ルーキーコーチが奮闘
「まだやっぱり慣れない感じですよ。田中コーチと柳田コーチの金魚のフンのように付いていってます」。3日から始まった秋季トレーニングを終えた藤田一也コーチは、少々疲労感を漂わせながら笑顔を見せた。
トレーニング最終日となった18日も林琢真、知野直人、蝦名達夫、小深田大地、西巻賢二らにノックの雨を降らせ、その後も横須賀スタジアムに移動し精力的に動き回った。
練習後は選手に身振り手振りで熱心にアドバイス。「これから自主トレに入っていくので、それには何をしていけばいいかということを、感じたことを伝えておきました。やるやらないは選手なんですけれども、2月までにこういうことを気をつけてやっておけば、スムーズにキャンプインできるんじゃないかなということを伝えました」とプロの心得を伝授。
具体的には「小深田だったら、どっちかといえば打たなければ試合には出られないので、打つのが大事なんですけれども」としながらも「足を使った守備をしたらバッティングにも活きてくるので。自主トレでは吉田正尚のところに行くというので、バッティング中心になると思うけど、守備もしっかりやっとかんとダメだよとは伝えました」と自らも、もともと名手として名を馳せていたが、その守備を磨いたことで打撃も向上していった経験を元に指導。
昨年自主トレを共にした蝦名には「蝦名にはサードやらしておいてくれと言われたので」と首脳陣の方針で外野手ながら内野にもチャレンジしていることを明かし「ちょっとマシにはなってきましたよ。一軍の試合ではまだ難しいですけど、ちょっと良くなったかなと思いますね」と手応えも実感している様子だった。
目についた選手は「林(琢真)がこのトレーニング期間で良くなったなと感じましたね。ぼく全般(の育成コーチ)なので一通り見るようにはしているんですけど、守備もバッティングも良くなった」と昨年ルーキーながら一軍で光った23歳の若武者の名を挙げた。「ショートをずっとやってなくて、一年目でショートやって」と大学時代はセカンドで活躍したが、プロでは逆の動きのポジションでの起用が増したことに「クライマックス(シリーズ)でもショートで出てそれなりに経験を積んで、いまはなんか面白いな、来年期待できそうだなとは感じましたね。ちょっとづつ慣れてきたんでしょうね」と目を細める。「でもまだまだですけどね。ここでできることは限られているので、どんどん試合に出て色々な経験を積まないと、ショートというのは難しいポジションなんで。流れも読まなくてはいけないし、回りも見えてこないといけない」とここでも現役時代、内野の要として活躍した経験を後輩に注ぐ決意も垣間見えた。
自らの課題も山積
ベイスターズに復帰して2年間プレーしたことで「選手も僕の性格わかってくれているんでやりやすい」と“実は人見知り"と公言する藤田には大きなメリットも感じているとしたが「まだノックの腕も良くないので、その辺は選手がカバーしてくれている。全然まだまだ思ったところに打てていないので」と課題も告白。
駆け抜けた2週間に「大変です。いまからミーティングですし、めちゃくちゃ頭痛いです。まだ周り見ているだけで、自分からどんどんという感じではないのでね。やりがいもこれからです。とりあえず大変です!」と言いながらも、指導者としての覚悟を感じさせた“ハマの牛若丸"。類まれなる経験と人柄、そして横浜愛を武器に若手をDOCKから大海原へ解き放っていく。
写真・文・取材 / 萩原孝弘