阪神・青柳晃洋 (C) Kyodo News

◆ 立ち直るキッカケとなった“自援護打”

 エースの意地が垣間見えた“1勝”だ。

 5月12日のベイスターズ戦に先発したタイガースの青柳晃洋は、序盤から苦投を強いられた。立ち上がり、一死二塁から神里和毅に中前へ運ばれ、登板3試合連続で初回に失点。なんとか最少失点で食い止めたものの、2回も先頭打者から連打を浴び、ここは左翼手のシェルドン・ノイジーの強肩で一塁走者の三進を阻止したが、なかなか落ち着かなかった。

 試合後、岡田彰布監督も「ノイジーの三塁アウトにしたのがなかったら2回で交代してるかもわからないよ」と明かしたように、早期降板の可能性すらあった。

 そんな状況から立ち直る契機になったのは、マウンドではなく打席だった。

 1点を追う2回、二死二塁でDeNAバッテリーは好調・木浪聖也を申告敬遠。好機で迎えた「打者・青柳」が快音を響かせる。

 エース左腕・今永昇太の148キロ直球を仕留めた打球は、三塁線を抜ける逆転の2点適時二塁打。苦しむ投手・青柳への“自援護”をきっかけに、この回一挙4得点とリードを広げた。

◆ 噛みしめた今季2勝目

 「(投球で)ずっと貢献できていなかった。打つ方も少しでも……と思って頑張っていたので、いい結果になって良かった」

 プロ入り後最短KOをはじめ、開幕戦で白星を挙げてからは精彩を欠く投球が約1カ月も続くなど、2年連続投手三冠に輝いた右腕はもがき苦しんでいた。

 この日もか……そんな嫌な空気をバットで切り裂くことになるとは想像していなかったはずだが、落ち着かなかった投球もここで一息つくことができた。

 女房役の梅野隆太郎と“アウトの取り方”を再確認。「梅野さんとも、(打者に)どんどん前に飛ばしてもらおう、(ストライク)ゾーンで勝負しようと話していた。2回以降は前に飛ばして野手に守ってもらってアウトを重ねる形ができた」と本来のゴロ凡打を量産するスタイルで尻上がりに調子を上げていった。

 4試合連続で勝ち星から見放され、自身3連敗中。不安定に見えた初回は精神的な影響もあったことを明かした。

 「やっぱり立ち上がりはもちろんどの試合も難しいけど、勝っていないというのが自信をなくしたっていうのはあります」

 8回途中7安打3失点で手にした待望の今季2勝目を、背番号17は噛みしめた。

 「(勝ちが)ひとつ付いたのは嬉しい。チームの勝利に貢献できたのは嬉しいことなので、こういうピッチングを続けられたらと思います」

 虎のエースが勝利の味を思い出した一日だった。

文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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