話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、プロ野球パ・リーグの投手タイトル争いを繰り広げる千葉ロッテマリーンズの種市篤暉とオリックス・バファローズの山本由伸にまつわるエピソードを紹介する。
去年(2022年)、一昨年(2021年)とパ・リーグの先発投手タイトルを総なめにしてきたオリックス・山本由伸。「最多勝」「最優秀防御率」「最多奪三振」「最高勝率」の4タイトルに加えて、正規タイトルではないが「最多完封」も達成し、2年連続での「投手5冠」は圧巻と言わざるを得ない。
その「山本独占時代」に待ったをかけようと期待がかかる投手がいる。山本と同じ1998年生まれの同学年、ロッテの種市篤暉だ。8月18日の楽天戦で、プロ7年目にして初の2桁勝利となる10勝目(4敗)をマーク。これで、11勝5敗でハーラートップを走る山本との勝ち星の差はわずか「1」となった。
『ドラフト指名された時に、ローテーションに入って10勝することが目標だった。7年かかったけど達成できてよかった』
~『時事通信ニュース』2023年8月18日配信記事 より(種市の言葉)
プロ2年目の2018年にはU-23ワールドカップで若き侍ジャパンメンバー入りを果たし、最高勝率賞(2勝0敗)を受賞。未来のエース候補として期待されながら、2桁勝利までなぜ7年かかったかといえば、2020年にトミー・ジョン手術を経験したから。それだけに、本人だけでなく球団関係者やマリーンズファンも、今回の2桁勝利達成には感慨深いものがあるのではないだろうか。
そして、俄然注目したいのは山本由伸とのタイトル争いだ。勝利数では「1」差。防御率2.78は1位の山本(1.50)と開きがあるものの、奪三振数「130」は山本に7差をつけ、離脱中のチームメイト佐々木朗希と並んでリーグ1位。さらに、勝率.714も堂々のリーグ1位。現状、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4タイトルのうち、山本と種市でリーグ1位を2部門ずつ分け合う状況だ。
もっとも、種市本人は、まだタイトル争いをそこまで意識していない。
『タイトルは欲しいけど、そこを目指すと力みにつながるので、結果的に獲れればいい』
~『スポニチアネックス』2023年8月19日配信記事 より(種市の言葉)
それでも、山本由伸とのタイトル争いは種市にとって期するものがあるはず。これまで「同学年・山本由伸」について語るとき、いつも並々ならぬ敬意を払っていたからだ。
初めて先発投手同士で投げ合った2019年5月の試合で、種市は山本を「自分たちの世代でナンバーワン」と称えるとともに、試合に勝ったにも関わらず、こんな言葉を並べていた。
『(山本には)自分は足元にも及ばないと思っています。近づけるようにというか、追い越せるように力をつけていきたい』
~『Full-Count』2019年5月17日配信記事 より
この年、種市は6月から8月にかけて「23イニング連続奪三振」をマーク。江夏豊(阪神)や木田勇(日本ハム)の持つ日本人最長記録に肩を並べた。だが、翌2020年、今度は山本由伸が種市の記録を抜く「25イニング連続奪三振」を達成し、日本新記録を達成してしまう。
種市にとっては、近付いたかと思えばまた離されてしまう、まさに偉大な好敵手・山本由伸。それだけに、山本のタイトル独占を阻止できたとすれば、種市にとって何よりの自信になるのは間違いない。
そんな種市に誰よりも期待するのはロッテの吉井理人監督だろう。1ヵ月前の楽天戦、6回途中4失点でKOされた種市に対して、吉井監督はこんな辛口コメントを残していた。
『よく頑張ったと思うんですけども、あの流れを作り出したのは種市のピッチングなので反省してもらいたい。アンラッキーな安打、死球、押し出し、ああいうことをやっていると流れが向こうに行っちゃう。そういうところを何とかするのが種市だが今日はできなかった』
~『デイリースポーツonline』2023年7月17日配信記事 より
種市が10勝を挙げた試合でも、指揮官の口から出たのは賞賛だけでなく、「エースの役目」についてだった。
『10勝では期待からいうと物足りない。突き抜けるだけの力を持っている。チームの流れが悪い時は、どんどんストライクとって流れを作っていくのがエースの役目。今日は連敗止めるエースのピッチングだった』
~『日刊スポーツ』2023年8月18日配信記事 より
