話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、2023年のプロ野球を熱く盛り上げた1人、北海道日本ハムファイターズで活躍した万波中正選手にまつわるエピソードを紹介する。
世界最高峰のプロバスケNBAには「MIP(Most Improved Player)」賞というものがある。Improvedとは「改善した、成長した」という意味で、前年度と比べて飛躍的な成長を遂げた若手選手に贈られる賞だ。新人賞を逃した選手でも2年目・3年目以降に飛躍してスター選手になるケースも多く、むしろその後の安定的な活躍ぶりは新人賞受賞選手以上、とも言える。
余談だが、日本のプロバスケBリーグにもMIP賞はあり、こちらは「Most Impressive Player」で、最も印象的な(Impressive)活躍をした選手に贈られるもの。だが、正直言ってMVPとの違いがわかりにくい、と思うのは筆者だけであろうか。
閑話休題。NBAに倣って日本のプロ野球でもMIPを選ぶとすれば、今季はこの男に決まりではないだろうか。北海道日本ハムファイターズの万波中正だ。
プロ5年目の2023年シーズン、141試合に出場して自身初の規定打席に到達。打率.265、25本塁打、74打点をマークし、パ・リーグ本塁打王にはわずか1本差で届かなかったものの、ベストナインとゴールデン・グラブ賞のダブル受賞を果たした。
ただ、こうした数字や受賞歴以外でも、今年の万波は春先から激動のドラマに満ちていた。そんな2023年の万波中正物語を改めて振り返ってみたい。
今年の野球界幕開けを告げた、侍ジャパンのWBCでの活躍。実は世界一に輝いた今春の代表で「チーム第1号」を放ったのは、「お助け侍」とも呼ばれたサポートメンバーとして中日との壮行試合に出場した万波。まさに、今年の躍進の狼煙となる一発となった。
もっとも、万波にとって「侍1号」以上に刺激となったのは“世界の大砲”大谷翔平を間近で見ることができたことだろう。
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万波がこう語って受賞を喜んだのは5月のパ・リーグ月間MVPを受賞したとき。この5月だけで7本塁打をマークし、プロ入り後、初のタイトルを手にした。
なかでも衝撃的だったのは5月30日、交流戦初日に放った2打席連続アーチだ。この試合は4番に座った万波の打点のみで2対1と勝利。チームの主軸として存在感を見せ始めた時期だった。
今年のオールスターゲームで最も輝いた男、と言えば万波だ。まずは7月19日の第1戦。選手間投票で選ばれ、初のオールスターに臨んだ万波は6回の守備から途中出場。すると次の7回、オールスター初打席でフルスイングした打球は、ライトポールを直撃。史上18人目となる「オールスター初打席初アーチ」の快挙で敢闘賞を受賞した。
そして翌日の第2戦。パの「4番センター」に抜擢されると、セ・リーグ先発バウアーから左中間席へ飛び込む特大の一発。オールスターでの2試合連発は23人目、オールスター初出場からの2試合連続アーチは史上初の快挙であり、文句なしでのMVP受賞となった。
まさに歴史的な活躍となったのが9月16日のソフトバンク戦でのこと。この日、1番で起用された万波は1回裏、自身初の先頭打者アーチを放ち、先制点を挙げる。
その後、同点に追いつかれ、迎えた9回裏、1死一塁で打席に立つと、ソフトバンク・オスナの153キロストレートを強振。打球はエスコンフィールドのレフトスタンド2階席上段へ吸い込まれるサヨナラアーチとなったのだ。
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同一試合で初回先頭打者弾とサヨナラ本塁打を記録したのは、93年10月のパウエル(中日)に次いで30年ぶり2人目、パ・リーグでは史上初の快挙だった。
侍サポートメンバーから8ヵ月。今度は正式にフル代表のユニフォームに袖を通した万波。井端ジャパンの初陣となったアジアプロ野球チャンピオンシップでは、1次リーグの韓国戦でまずはホームラン。さらに決勝の韓国戦でも3安打と大事な一戦でチームに貢献し、日本の全勝優勝の立役者となった。
結果的に万波は全試合でスタメン出場し、打率は.353。オーストラリア戦では牧秀悟に代わって「日本の4番」を務めるなど存在感を発揮し、大会ベストナインにも選出。春は「お助け侍」だった男が秋には「本物の侍」として、まさに今季の飛躍ぶりを証明する活躍となった。
そして迎えたオフシーズン。上述したように「ゴールデン・グラブ賞」と「ベストナイン」に選ばれ、28日に行われたNPB AWARDSという晴れ舞台にも出席。飛躍のシーズンに対して、これ以上ないご褒美となったのではないだろうか。
そして、大事なのは飛躍した翌年、2024年も今季以上の活躍を見せること。万波自身、その心算はもうできていると見えて、オフの過ごし方についてこう答えている。
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世界最高峰のプロバスケNBAには「MIP(Most Improved Player)」賞というものがある。Improvedとは「改善した、成長した」という意味で、前年度と比べて飛躍的な成長を遂げた若手選手に贈られる賞だ。新人賞を逃した選手でも2年目・3年目以降に飛躍してスター選手になるケースも多く、むしろその後の安定的な活躍ぶりは新人賞受賞選手以上、とも言える。
余談だが、日本のプロバスケBリーグにもMIP賞はあり、こちらは「Most Impressive Player」で、最も印象的な(Impressive)活躍をした選手に贈られるもの。だが、正直言ってMVPとの違いがわかりにくい、と思うのは筆者だけであろうか。
