「バッティングを鍛えてこいということで最初ファーム行って、途中で一軍に上がってすぐにスタメンで出させてもらいましたけど、そこで全然結果も出せなかった。僕に足りないものはたくさんあるなと感じました」。
試合終盤の“代走の切り札”として起用されることの多かったロッテの和田康士朗は今季、足だけでなく、プロ初本塁打を放つなど、プロ入り後最多の113打席に立ち、打率.265、3本塁打、9打点の成績を残したが、課題の残るシーズンと感じたようだ。
「バッティングが良くないと試合に出られないので、バッティングをしっかりやっていきたいです。監督になった吉井さんにもバッティングを期待していると言われたので、バッティングで結果を残せればいいかなと思います」。
和田は吉井理人監督が就任した今季、“代走”から脱却し、明確にレギュラーを狙いに行った。開幕はファームスタートだったが、ファームでスタメン出場し打席に多く立った。ヒッチして打ったり、バスター気味に打ったり、すり足で打ったり、時には打席で歩きながら打ったりと、色々な構えを試した。
「バスターの歩きながらみたいなのは、内田さんにそれも塁に出るひとつの選択肢だぞと言われました。それでやってみてそれが一番打ちにいけていて、良いスイングの軌道をしていると言われたので、それで打ったりしたりしています」。
巨人、広島で打撃コーチとして数多くの選手を育て上げ、今季臨時打撃コーチを務めた内田順三コーチの助言を積極的に取り入れた。
バットも春季キャンプでは池田来翔モデルのバットで打っていたが、「内田さんとずっと練習していて、軽いバット(池田来翔モデル)を使っていたんですけど、どうしても軽いから体を振って振ろうとしてしまう。だから重くて太いバットを使って、そうしたら体を振ったら振れない。しっかり最短距離で出せるようにという意味でこのバットを使うようにしました」と大石大二郎さんモデルのバットに変更。
5月2日に一軍昇格を果たすと、同日の楽天戦に『9番・左翼』で先発出場し、翌3日の楽天戦も『9番・左翼』で出場し今季初安打。4日の楽天戦では、0-0の3回無死走者なしの第1打席、2ボール1ストライクから松井友飛のストレートをセンター前に弾き返し出塁。一死後、2番・友杉篤輝の1ストライクからの2球目にスタートを切り、今季初盗塁を決めた。和田は四球で出塁した5回にも、この日2つ目となる二塁盗塁を決め、武器である“足”でアピールした。
5月14日の日本ハム戦では、0-2の3回一死走者なしの第1打席、メネズが1ボール1ストライクから投じた3球目の外角ストレートを一塁方向へセーフティーバント。日本ハムの一塁手・マルティネスが素早く捕球し、一塁ベースカバーに入ったセカンド・福田光輝に送球したが、和田の足の方が速く一塁への内野安打。一軍の公式戦では初めてセーフティーバント安打を決めた。
「急がないことですかね。はやくセーフになりたくて、走りながらバントをやってしまうというのがあるので、急がず転がしてから走ること」を意識。「構えてから十分セーフになると言ってくれて、少しずつ感覚は掴めるようになってきました」と本人も手応えを掴みつつあった中で、一軍の公式戦の舞台で初めてセーフティーバントを成功させた。
育成選手時代の19年の10月に「堀さんには、足も武器だと言われているので、セーフティーバントの構えだけでもやってみろと言われています」と、堀幸一二軍打撃コーチの助言をきっかけに、セーフティーバントの練習を本格的に取り組み始めた。
試合前練習でセーフティの練習をすることはあったが、昨季までは試合でセーフティバントを試みる機会が少なかった。
「ずっと練習していましたけど、試合でどんどんやっていけと言われたら、今年特に言われていますね」。
「コーチからもセーフティバントを増やしていこうと言われていますし、一番は塁に出ないといけない。塁に出る手段としてですね」。
今季は一軍でセーフティバントを5回決めた。
