話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、2023年のプロ野球を熱く盛り上げた「劇的すぎるサヨナラゲーム」にまつわるエピソードを紹介する。今回はパ・リーグ編。
今年(2023年)も春のWBCから秋のアジアプロ野球チャンピオンシップまで盛り上がり続けた野球界。なかでも盛り上がる瞬間と言えば「サヨナラゲーム」だ。そこで今回は、今季のプロ野球の試合から球団別の「劇的すぎるサヨナラゲーム」について振り返っていきたい。
4月1日、開幕2戦目の楽天戦。3対3の同点で迎えた延長10回裏、先頭打者の野村佑希が二塁打を放って無死二塁とチャンスを迎え、打席には清宮幸太郎。その2球目の変化球を弾き返すと打球はライト前へ。セカンドランナーが一気に生還し、4時間22分の激闘に終止符を打った。
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この勝利は日本ハムにとって今季初勝利であり、清宮にとってプロ初のサヨナラ打であり、そして何よりも新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」での記念すべき初勝利に。球団史・球場史を語り継ぐ上でこれ以上ない貴重な一打となった。
今季はパ・リーグ最少の3試合しかサヨナラ勝ちのなかった西武。そのうちの1つを成立させたのは頼れる大ベテラン、中村剛也だ。
7月15日の日本ハム戦。0対0で迎えた9回裏、1死二塁のチャンスで打席が回ってくると、センターオーバーのサヨナラ2点タイムリー。39歳11ヵ月でのサヨナラ打は、球団最年長サヨナラ記録(67年5月:ロイの39歳5ヵ月)を56年ぶりに更新した。
また、自身にとってはこれがプロ8本目のサヨナラ打。球団では清原和博の11本に次ぐ、豊田泰光、栗山巧と並ぶ歴代2位となった。
今季8月15日に40歳を迎えた不惑のスラッガーだが、そのバットはまだまだ健在。3・4月は打率.364、7本塁打、14打点、リーグトップの長打率.727を記録し、月間MVPを受賞。また、4月30日にはプロ野球史上初、前人未到の通算2000三振。これもまた立派な勲章だ。さらに、9月には球団初「40代でのおかわり弾(1試合2本)」を記録。来季もその剛打で、サヨナラ打のおかわりを期待したい。
もっとも、涙したのは小深田ではなく、小郷裕哉。楽天が2点リードしていた8回、一挙3点を失うエラーをしてしまい、自分のミスが原因で敗戦寸前まで追い込まれていたからだ。その緊張の糸が切れたのか、小深田のサヨナラ弾直後から号泣。そんな小郷にチームメートが次々と駆け寄り、頭をポンポンと叩いて慰める姿がまたファンの涙を誘ったのだった。
今季リーグ1位となる9回のサヨナラ勝利を収めたソフトバンク。そんななかで印象的だったサヨナラゲームが9月30日の日本ハム戦。1点を追う9回に3番・柳田悠岐の21号ソロで同点に追いつくと、5番の中村晃がサヨナラソロホームラン、頼れるベテラン2人が最終回にアベックアーチを放って劇的な勝利を収めた。
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ヒーローインタビューでこうコメントした中村。実はこの9月、14日までは月間打率3割7分8厘と好調だったが、体調不良で9月16日に一時抹消。23日に復帰するも、以降は月前半の大当たりがウソのように19打席ノーヒット……そんな不調を乗り越え、復帰後初ヒットが大仕事となった。
また、打った相手が元同僚の田中正義という点も、劇的なドラマに1つのアクセントを加えた。
ペナントレースでもソフトバンクに次ぐ8試合のサヨナラ勝利を収めたロッテだが、「劇的度」で言えば、クライマックスシリーズのあの一戦で決まりだろう。
10月16日、シーズン2位で挑んだパ・クライマックスシリーズ・ファーストステージ第3戦。ペナントレース1毛差と、まさに毛の差しかなかった3位ソフトバンクとの決戦は0対0のまま延長戦へ。その表の攻撃でソフトバンクが一挙3点を奪い、「これは決まったかな」と多くの野球ファンが思ったはず。
だが、ロッテも3点を追いかける10回裏に一、二塁とチャンスをつくり、左打席に立った藤岡裕大は初球のストレートを一閃。打球はマリーンズファンが待つ右中間スタンドへの起死回生同点3ランに。ZOZOマリンスタジアムには今年で勇退となる谷保恵美さんの「藤岡選手、ホームランでございます!」のアナウンスが流れ、その声をかき消さんばかりのファンの大歓声がこだました。
さらに、2死一塁として、この日途中出場の安田尚憲が劇的すぎるサヨナラヒット。「幕張の奇跡」と称される劇的ドラマが完結し、ファイナルステージへと駒を進めた瞬間だった。
そんな殊勲打2人について、「集中力」という観点で的確なコメントを残してくれたのは吉井理人監督だ。
