【第94回都市対抗野球大会近畿地区第2次予選・第5代表決定戦】
○ 日本生命 6 - 3 日本製鉄広畑 ●
(13日・わかさスタジアム京都)
日本生命は今春入社したルーキー・山田健太内野手が勝利を決定づける2点タイムリーを放つなど2安打2打点の躍動。第5代表決定戦で日本製鉄広畑に逆転勝利を収め、3年ぶり62回目の都市対抗出場を決めた。
山田のバットが快音を鳴らすと、球場は大きな歓声に包まれた。押し出し四球で勝ち越しに成功した直後の8回二死満塁、絶好機で迎えた第4打席。日本製鉄広畑の2番手・森本の初球、やや真ん中に入ってきた142キロ直球を迷いなくフルスイング。「初球からいこうと、それだけでした」。鮮やかな打球は左前で弾み、値千金の2点タイムリー。一塁ベース上でベンチに向かって大きく両手を突き上げると、その後も喜びを噛み締めるように右拳で何度もガッツポーズ。感情を爆発させ、大歓声と鳴り止まない拍手を一身に浴びた。
相手の息の根を完全に止める一打で絶対に負けられない戦いを制し、近畿最後の切符を掴み取った。3年ぶりの本大会出場に大きく貢献した山田は「第1試合から一番最後の試合まで戦わせてもらって、一つのアウトを取るのも本当に難しいなと。どんどん代表のチームが決まっていく中で残り少ない枠を狙っていく戦いは苦しかった。勝つことはこんなにも難しいことなんだなと痛感した」と社会人野球の舞台で戦う難しさを肌で感じたが、「会社を背負っての戦いで、今日もあれだけ(会社の方々が)来てくださっていましたし、一発勝負の怖さや楽しさというのは社会人ならではなのかなと思います。勝ったから言えることではあるんですけど、野球って本当に面白いなと思いました」と感慨に浸った。
感謝の思いをバットに乗せた。大阪桐蔭高時代は史上初となる2度目の春夏連覇に貢献し、立大では1年春から4番に君臨するなど、世代を代表するスラッガーとして常に第一線を走り続けてきた。大学ラストイヤーを迎えた昨年3月は日体大・矢澤宏太投手(現日本ハム)とともに、侍ジャパントップチームの強化試合メンバーに選出された逸材。(試合は新型コロナウイルスの影響に伴い中止)。大学日本代表では主将を務めるなど、ドラフト上位候補として指名確実とまで言われていたが、昨秋のドラフト会議で山田の名前が呼ばれることはなかった。
創部94周年を迎える伝統野球部・日本生命への入社を決め、2年後のプロ入りを目指して再スタートを切った男は「(日本生命に来てよかったと)ずっと思いながら練習もしています」。指名漏れ後、声をかけてくれた会社に結果で恩を返すべく、都市対抗2次予選では全7試合で安打を放つなど10安打7打点の活躍。「まだまだですけど、勝負所で一本打てたことは自信にしたい。日生に呼んでいただいた恩返しじゃないですけど、少しでも勝利に貢献できるプレーがこれからもできれば」と力強く宣言した。
偉大な大先輩への感謝も忘れなかった。日本生命OBで、昨季限りで現役を引退した元プロ野球選手・福留孝介氏が今年1月、チームの特別コーチに就任。日米通算2450安打をマークし、プロの世界で24年間戦い抜いた強打者を前に「最初はテレビの人だなと、すごいなと。それは今もです」と圧倒。打撃面だけではなく、走攻守全てにおいて様々なアドバイスをもらっており、「バッティングも、走塁も、守備も。本当に全部のことを一から親身になって長い時間かけて教えてくださる。福留さんの期待に応えたいという気持ちも、僕だけではなくて選手全員が思っている。本当にありがたいなと、感謝の気持ちを持ちながらやっています」と頭を下げた。
3年ぶりとなる本大会出場への扉をこじ開け、次は社会人の祭典に挑む。「東京ドームでやるのも、都市対抗も初めて経験するので、楽しみたいなと思います。まだあと1ヶ月あるので、やれることをしっかりやって。試合では結果をコントロールすることはできないので、しっかり準備して臨みたい。一番を目指したいです」と背番号1。期待の大型スラッガーは大舞台でも快音を響かせ、新たな旋風を巻き起こす。
