話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は好調が続く阪神タイガース投手陣のなかから、千葉ロッテマリーンズ戦で見事な完封劇を演じた才木浩人投手にまつわるエピソードを紹介する。
阪神投手陣がすごすぎる。
6月4日終了時点でのセ・リーグ防御率ランキングは、1位が大竹耕太郎で0.71。2位が村上頌樹で1.41。そして3位が才木浩人で1.74と阪神勢が独占。規定投球回数の関係でこの3人が並ぶのはひとまず1日だけとなるが、昨シーズン(2022年)、先発ローテにいなかった3人がこの好調ぶりなのだから、阪神がリーグ1位を快走するのも頷けるというものだ。
そのなかで、4日に行われた千葉ロッテとの交流戦で佐々木朗希と見事な投げ合いを演じ、プロ入り初めて9イニングを投げての完封勝利(※2022年に降雨コールドでの完封勝利有り)を飾ったのが24歳の才木浩人だ。
2点差で迎えた9回2死から連打を浴びてランナー2、3塁と、長打が出れば同点、一発出れば逆転のピンチを招いたものの、最後のバッターを空振り三振に仕留め、ゲームセット。球数は101球で、打たれたヒットはわずか3本。奪った三振は12。セ・リーグでは2005年の中日・川上憲伸以来となる「史上2人目の先発全員奪三振」のオマケ付きだった。
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才木と言えば、2019年に右肘を故障し、翌年にトミー・ジョン手術。一時は育成契約となり、投げられないストレスから円形脱毛症になるなど、つらく苦しい時間を過ごしたことで知られている。
その艱難辛苦を乗り越え、去年(2022年)7月、1159日ぶりの復活勝利をマーク。お立ち台では感極まって号泣し、その姿がファンの涙を誘って大きな話題を呼んだ。
昨季はこの復活劇のあとも好投を続け、登板間隔は中10日前後ながらも、4勝1敗で防御率1.53をマーク。今季は先発ローテの一角として、中6日でコンスタントに結果を出すことが求められていたわけだが、ここまでは満額回答と言える活躍ぶりだ。
その好投を支えるものを紐解けば、「研究心」と「負けん気」の2つの特徴が浮かび上がってくる。
例えば、「研究心」の証として、阪神OBが語った入団直後のこんなエピソードがある。
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さらに遡れば、強豪の私立高校から誘いをもらえず、神戸市立須磨翔風高校に進学。ここで偶然にも、イチローにも食事指導をした経験を持つオリックスの元球団専属管理栄養士、坂元美子氏が家庭科の授業を受け持っていた縁で、栄養学の大切さにいち早く開眼したことが分岐点となった。
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こうして、トレーニング前後の効果的な栄養補給を身につけ、3年夏には最速148キロを計測。無名の公立校ピッチャーが阪神からドラフト3位指名を受けるまでに成長を遂げたのだ。
そして、もう1つのキーワード、「負けん気」。そもそも、公立校からドラフト3位指名を勝ち取ったことも、強豪校に入れなかった悔しさが原動力。プロ入り後もその「負けん気」は失われていない。
象徴的だったのが今年(2023年)3月、WBC本番に臨む侍ジャパンとの強化試合で、阪神の先発投手を務めたときのこと。大谷翔平に真っ向勝負を挑み、結果は「片膝をついて、最後は右手1本」という苦しい体勢ながらスタンドにまで運ぶ、まさに超人的ホームランを喫してしまう。球界が騒然としたあの一打、「大谷に打たれた男」こそ才木だった。
ただ、注目すべきはそのあと。相手が世界最高峰の大谷だったとしても、才木は悔しがる姿を隠そうともしなかった。
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実はこのとき、大谷に打たれた球は自信を持っていた決め球のフォークボール。その打たれた悔しさから、フォークボールの改良にも取り組んだという。
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初の9回完封を成し遂げた試合で、最後のバッターから奪った三振は、磨き直したフォークボール。まさに、大谷に打たれた悔しさをバネに飛躍したからこそ奪えた三振であり、完封劇だったと言える。
これで昨季の4勝に早くも並んだ才木。自己初の2桁勝利はもちろん、今季の課題として挙げていた規定投球回クリアに向けても期待は膨らむばかりだ。
阪神投手陣がすごすぎる。
6月4日終了時点でのセ・リーグ防御率ランキングは、1位が大竹耕太郎で0.71。2位が村上頌樹で1.41。そして3位が才木浩人で1.74と阪神勢が独占。規定投球回数の関係でこの3人が並ぶのはひとまず1日だけとなるが、昨シーズン(2022年)、先発ローテにいなかった3人がこの好調ぶりなのだから、阪神がリーグ1位を快走するのも頷けるというものだ。
そのなかで、4日に行われた千葉ロッテとの交流戦で佐々木朗希と見事な投げ合いを演じ、プロ入り初めて9イニングを投げての完封勝利(※2022年に降雨コールドでの完封勝利有り)を飾ったのが24歳の才木浩人だ。
2点差で迎えた9回2死から連打を浴びてランナー2、3塁と、長打が出れば同点、一発出れば逆転のピンチを招いたものの、最後のバッターを空振り三振に仕留め、ゲームセット。球数は101球で、打たれたヒットはわずか3本。奪った三振は12。セ・リーグでは2005年の中日・川上憲伸以来となる「史上2人目の先発全員奪三振」のオマケ付きだった。