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優勝したオリックスと言えば、沢村賞の山本由伸はもちろんのこと、吉田正尚の穴を埋めた森友哉、首位打者に輝いた頓宮裕真……とキーマンが何人も思い浮かぶ。
その面々が揃って活躍したサヨナラ勝利が5月6日の西武戦だ。この日は先発の山本由伸が7回2失点と力投。だが、8回にも1点を追加され、1対3と2点を追いかけ、9回裏の攻撃へ。2死満塁という絶好のチャンスの場面で、まずは森が同点に追いつく2点タイムリー。続く頓宮がライト前へサヨナラ打を放ち、劇的勝利を収めた。
その9回裏の攻撃について、殊勲打の2人が互いに信じ合うコメントを残したのが印象的だ。
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森友哉がこう語れば、頓宮は次のように切り返す。
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この試合も含め、今季のオリックスはサヨナラ勝ちが7回。それ以上に1点差の勝敗が28勝13敗で15もの貯金をつくったあたりに勝負強さがうかがえた。
もちろん、ここで挙げた試合以外のサヨナラゲームが忘れられない、という人もいるはず。そうやって語り合えることもまたプロ野球の醍醐味だ。
今年(2023年)も春のWBCから秋のアジアプロ野球チャンピオンシップまで盛り上がり続けた野球界。なかでも盛り上がる瞬間と言えば「サヨナラゲーム」だ。そこで今回は、今季のプロ野球の試合から球団別の「劇的すぎるサヨナラゲーム」について振り返っていきたい。
北海道日本ハムファイターズ:新球場で記念すべき一打
9月16日に万波中正が放った「初回先頭打者アーチ&サヨナラアーチ」というパ・リーグ史上初の記録も熱かった。だが、今季の日本ハムを象徴するサヨナラ打、という意味ではもう1人を推したい。4月1日、開幕2戦目の楽天戦。3対3の同点で迎えた延長10回裏、先頭打者の野村佑希が二塁打を放って無死二塁とチャンスを迎え、打席には清宮幸太郎。その2球目の変化球を弾き返すと打球はライト前へ。セカンドランナーが一気に生還し、4時間22分の激闘に終止符を打った。
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『たくさんの人たちに勝ちを見せたかった。みんなの気持ちが最後、僕に乗り移りました』
~『日刊スポーツ』2023年4月1日配信記事 より(清宮幸太郎の言葉)
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この勝利は日本ハムにとって今季初勝利であり、清宮にとってプロ初のサヨナラ打であり、そして何よりも新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」での記念すべき初勝利に。球団史・球場史を語り継ぐ上でこれ以上ない貴重な一打となった。
埼玉西武ライオンズ:球団最年長サヨナラ記録
今季はパ・リーグ最少の3試合しかサヨナラ勝ちのなかった西武。そのうちの1つを成立させたのは頼れる大ベテラン、中村剛也だ。
7月15日の日本ハム戦。0対0で迎えた9回裏、1死二塁のチャンスで打席が回ってくると、センターオーバーのサヨナラ2点タイムリー。39歳11ヵ月でのサヨナラ打は、球団最年長サヨナラ記録(67年5月:ロイの39歳5ヵ月)を56年ぶりに更新した。
また、自身にとってはこれがプロ8本目のサヨナラ打。球団では清原和博の11本に次ぐ、豊田泰光、栗山巧と並ぶ歴代2位となった。
今季8月15日に40歳を迎えた不惑のスラッガーだが、そのバットはまだまだ健在。3・4月は打率.364、7本塁打、14打点、リーグトップの長打率.727を記録し、月間MVPを受賞。また、4月30日にはプロ野球史上初、前人未到の通算2000三振。これもまた立派な勲章だ。さらに、9月には球団初「40代でのおかわり弾(1試合2本)」を記録。来季もその剛打で、サヨナラ打のおかわりを期待したい。
東北楽天ゴールデンイーグルス:サヨナラアーチで涙したのは……
涙の結末となったのは6月8日、阪神との交流戦。1点を追う9回裏、連続四球でチャンスをつくるも、アウトカウントは2つ。敗戦寸前の場面で打席に立った小深田大翔は、初球のインコース真っ直ぐを見事に捉え、打球は右翼席に飛び込む逆転サヨナラ3ランに。プロ4年目で初のサヨナラアーチは、当時最下位に甘んじていたチームに新たな勢いをもたらす一打となった。もっとも、涙したのは小深田ではなく、小郷裕哉。楽天が2点リードしていた8回、一挙3点を失うエラーをしてしまい、自分のミスが原因で敗戦寸前まで追い込まれていたからだ。その緊張の糸が切れたのか、小深田のサヨナラ弾直後から号泣。そんな小郷にチームメートが次々と駆け寄り、頭をポンポンと叩いて慰める姿がまたファンの涙を誘ったのだった。
福岡ソフトバンクホークス:体調不良を乗り越えたベテランの一振り