監督から「エース」として期待されるまでになった種市。つまり、山本由伸とのタイトル争いは、「1位オリックスと2位ロッテのエース同士」という構図でもあるわけだ。ペナントレースの行方とともに、彼ら同学年エースのタイトル争いから目が離せない。
去年(2022年)、一昨年(2021年)とパ・リーグの先発投手タイトルを総なめにしてきたオリックス・山本由伸。「最多勝」「最優秀防御率」「最多奪三振」「最高勝率」の4タイトルに加えて、正規タイトルではないが「最多完封」も達成し、2年連続での「投手5冠」は圧巻と言わざるを得ない。
その「山本独占時代」に待ったをかけようと期待がかかる投手がいる。山本と同じ1998年生まれの同学年、ロッテの種市篤暉だ。8月18日の楽天戦で、プロ7年目にして初の2桁勝利となる10勝目(4敗)をマーク。これで、11勝5敗でハーラートップを走る山本との勝ち星の差はわずか「1」となった。
『ドラフト指名された時に、ローテーションに入って10勝することが目標だった。7年かかったけど達成できてよかった』
~『時事通信ニュース』2023年8月18日配信記事 より(種市の言葉)
プロ2年目の2018年にはU-23ワールドカップで若き侍ジャパンメンバー入りを果たし、最高勝率賞(2勝0敗)を受賞。未来のエース候補として期待されながら、2桁勝利までなぜ7年かかったかといえば、2020年にトミー・ジョン手術を経験したから。それだけに、本人だけでなく球団関係者やマリーンズファンも、今回の2桁勝利達成には感慨深いものがあるのではないだろうか。
そして、俄然注目したいのは山本由伸とのタイトル争いだ。勝利数では「1」差。防御率2.78は1位の山本(1.50)と開きがあるものの、奪三振数「130」は山本に7差をつけ、離脱中のチームメイト佐々木朗希と並んでリーグ1位。さらに、勝率.714も堂々のリーグ1位。現状、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4タイトルのうち、山本と種市でリーグ1位を2部門ずつ分け合う状況だ。
もっとも、種市本人は、まだタイトル争いをそこまで意識していない。
『タイトルは欲しいけど、そこを目指すと力みにつながるので、結果的に獲れればいい』
~『スポニチアネックス』2023年8月19日配信記事 より(種市の言葉)
それでも、山本由伸とのタイトル争いは種市にとって期するものがあるはず。これまで「同学年・山本由伸」について語るとき、いつも並々ならぬ敬意を払っていたからだ。
初めて先発投手同士で投げ合った2019年5月の試合で、種市は山本を「自分たちの世代でナンバーワン」と称えるとともに、試合に勝ったにも関わらず、こんな言葉を並べていた。
『(山本には)自分は足元にも及ばないと思っています。近づけるようにというか、追い越せるように力をつけていきたい』
~『Full-Count』2019年5月17日配信記事 より
この年、種市は6月から8月にかけて「23イニング連続奪三振」をマーク。江夏豊(阪神)や木田勇(日本ハム)の持つ日本人最長記録に肩を並べた。だが、翌2020年、今度は山本由伸が種市の記録を抜く「25イニング連続奪三振」を達成し、日本新記録を達成してしまう。
種市にとっては、近付いたかと思えばまた離されてしまう、まさに偉大な好敵手・山本由伸。それだけに、山本のタイトル独占を阻止できたとすれば、種市にとって何よりの自信になるのは間違いない。
そんな種市に誰よりも期待するのはロッテの吉井理人監督だろう。1ヵ月前の楽天戦、6回途中4失点でKOされた種市に対して、吉井監督はこんな辛口コメントを残していた。
『よく頑張ったと思うんですけども、あの流れを作り出したのは種市のピッチングなので反省してもらいたい。アンラッキーな安打、死球、押し出し、ああいうことをやっていると流れが向こうに行っちゃう。そういうところを何とかするのが種市だが今日はできなかった』
~『デイリースポーツonline』2023年7月17日配信記事 より
種市が10勝を挙げた試合でも、指揮官の口から出たのは賞賛だけでなく、「エースの役目」についてだった。
『10勝では期待からいうと物足りない。突き抜けるだけの力を持っている。チームの流れが悪い時は、どんどんストライクとって流れを作っていくのがエースの役目。今日は連敗止めるエースのピッチングだった』
~『日刊スポーツ』2023年8月18日配信記事 より
監督から「エース」として期待されるまでになった種市。つまり、山本由伸とのタイトル争いは、「1位オリックスと2位ロッテのエース同士」という構図でもあるわけだ。ペナントレースの行方とともに、彼ら同学年エースのタイトル争いから目が離せない。