現在の状態は?
「ちょっとまだ状態がなかなか上がってこないですね。これが今の実力です」。
8月3日の日本ハム戦の試合前練習後の取材で、現在の状態についてこのように話していたロッテの荻野貴司だが、5日の楽天戦から2試合連続で安打と適時打を放っている。
状態を上げるために、「ちょっと体が突っ込んでバットが出てきていないところがあるので、そこを調整しながらやっています」と工夫を凝らす。バットも変わったように見えたが、「練習では違うバットを使っていますけど、試合はいつものバットです」とのこと。
5日の楽天戦では、1-1の2回一死三塁の第1打席、辛島航が1ストライクから投じた2球目のインコース高めのストレートをくるっと回転してレフト前に適時打。荻野らしい安打だった。
若手選手の活躍に刺激
昨季は開幕に出遅れたが、5月27日に一軍昇格すると、89試合に出場して、規定打席に届かなかったものの打率は.310、5本塁打、27打点、15盗塁、得点圏打率は.340とチャンスメーカーでありながら、ポイントゲッターとしても勝負強さを発揮した。
吉井理人監督が就任した今季、開幕からトップバッターとして打線を牽引。しかし、4月6日の日本ハム戦、2-0の6回一死一塁からレフトオーバーの当たりを放つも、一塁ベースを回ったところで右太ももを触るそぶりを見せ、二塁到達後に角中勝也に代走が送られた。球団は翌7日に、千葉県内の病院で『右大腿二頭筋肉離れ』と診断されたことを発表。
レギュラーの一角として、シーズン通しての活躍が期待された中で、チームにとっても荻野にとっても痛い離脱になった。荻野が故障で離脱している間、若手選手たちが一軍で居場所を掴もうと必死にアピールした。荻野の離脱で代わって昇格した平沢大河が4月8日の楽天戦で1点を追う8回に決勝2ランを放てば、現在一軍登録抹消中の藤原恭大も春先は一時リーグトップの打率、安打数をマーク。昨季までは代走での出場がメインだった和田康士朗も5月2日に今季初昇格を果たすと、スタメン出場した5月3日と4日の楽天戦で安打を放った。
荻野はリハビリの期間中、若手選手たちが躍動していたことについて「刺激になっていました」と振り返る。荻野自身は復帰してから若手選手たちを引っ張っていくぞという考えを持っていたのだろうかーー。「いやいや、そんな引っ張れるタイプでもないので、若手にしっかりついてやっていきたいと思います」。
7月13日のヤクルト二軍戦で実戦復帰を果たすと、いきなり2安打。16日の西武二軍戦では宮川哲の初球インコース高めのストレートをくるっと回ってレフト線に安打を放つと、左利きのレフト・ペイトンが反転している間に二塁を陥れる好走塁。打って、走って、荻野らしさが光った。
オールスター明けの7月25日に一軍復帰し、復帰後は10試合に出場して、打率.179(39-7)、5打点と本来の姿とは言えない。チームは、首位・オリックスと5ゲーム差の2位。少しゲーム差を放されてしまったが、まだまだリーグ優勝が狙える位置につけている。「やれることをしっかりやって自分の役割を果たせればいいかなと思います」。勝負の8月、9月、攻走守でチームに勢いをもたらす活躍を期待したい。
取材・文=岩下雄太