がスタメンに座り、好リードで投球をサポート。大竹も坂本のリードに全幅の信頼を寄せている。
『六大学のときから良いキャッチャーだと思って対戦していましたし、1イニング1イニング、丁寧にコミュニケーションを取れて投げられた。すごく頼もしい存在です』
~『BASEBALL KING』2023年4月19日配信記事 より
三者三様、新たな「師匠」と「サポート」の元、新天地で好スタートを切った。この他にも、巨人から広島に移籍した戸根千明、オリックスからロッテに移籍した大下誠一郎らも、すでに昨季以上の成績を残している。
彼らが好結果を残すほど、「現役ドラフト」の意義が高まり、今後さらなる活性化も期待できるというもの。シーズンを終えたとき、改めてその戦いぶりを振り返りたい。