理想を形に
「素材のいい選手を獲得し、育成し、戦力にする」DeNAの初代GM・高田繁氏が掲げたベイスターズの基幹ビジョン。横須賀に育成施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」を建立させ、最新の測定装置も取り入れるなどハード面も充実させた。さらに投手コーチにメジャー経験者の大家友和氏を招き、若手の育成に力を入れたが、残念ながら成功していたとは言い切れない状況が続いていた。
そこでこのオフ、OBでもある入来祐作を2軍チーフ投手コーチとして召喚。3日からスタートした秋季トレーニングから合流した。
9年ぶりに戻ってきたベイスターズに「僕がここでやらしてもらったときのスタッフもたくさんいらっしゃってすごく嬉しかった」と笑顔で第一声。「当時と比べて環境が変わって。凄い整えてやっている球団になったなぁと。ちょっと感動していますね」と驚きも隠さなかった。
ソフトバンクとオリックスで投手陣を指導したが「強いチーム、弱いチーム限らずプロ野球選手になっているわけですから、素材は良いに決まってます」とキッパリ。「実際私も色々映像だけですけどチェックさせていただいて、全然1軍でも投げられるピッチャーいっぱいいると思いました」と頼もしいセリフを連発させた。
1軍と2軍の違いは「紙一重だと思うんですよね」とし「一軍で活躍できるかできないか、なぜ2軍にいるのか、1軍に上がれない技術の差とか、ポテンシャルの差は対して変わらないわけで。どうやったら結果が出るかを一緒に考えていかなくてはいけない。だからそれをなんとか今までの経験と、今ここのDeNAで発信していることを僕の中で融合させて選手たちに伝えていきたいと思います」と意気込んだ。
データを駆使するDeNAスタイルにも「個々のエビデンスというか、はっきりした答えが数値として出ているということを、いい形で選手たちに落とし込んで前に進んでほしいなと。アメリカの野球がそうなっているということを我々はわかっているんですけれども、そういったことをしっかりとトライしている球団ですので、私もトライしたいなと思います」と前向きに捉えた。
様々な経験をもとに
大きな目標は「チーム単位で言えば勝ちたいですしね。そして一番望むのはチームが勝つということに自分たちも加わっていけることがその子たちにとって幸せですからね。それを2軍で指を加えて眺めていることは悔しいことだと思いますから」と1軍での戦力として送り出すことと明言。しかし「僕もいろいろなところで野球界に携わってきてますけど、そういったところで自分が活躍して、野球選手として活躍していい人生を送ることはなかなか難しくて」と厳しい世界だということを熟知している。そのうえで「やることは結局泥臭いわけで。その辺のところを選手たちにうまく伝えていきたいですね」と現役時代の闘志を剥き出しにするピッチングスタイル同様、熱い指導で若手のレベルアップを図るとした。
23年限りで“熱い男”木塚敦志コーチが退任し、1,2軍ともにスマートなイメージのコーチが多くなった感のあるベイスターズ。ジャイアンツのドラ1からメジャー挑戦の球歴を持ちながら、用具係を経験し奄美ではうなぎを捕獲。さらにはコーヒーのCMに出演するなどユニークな一面も持ち合わせる熱血漢は、若き星たちを、熱き星たちに変貌させる。
取材・文 ・写真 / 萩原孝弘