ストレートが安定
「ストレートが安定しないと球数が多くなりますし、その中でスライダーとかを操れていたらもっと楽なピッチングができたんじゃないかなと思います」。
ロッテの種市篤暉は今季2勝目を手にした4月23日のソフトバンク戦、5回・103球・4安打・7奪三振、無失点に抑えるも、4月27日の取材で反省していたが、続く4月30日のオリックス戦で6回・97球、5月9日の西武戦は7回・95球、5月16日のオリックス戦は9回・109球とストレートが安定し、少ない球数で長いイニングを投げている。
ストレートが安定してきた要因のひとつに、グローブの使い方が挙げられる。「試合中にフォームというか、グローブの使い方を変えたんですけど、テイクバックがスムーズにいくなということで、今も続けています」と、4月30日のオリックス戦の0-1の2回一死二、三塁で紅林弘太郎を迎えたところからグローブの使い方を変えた。
「試合中にもっと敏感というか、嗅覚というか、イニングごとに“こうしよう”、“ああしよう”とイニング間のキャッチボールはやっているので、その中でなんとかしようと思っています」と4月27日の取材で話していたようにイニング間のキャッチボールで修正することのある種市だが、この時は「ゲーム中です。僕、普通に変えちゃうんで」と、試合中に変更を決断した。
「右のインコース(のストレート)は感覚的にトミー・ジョン(手術)前くらいになっています。ある程度、アバウトですけどインコースに投げられているなという感覚はあります」。
“右のインコース”で気になったのは、5月16日のオリックス戦の0-0の2回一死走者なしで右打者の頓宮裕真に、ツーシーム、シュート系の球で捕邪飛に打ち取ったこと。
「あれはツーシームです。相性が悪いのがわかっていたので、インコースに突っ込もうかなと思ってインコースのツーシームを多めにしました」。16日の対戦前までは、5打数4安打と打ち込まれていた“頓宮対策”の一環として、ツーシームを投じた。ちなみにツーシームは「その試合から投げ始めました」と16日のオリックス戦から使い始め、今後も「真っ直ぐの感覚が悪くならなかったら、そのままいこうかなと思います」と、ストレートに影響が出なければ投げていく方針だ。
フォークは?
種市はここまでリーグトップの52奪三振を記録しているが、フォークで実に30個の三振を奪っている。
前回登板の1-1の6回一死二塁で、茶野篤政を1ストライクから投じた2球目のストライクゾーンからボールゾーンに落ちていく138キロのフォークを見送られ、1ボール1ストライクとなったが、3球目、4球目も同じゾーンにフォークを投げ空振り三振に打ち取った投球は見事だった。
「データを見ていてもそこまですごく落ちていたわけではないんですけど、低めの意識があったから空振りしてくれたかなという感じです」と冷静に振り返った。
フォークでいえば、5月9日の西武戦、2-1の4回二死走者なしで中村剛也に1ボール2ストライクから投じた4球目など、シュート気味に落ちるフォークも気になっている。
意図的にシュートさせているのか訊くと「はい」と答え、「個人的に(シュート系のフォークを)投げているというか、もうちょい多めに投げたいというか、スライダーが曲がらない分、もう少しフォークのシュート幅を大きくしたいというか、そういうイメージで投げています」と教えてくれた。
奪三振は現在リーグトップ。「ある程度、真っ直ぐでカウントが作れていますし、変化球でもカウントを作れているのが三振とれている要因かなと個人的に思っています」と、球数が少なくなっても、4月30日のオリックス戦が7、5月9日の西武戦は6、5月16日のオリックス戦は9と、変わらず三振が取れている。
「ローテーションを守っているピッチャーがたくさん抑えていますけど、みんなに負けないように投げるだけかなと思っています」。投げるたびに凄みが増していく背番号“16”。チームメイトと切磋琢磨し、この先もチームの勝利のため、さらに進化をした姿を見せてくれるはずだ。
取材・文=岩下雄太