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『最後ドキドキしたんですけど、抑えられて良かったです』
『ヒット2本打たれちゃったんですけど、気持ちで攻めて行った』
~『デイリースポーツonline』2023年6月4日配信記事 より(才木浩人のお立ち台コメント)
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才木と言えば、2019年に右肘を故障し、翌年にトミー・ジョン手術。一時は育成契約となり、投げられないストレスから円形脱毛症になるなど、つらく苦しい時間を過ごしたことで知られている。
その艱難辛苦を乗り越え、去年(2022年)7月、1159日ぶりの復活勝利をマーク。お立ち台では感極まって号泣し、その姿がファンの涙を誘って大きな話題を呼んだ。
昨季はこの復活劇のあとも好投を続け、登板間隔は中10日前後ながらも、4勝1敗で防御率1.53をマーク。今季は先発ローテの一角として、中6日でコンスタントに結果を出すことが求められていたわけだが、ここまでは満額回答と言える活躍ぶりだ。
その好投を支えるものを紐解けば、「研究心」と「負けん気」の2つの特徴が浮かび上がってくる。
例えば、「研究心」の証として、阪神OBが語った入団直後のこんなエピソードがある。
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「趣味が野球なんじゃないかというくらい、研究熱心。入団1年目の入寮日、部屋に荷物を置くやグラウンドに出て自主練を始めた時にはスタッフも驚いたほどです。首脳陣も、『才木には何も言わなくても大丈夫。自ら勝手に動ける』と評価していた」
~『日刊ゲンダイDIGITAL』2023年4月24日配信記事 より
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さらに遡れば、強豪の私立高校から誘いをもらえず、神戸市立須磨翔風高校に進学。ここで偶然にも、イチローにも食事指導をした経験を持つオリックスの元球団専属管理栄養士、坂元美子氏が家庭科の授業を受け持っていた縁で、栄養学の大切さにいち早く開眼したことが分岐点となった。
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『話を聞いて、事の大切さが改めてわかりました。本気で体重を増やさないといけないと思った』
~『スポニチアネックス』2018年5月28日配信記事 より(才木の言葉)
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こうして、トレーニング前後の効果的な栄養補給を身につけ、3年夏には最速148キロを計測。無名の公立校ピッチャーが阪神からドラフト3位指名を受けるまでに成長を遂げたのだ。
そして、もう1つのキーワード、「負けん気」。そもそも、公立校からドラフト3位指名を勝ち取ったことも、強豪校に入れなかった悔しさが原動力。プロ入り後もその「負けん気」は失われていない。
象徴的だったのが今年(2023年)3月、WBC本番に臨む侍ジャパンとの強化試合で、阪神の先発投手を務めたときのこと。大谷翔平に真っ向勝負を挑み、結果は「片膝をついて、最後は右手1本」という苦しい体勢ながらスタンドにまで運ぶ、まさに超人的ホームランを喫してしまう。球界が騒然としたあの一打、「大谷に打たれた男」こそ才木だった。
ただ、注目すべきはそのあと。相手が世界最高峰の大谷だったとしても、才木は悔しがる姿を隠そうともしなかった。
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『負けず嫌いなんで。世界一のプレーヤーでレベルなんか天地の差だけど、勝負の場所に立ってる以上、絶対に勝てないと思って投げることはまずない。逆に大谷さんだからこそ、抑えたら俺の株がめっちゃ上がる、みたいな気持ちでいったので。1打席目は三振を取ったけど、2打席目に打たれて、まだまだレベルが低い。足元にも及ばないと実感して悔しかったですね』
~『スポーツ報知』2023年3月28日配信記事 より(才木の言葉)
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実はこのとき、大谷に打たれた球は自信を持っていた決め球のフォークボール。その打たれた悔しさから、フォークボールの改良にも取り組んだという。
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『あの経験があったから今、試行錯誤して、いろいろやっている。逆に良かったかな、という気もします』
~『スポーツ報知』2023年3月28日配信記事 より(才木の言葉)
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初の9回完封を成し遂げた試合で、最後のバッターから奪った三振は、磨き直したフォークボール。まさに、大谷に打たれた悔しさをバネに飛躍したからこそ奪えた三振であり、完封劇だったと言える。
これで昨季の4勝に早くも並んだ才木。自己初の2桁勝利はもちろん、今季の課題として挙げていた規定投球回クリアに向けても期待は膨らむばかりだ。