ニュース 2023.11.22. 17:30

2023年プロ野球 球団別「劇的すぎるサヨナラゲーム」(セ・リーグ編)

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【プロ野球日本シリーズ阪神対オリックス 第4戦】サヨナラ打を放った阪神・大山悠輔=2023年11月1日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、2023年のプロ野球を熱く盛り上げた「劇的すぎるサヨナラゲーム」にまつわるエピソードを紹介する。今回はセ・リーグ編。

延長タイブレークの末の劇的なサヨナラ優勝で幕を閉じたアジアプロ野球チャンピオンシップ。振り返れば、今年(2023年)のプロ野球も劇的なサヨナラシーンに溢れていた。今回は各球団別で、今季とくに忘れられない「劇的すぎるサヨナラゲーム」を振り返っていきたい。

中日ドラゴンズ:8月の宇佐見真吾

今年6月、2対2の交換トレードで日本ハムから中日へと移籍した宇佐見。日本ハムでは今季9試合の出場にとどまり、ヒット0本だった男が中日移籍とともに復活。7月に打率3割をマークすると、8月には勝負強さも発揮し、8月13日の広島戦、16日の巨人戦、27日のDeNA戦と、月間3本のサヨナラヒットを放つ離れ業を演じた。

宇佐見の3つのサヨナラ打がひときわファンの心に残ったのは、この8月13~27日の2週間、中日は連敗続きだったこと。つまり、宇佐見サヨナラ→宇佐見サヨナラ→8連敗→宇佐見サヨナラ、という状況だったのだ。

また、13・27日の試合はともに延長サヨナラ。しかも、どちらも柳裕也が先発登板し、13日は9回ノーノー、27日は7回1失点という好投を演じながら打線の援護が間に合わずに降板。そんな「ムエンゴのエース」に報いるものとなった。
『柳も頑張って頑張って投げてくれていた。中継ぎも頑張っていた』

~『日刊スポーツ』2023年8月27日配信記事 より(宇佐見真吾の言葉)

サヨナラヒットを月間3度もマークしたのは、88年8月の落合博満(中日)、02年8月の阿部慎之助(巨人)に次いで3人目の快挙だった。

東京ヤクルトスワローズ:苦しんだキャプテンの一振り


リーグ連覇から一転、今季5位に沈んだヤクルト。最終戦の結果いかんによっては最下位転落もあり得る苦しいシーズンだった。そんなチーム同様に苦しんだのがキャプテンの山田哲人だ。

今季の山田と言えば、開幕前はWBC優勝に貢献したものの、ペナントレースではキャリアワーストの打率.231、14本塁打、4盗塁と、「山田哲人」としては寂しい限り。そんな鬱憤を晴らすかのように大当たりだったのが10月4日、阪神を神宮球場に迎えての今季最終戦だ。

まずは3点を先制されたあとの1回裏、反撃の狼煙となる14号ソロを放つと、5回裏にはレフト前への同点タイムリー。さらに、2点を追いかける9回ウラ、同点に追いついてなおも1死一、三塁で打席に立った山田がセンターへのサヨナラ犠牲フライ。シーズンを締めくくり、最下位転落を防ぐ貴重な一打となった。

セ・リーグ連覇のチームが翌年最下位転落となればリーグ初の屈辱だっただけに、まさにキャプテンの意地が呼んだサヨナラ劇だったと言える。

読売ジャイアンツ:悩める坂本勇人、起死回生の一打


12球団最多のサヨナラ勝利「10」を飾った今季の巨人。そのうちの1本は侍ジャパン同様、新人の門脇誠が9月17日のヤクルト戦で放ったサヨナラ打。この時点で勝負強さは見せていたわけだが、劇的度で言えば6月16日、楽天との交流戦で生まれた坂本勇人の一発ではないか。

2点を追う9回無死二、三塁で打席に立った坂本は、バット一閃。打球は左中間スタンドへ飛び込む10号逆転サヨナラ3ランとなった。
『何とか打ちたいなっていう。ここで打たないとかっこ悪いなと思いながら打席に立ちました。こういう大歓声に包まれて最高にうれしいです』

~『スポーツ報知』2023年6月17日配信記事 より(坂本勇人の言葉)

