価値ある一発
「しっかり打つことで貢献したいというのはありますし、打ちたいという気持ちが強い」。
今年2月の春季キャンプの取材で今季にかける熱い思いを口にしていたロッテ・藤岡裕大が、ソフトバンクとの『2023 パーソルクライマックスシリーズ パ』で素晴らしい活躍を見せ、ファイナルステージ進出の立役者となった。
藤岡は14日の1戦目こそ無安打だったが、2戦目はチームが苦手にしている有原航平から2安打した。そして、3戦目は0-3の10回無死一、二塁、一発が出れば同点という場面で回ってきた第5打席。「前の2人が繋いでくれたので、ホームランを打つぐらいの気持ちで打席に入りました」。藤岡は津森宥紀が投じた初球の148キロストレートをとらえ、打球は右中間スタンド最前列、ラグーン席に飛び込む値千金の同点3ランを放った。
この3ランで同点に追いつくと、二死後、岡大海のレフト前に安打を放ち、続く安田尚憲が右中間に弾き返す適時二塁打でサヨナラ勝ち。0-0の延長10回表に3点を失った中で、その裏に4点を奪い、ファイナルステージ進出を決めた。
秋季練習から徹底的に振り込む
藤岡は昨季プロ入り5年間で自己ワーストとなる28試合の出場にとどまり、打率.176と悔しいシーズンに終わった。
巻き返しを図るべく、昨年10月に行われたZOZOマリンスタジアムでの秋季練習では誰よりもバットを振った。グラウンドに一番に現れ置きティーを行う日があれば、全体練習が終わったあと、休むことなく一塁側ベンチ前からライト方向に向かってロングティー。
さらに特打で振り込んだ後、加藤匠馬(オフに中日にトレード移籍)と共にロングティーする日もあった。スタッフに動画を撮影してもらい、自身の打撃をチェックし、チェック後に何かを確認するように素振りする姿を何度も見てきた。劇的同点弾のちょうど1年前にあたる22年10月16日の練習では、グラウンドに一番に姿を見せティー打撃を行っていた。
シーズンオフの自主トレでも「もっと打ちたい」という理由で打撃フォームを改造。今季結果を残すための準備を昨年の秋季練習から行ってきた。
シーズンが入ってからも「(新しいフォームは)わりかししっくりきているところはありますし、ここがこうなっているなと、微妙に修正して試合に挑めているのが、今年は良いのかなと思います」と良い状態で挑めるように修正に励んだ。“修正”について具体的に藤岡は「映像を見ながらここがこうなっているから、こうしようとかは自分でチェックポイントを理解できるようになってきたなという感じです」と説明する。
春先は白黒のバットを使っていたが、8月以降は「元々のバットが重たかったバットの重さを変えるタイミングで白木に変えました」と30、40グラム軽い白木のバットに変更。8月以降は打率.286(126-36)、1本塁打、14打点の成績を残した。
ポストシーズンに入ってからも、CSファーストステージでは値千金の同点3ランを放った。18日からは敵地・京セラD大阪で、リーグ3連覇のオリックスと日本シリーズ進出をかけて戦う。「ファイナル絶対勝って、もう一度ここに戻ってくるので、たくさんの応援よろしくお願いします」。もう1度ZOZOマリンスタジアムで戦うため、ファイナルステージでも、勝利を呼ぶ一打を放つ。
取材・文=岩下雄太