今季リーグ1位となる9回のサヨナラ勝利を収めたソフトバンク。そんななかで印象的だったサヨナラゲームが9月30日の日本ハム戦。1点を追う9回に3番・柳田悠岐の21号ソロで同点に追いつくと、5番の中村晃がサヨナラソロホームラン、頼れるベテラン2人が最終回にアベックアーチを放って劇的な勝利を収めた。
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『いや、やっと打ったなと。体調を崩して復帰してから1本もヒットを打っていなかったので、やっと打ったなと。そういう感じです』
~『西スポWEB otto!』2023年9月30日配信記事 より(中村晃の言葉)
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ヒーローインタビューでこうコメントした中村。実はこの9月、14日までは月間打率3割7分8厘と好調だったが、体調不良で9月16日に一時抹消。23日に復帰するも、以降は月前半の大当たりがウソのように19打席ノーヒット……そんな不調を乗り越え、復帰後初ヒットが大仕事となった。
また、打った相手が元同僚の田中正義という点も、劇的なドラマに1つのアクセントを加えた。
千葉ロッテマリーンズ:「幕張の奇跡」を生んだ2人の集中力
ペナントレースでもソフトバンクに次ぐ8試合のサヨナラ勝利を収めたロッテだが、「劇的度」で言えば、クライマックスシリーズのあの一戦で決まりだろう。
10月16日、シーズン2位で挑んだパ・クライマックスシリーズ・ファーストステージ第3戦。ペナントレース1毛差と、まさに毛の差しかなかった3位ソフトバンクとの決戦は0対0のまま延長戦へ。その表の攻撃でソフトバンクが一挙3点を奪い、「これは決まったかな」と多くの野球ファンが思ったはず。
だが、ロッテも3点を追いかける10回裏に一、二塁とチャンスをつくり、左打席に立った藤岡裕大は初球のストレートを一閃。打球はマリーンズファンが待つ右中間スタンドへの起死回生同点3ランに。ZOZOマリンスタジアムには今年で勇退となる谷保恵美さんの「藤岡選手、ホームランでございます!」のアナウンスが流れ、その声をかき消さんばかりのファンの大歓声がこだました。
さらに、2死一塁として、この日途中出場の安田尚憲が劇的すぎるサヨナラヒット。「幕張の奇跡」と称される劇的ドラマが完結し、ファイナルステージへと駒を進めた瞬間だった。
そんな殊勲打2人について、「集中力」という観点で的確なコメントを残してくれたのは吉井理人監督だ。
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――藤岡の一発は
「一発ほしいところで一発で決めてくれた。すごい集中力だと思います」
――2死から安田がサヨナラ打
「今日はスタメンじゃなかったけど、あとからでも集中してやってくれた。スーパー安田でしたね」
~『サンスポ』2023年10月16日配信記事 より(吉井監督の言葉)
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オリックス・バファローズ:信頼し合うバットマンたち
優勝したオリックスと言えば、沢村賞の山本由伸はもちろんのこと、吉田正尚の穴を埋めた森友哉、首位打者に輝いた頓宮裕真……とキーマンが何人も思い浮かぶ。
その面々が揃って活躍したサヨナラ勝利が5月6日の西武戦だ。この日は先発の山本由伸が7回2失点と力投。だが、8回にも1点を追加され、1対3と2点を追いかけ、9回裏の攻撃へ。2死満塁という絶好のチャンスの場面で、まずは森が同点に追いつく2点タイムリー。続く頓宮がライト前へサヨナラ打を放ち、劇的勝利を収めた。
その9回裏の攻撃について、殊勲打の2人が互いに信じ合うコメントを残したのが印象的だ。
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『後ろの頓宮につなぐ、決めてくれると信じて打席に立っていた』
~『スポニチアネックス』2023年5月6日配信記事 より(森友哉の言葉)
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森友哉がこう語れば、頓宮は次のように切り返す。
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『積極的に森さんがいく姿を見て、僕もファーストストライクからバットを振れた。それでいい結果につながった』
~『スポニチアネックス』2023年5月6日配信記事 より(頓宮裕真の言葉)
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この試合も含め、今季のオリックスはサヨナラ勝ちが7回。それ以上に1点差の勝敗が28勝13敗で15もの貯金をつくったあたりに勝負強さがうかがえた。
もちろん、ここで挙げた試合以外のサヨナラゲームが忘れられない、という人もいるはず。そうやって語り合えることもまたプロ野球の醍醐味だ。