閑話休題。NBAに倣って日本のプロ野球でもMIPを選ぶとすれば、今季はこの男に決まりではないだろうか。北海道日本ハムファイターズの万波中正だ。
プロ5年目の2023年シーズン、141試合に出場して自身初の規定打席に到達。打率.265、25本塁打、74打点をマークし、パ・リーグ本塁打王にはわずか1本差で届かなかったものの、ベストナインとゴールデン・グラブ賞のダブル受賞を果たした。
ただ、こうした数字や受賞歴以外でも、今年の万波は春先から激動のドラマに満ちていた。そんな2023年の万波中正物語を改めて振り返ってみたい。
3月:WBC侍ジャパンのサポートメンバーでホームラン
今年の野球界幕開けを告げた、侍ジャパンのWBCでの活躍。実は世界一に輝いた今春の代表で「チーム第1号」を放ったのは、「お助け侍」とも呼ばれたサポートメンバーとして中日との壮行試合に出場した万波。まさに、今年の躍進の狼煙となる一発となった。
もっとも、万波にとって「侍1号」以上に刺激となったのは“世界の大砲”大谷翔平を間近で見ることができたことだろう。
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『あんなに打球飛ぶんだって。本当にすごいなって。今まで僕が見た打撃練習で1つも2つも上の次元』
『改めてもっともっと練習して、もっともっとトレーニングして、ご飯もいっぱい食べて、ああいった打球を打てるようになりたいって強く思いました』
~『スポニチアネックス』2023年3月4日配信記事 より
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5月:パ・リーグ月間MVP受賞
-----『プロ野球で初めてこういった賞を獲れたので、本当にうれしく思います。強い打球を確率良くフェアゾーンに飛ばしていくということを今年の目標にやってきて、それが少しずつ形になってきたのが5月だったと思います』
~北海道日本ハムファイターズ公式サイト(2023年6月8日配信記事)より
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万波がこう語って受賞を喜んだのは5月のパ・リーグ月間MVPを受賞したとき。この5月だけで7本塁打をマークし、プロ入り後、初のタイトルを手にした。
なかでも衝撃的だったのは5月30日、交流戦初日に放った2打席連続アーチだ。この試合は4番に座った万波の打点のみで2対1と勝利。チームの主軸として存在感を見せ始めた時期だった。
7月:オールスター2戦連発! 敢闘賞&MVPをW受賞
今年のオールスターゲームで最も輝いた男、と言えば万波だ。まずは7月19日の第1戦。選手間投票で選ばれ、初のオールスターに臨んだ万波は6回の守備から途中出場。すると次の7回、オールスター初打席でフルスイングした打球は、ライトポールを直撃。史上18人目となる「オールスター初打席初アーチ」の快挙で敢闘賞を受賞した。
そして翌日の第2戦。パの「4番センター」に抜擢されると、セ・リーグ先発バウアーから左中間席へ飛び込む特大の一発。オールスターでの2試合連発は23人目、オールスター初出場からの2試合連続アーチは史上初の快挙であり、文句なしでのMVP受賞となった。
9月:歴史的「先頭打者弾&サヨナラ弾」
まさに歴史的な活躍となったのが9月16日のソフトバンク戦でのこと。この日、1番で起用された万波は1回裏、自身初の先頭打者アーチを放ち、先制点を挙げる。
その後、同点に追いつかれ、迎えた9回裏、1死一塁で打席に立つと、ソフトバンク・オスナの153キロストレートを強振。打球はエスコンフィールドのレフトスタンド2階席上段へ吸い込まれるサヨナラアーチとなったのだ。
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『自分自身も鳥肌たちながら、今まで以上の歓声を浴びて、ビリビリしながら一周していました』
~『日刊スポーツ』2023年9月16日配信記事 より
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同一試合で初回先頭打者弾とサヨナラ本塁打を記録したのは、93年10月のパウエル(中日)に次いで30年ぶり2人目、パ・リーグでは史上初の快挙だった。
11月:正式な侍ジャパンとして優勝&ベストナイン
侍サポートメンバーから8ヵ月。今度は正式にフル代表のユニフォームに袖を通した万波。井端ジャパンの初陣となったアジアプロ野球チャンピオンシップでは、1次リーグの韓国戦でまずはホームラン。さらに決勝の韓国戦でも3安打と大事な一戦でチームに貢献し、日本の全勝優勝の立役者となった。
結果的に万波は全試合でスタメン出場し、打率は.353。オーストラリア戦では牧秀悟に代わって「日本の4番」を務めるなど存在感を発揮し、大会ベストナインにも選出。春は「お助け侍」だった男が秋には「本物の侍」として、まさに今季の飛躍ぶりを証明する活躍となった。
オフ:受賞ラッシュで見据える来季は?
そして迎えたオフシーズン。上述したように「ゴールデン・グラブ賞」と「ベストナイン」に選ばれ、28日に行われたNPB AWARDSという晴れ舞台にも出席。飛躍のシーズンに対して、これ以上ないご褒美となったのではないだろうか。
そして、大事なのは飛躍した翌年、2024年も今季以上の活躍を見せること。万波自身、その心算はもうできていると見えて、オフの過ごし方についてこう答えている。
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『今まで以上に時間とお金をかけて、いい練習をしたいなと思っていますし、その準備は着々と進んでいる。一段落したら、取り組むだけです』
~『日刊スポーツ』2023年11月28日配信記事 より
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