今年の坂本と言えば、4月は月間打率1割台で限界説が囁かれ始めたことも。5~6月の時期もノーステップ打法を試したかと思えばすり足打法に切り替えたりと試行錯誤を続けるなかで放った起死回生の一打は、まさに自身にとっても復活の一打となった。

横浜DeNAベイスターズ:10年目で初めての……


今季序盤は首位争いも演じたDeNA。その立役者の1人で、今季ブレイクの兆しを見せたのが10年目の関根大気だ。夏場以降に成績を落としたが、5月末までは打率3割5分近くをキープする活躍を見せた。

その象徴的な一打が4月27日のヤクルト戦。6対6で延長にもつれた試合の10回裏、2死一、二塁で打席が回ってきた関根は、プロ10年目にして初となるサヨナラタイムリー。4時間を超える熱戦に決着をつけ、歓喜のウォーターシャワーを浴びた。
『すごくうれしい。本当に皆さんの声が届いていて、何とかやりたいと思って打席に入った。皆さんが喜んでくれて、それが幸せです』

~『サンスポ』2023年4月28日配信記事 より(関根大気の言葉)

ヒーローインタビューで「幸せ」という単語が響くのも新鮮な活躍だった。

ただ、「サヨナラゲーム」という観点で見れば、今年のDeNAはセ・リーグワーストの3試合だけ。競り負ける力の差が、一時は首位争いを演じながら3位で終わった要因だったかも知れない。

広島東洋カープ:仕事人の一打に大喜びしたあの人


3連覇以降、4年連続でBクラスに喘いでいた広島カープだが、今季は新井新監督のもと、2位へと躍進。そんな「新井カープ」らしい試合だったのが4月15日のヤクルト戦だ。

この日輝いたのは、翌日に35歳の誕生日を迎えるベテラン、秋山翔吾。1点ビハインドの9回裏、2死走者なしから代打の堂林が四球を選び、続く秋山翔吾が自身11年ぶりとなる逆転サヨナラアーチを描き、喜びを爆発させた。秋山と言えば前年8月6日の原爆投下の日に開催された「ピースナイター」で移籍後初のサヨナラヒットを打って見せたが、ここぞの場面での仕事人ぶりはさすがだ。

そんな秋山以上に喜んだのは、「就任後初のサヨナラ勝利」となった新井監督。普通ならベンチで秋山を出迎えるはずが、何と選手と一緒にホームベースで待ち構えていたのだ。
『みんなが待ってくれる瞬間は、なかなかあることではないのでうれしかった。その輪に首脳陣が出てくるのは12球団でもあまり見たことがなかったし、新井監督のリアクションがすごく素直でよかったなと思います』

~『中国新聞デジタル』2023年5月17日配信記事 より(秋山翔吾の言葉)

阪神タイガース:不動の4番、平常心で放った一打


今年のプロ野球を大いに盛り上げた阪神タイガース。なかでも、劇的なサヨナラ打と言えば、記憶にも新しい日本シリーズ第4戦だ。

3対3で迎えた9回裏、1死三塁の場面で、オリックス・バッテリーは2番・中野、3番・森下と2者連続の申告敬遠で満塁策。4番・大山悠輔との勝負を選んだ。甲子園を異様なボルテージが包むなか、とにかく「冷静さ」を意識したのが大山だった。
『もう冷静に行こうと思っていたんですが、ファンの皆さんの歓声が力になりました』

~『スポニチアネックス』2023年11月1日配信記事 より(大山悠輔の言葉)

果たして、フルカウントから放った打球はレフト前へのサヨナラタイムリー。試合後には改めて、熱烈な歓声を送るファンに向けてメッセージを送った。
『独特の雰囲気というか、僕たちも初めてなので、ちょっと難しい部分ありますが、このすごい歓声のおかげで力を発揮できていると思っています』

~『スポニチアネックス』2023年11月1日配信記事 より(大山悠輔の言葉)

結果的に第7戦までもつれた日本シリーズにおいて、ひときわ大きな意味を持つサヨナラ劇となった。

本拠地開催だからこそ生まれるサヨナラの歓喜。来季のプロ野球でもそのドラマを存分に味わいたい。

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