エースが気迫の完投
初優勝を果たした交流戦優勝を終えて、リーグ戦再開の初戦。相手は首位阪神。必勝を期してマウンドに上ったエースは、完璧なまでにその重責を果たして見せた。
初回こそ細かいコントロールが定まらず、二死一・三塁のピンチをなんとか無失点で切り抜けるも、球数は19球と苦心のピッチング。それでも2回からは本来の姿を取り戻し、7回まで許したランナーは1安打1死球の2人のみ。二塁を踏ませぬ圧巻の投球を見せた。
球数が90球に突入した8回は、一死から連打で久々のピンチとなるが、右翼手・楠本泰史の好プレーもあって無失点で踏ん張り、9回にもマウンドへ。先頭の大山悠輔にレフトスタンドへ一発を放り込まれたが、後続を気迫で抑え込み、10奪三振、126球の完投劇で貴重な白星を手に入れた。
試合後、三浦大輔監督は「本当に期待通りのピッチングをしてくれましたね」と目を細め、「いつもの今永ですよ。しっかりとゲームメイクしながら。立ち上がり、ランナーが出たところでも落ち着いて打ち取って、あとはもう自分のリズムで乗っていきましたし、戸柱(恭孝)もうまく緩急を使いながらリードしました。良かったと思います」とキャッチャーも含めて高評価。
続けて「熱くなりながらも冷静なところ、気持ちだけじゃなく技術的なところも。いま何をしないといけないか、という冷静さも持ち合わせていました。そのへんのバランスですよね」とエースのマインドにも頷いた。
完投についても、「8回をしっかりと切り抜けて、球数もボールの力を見ても大丈夫と思い、任せました。今永に任せる試合ですからね。一人で投げきったのは大きいです」と満足気にコメントした。
「バックにも救われました」
大仕事を終えた今永は「最後は楽天戦のような1本がありましたけど、そのあと後続を抑えられたので、同点に追いつかれなくてよかったと思います」と謙虚に第一声。
そのうえで、この日の投球については「湿度の関係もあって真っすぐのかかりが良かったので、戸柱さんも真っすぐの質の良さがわかっていた」とストレートを軸に勝負した理由を説明しながら、「中9日を利用して、理想に近いボールが投げられた」と前回からうまく修正できたとコメントした。
重要なゲームを任されたが「絶対に1点もあげてはいけないマインドではなくて、失点しながらでも試合を作っていく気持ちで投げていた」とし、特に意識することなく試合に入ったことが功を奏したという。
8回のピンチを抑えた場面では、どこか納得がいかないようなアクションも見られたが、「二死一・二塁で長打が一番やっちゃいけないところ。戸柱さんは低めにジェスチャーした中で、低めに投げてライト前なら全然いいんですけど、高めであそこまで飛ばされるというところ」を反省。
最後は「バックにも救われました」と振り返り、「楠本がファインプレー。取ってくれてなければ2点入ってなおも同点のピンチだった。京田のプレーだとか、牧のスライディングキャッチだとか。すべてが上手く噛み合った」と周りへの感謝も忘れなかった。
この勝利で横浜スタジアム8連勝を達成したエース。この勢いのまま、一気に首位の座を掴んでいきたい。
取材・文=萩原孝弘