取材・文=灰原万由(はいばら・まゆ)
○ 日本生命 6 - 3 日本製鉄広畑 ●
(13日・わかさスタジアム京都)
日本生命は今春入社したルーキー・山田健太内野手が勝利を決定づける2点タイムリーを放つなど2安打2打点の躍動。第5代表決定戦で日本製鉄広畑に逆転勝利を収め、3年ぶり62回目の都市対抗出場を決めた。
山田のバットが快音を鳴らすと、球場は大きな歓声に包まれた。押し出し四球で勝ち越しに成功した直後の8回二死満塁、絶好機で迎えた第4打席。日本製鉄広畑の2番手・森本の初球、やや真ん中に入ってきた142キロ直球を迷いなくフルスイング。「初球からいこうと、それだけでした」。鮮やかな打球は左前で弾み、値千金の2点タイムリー。一塁ベース上でベンチに向かって大きく両手を突き上げると、その後も喜びを噛み締めるように右拳で何度もガッツポーズ。感情を爆発させ、大歓声と鳴り止まない拍手を一身に浴びた。
相手の息の根を完全に止める一打で絶対に負けられない戦いを制し、近畿最後の切符を掴み取った。3年ぶりの本大会出場に大きく貢献した山田は「第1試合から一番最後の試合まで戦わせてもらって、一つのアウトを取るのも本当に難しいなと。どんどん代表のチームが決まっていく中で残り少ない枠を狙っていく戦いは苦しかった。勝つことはこんなにも難しいことなんだなと痛感した」と社会人野球の舞台で戦う難しさを肌で感じたが、「会社を背負っての戦いで、今日もあれだけ(会社の方々が)来てくださっていましたし、一発勝負の怖さや楽しさというのは社会人ならではなのかなと思います。勝ったから言えることではあるんですけど、野球って本当に面白いなと思いました」と感慨に浸った。
感謝の思いをバットに乗せた。大阪桐蔭高時代は史上初となる2度目の春夏連覇に貢献し、立大では1年春から4番に君臨するなど、世代を代表するスラッガーとして常に第一線を走り続けてきた。大学ラストイヤーを迎えた昨年3月は日体大・矢澤宏太投手(現日本ハム)とともに、侍ジャパントップチームの強化試合メンバーに選出された逸材。(試合は新型コロナウイルスの影響に伴い中止)。大学日本代表では主将を務めるなど、ドラフト上位候補として指名確実とまで言われていたが、昨秋のドラフト会議で山田の名前が呼ばれることはなかった。
創部94周年を迎える伝統野球部・日本生命への入社を決め、2年後のプロ入りを目指して再スタートを切った男は「(日本生命に来てよかったと)ずっと思いながら練習もしています」。指名漏れ後、声をかけてくれた会社に結果で恩を返すべく、都市対抗2次予選では全7試合で安打を放つなど10安打7打点の活躍。「まだまだですけど、勝負所で一本打てたことは自信にしたい。日生に呼んでいただいた恩返しじゃないですけど、少しでも勝利に貢献できるプレーがこれからもできれば」と力強く宣言した。
偉大な大先輩への感謝も忘れなかった。日本生命OBで、昨季限りで現役を引退した元プロ野球選手・福留孝介氏が今年1月、チームの特別コーチに就任。日米通算2450安打をマークし、プロの世界で24年間戦い抜いた強打者を前に「最初はテレビの人だなと、すごいなと。それは今もです」と圧倒。打撃面だけではなく、走攻守全てにおいて様々なアドバイスをもらっており、「バッティングも、走塁も、守備も。本当に全部のことを一から親身になって長い時間かけて教えてくださる。福留さんの期待に応えたいという気持ちも、僕だけではなくて選手全員が思っている。本当にありがたいなと、感謝の気持ちを持ちながらやっています」と頭を下げた。
3年ぶりとなる本大会出場への扉をこじ開け、次は社会人の祭典に挑む。「東京ドームでやるのも、都市対抗も初めて経験するので、楽しみたいなと思います。まだあと1ヶ月あるので、やれることをしっかりやって。試合では結果をコントロールすることはできないので、しっかり準備して臨みたい。一番を目指したいです」と背番号1。期待の大型スラッガーは大舞台でも快音を響かせ、新たな旋風を巻き起こす。
取材・文=灰原万由(はいばら・まゆ)