7月29日のソフトバンク戦では、「とにかく塁に出ようと思ってバットを振りました」と、先発・大関友久が1ストライクから投じた2球目の144キロストレートを振り抜き、ライトホームランテラスに飛び込む嬉しいプロ初本塁打を放った。ちなみに、7月下旬から軽いバットに戻した。
途中出場した8月20日の楽天戦、3-3の9回に守護神・松井裕樹が2ボール1ストライクから投じた3球目の148キロストレートを振り抜き右中間に二塁打。このチャンスメイクをきっかけに、荻野貴司の決勝打に繋げた。
特にこの二塁打は和田が今年よく口にしていた「コンパクトなスイング」ができ、取り組んできた成果を発揮できた打席にも見えた。「今までの僕だったら、甘い球が来たと思って力んでブンブン振っていたと思うんですけど、今年の練習を活かすことができたのかなと思います」と振り返る。
ライト前の安打を武器である足を活かして二塁打にしたように見えたが、「打った瞬間、右中間だったので二塁打というより三塁へいく気持ちで走っていました」と、三塁を狙っていたそうだ。
勝負の9月に入ってからは代走での出場がメインになった。9月18日の西武戦では、0-1の9回、先頭のポランコがクリスキーからライト前に安打を放つと、和田はポランコの代走で出場。続く角中勝也の1ボールからの2球目に二塁盗塁を決めた。
今季は20盗塁中19盗塁が5球目以内での盗塁だったが、「今年は何球以内というのはあんまり考えていないです」とのこと。盗塁成功率の高さについても「今年は去年ほど思いつめずに気楽に。去年は代走で出て行って、いかなくちゃいけないという感じだったので、今年はそういうのをなくして、別にいかなくてもいいやという感じで走っています」と明かす。そういった考えに至った理由について「大塚さんからも今年は積極的じゃなくて、行ける時に行こうという感じと話していたので、そういうところかなと思います」と教えてくれた。
その和田が二塁へ進むと、角中が空振り三振、山口航輝が左飛で2アウトとなったが、安田尚憲が、クリスキーのストレートをライト前に弾き返す。浅い打球だったが、二塁走者の和田はスピードを緩めることなく三塁ベースを蹴り、ヘッドスライディングで生還した。和田は「まずはチームのために1点を取るというのが第一なので、しっかり1点を取れるような走塁をやっていきたい」と9月14日の取材で話していたが、まさに有言実行の走塁で同点に追いついた。
「変わらずにバッティング練習をしっかり。なかなか打席に立てないと、バッティング練習でホームランを狙ったり、大振りになっちゃうんですけど、そこはいつスタメンで行ってもいいようにしっかりバッティング練習でもライナーを打つようにしています」。
代走での出場が多く、打席数が少なくなったが、準備はしていた。その準備を発揮したのが、9月最初のスタメンとなった24日のソフトバンク戦だ。ZOZOマリンスタジアムで初本塁打を放つなど、プロ入り後初となる1試合4安打。25日のソフトバンク戦でも和田毅の外角のスライダーに体勢を崩しながらもライト前に運べば、27日の日本ハム戦では2点適時打を含む2安打。そして10月1日の西武戦では、0-0の3回二死走者なしの第1打席、隅田知一郎が投じた初球のストレートをマリーンズファンの待つライトラグーン席へ先制の第3号ソロ、1-1の5回二死一塁の第2打席はセカンドへの内野安打、1-2の7回二死一塁の第3打席は隅田のチェンジアップに泳ぎながらもうまく合わせてライト前に運び、猛打賞を達成した。
「4安打打った時の最初のライト線とかこの間の日ハム戦の一塁線もそうですけど、大きい打球を打たなくても、低くて速い打球、間を抜けて二塁打、三塁打になるので、そういう打球を打てるように意識しています」。
昨季までの3年間、126打席立って本塁打は1本もなかったが、今季は113打席でプロ初本塁打を含む3本のアーチを描いた。コンパクトなスイングでも、しっかりと飛距離が出ている。
「全然(ホームランを)狙っていないんですけど、狙っていなくてもコンパクトなスイングをすれば当たれば飛んでいくので、そういうのを今はいい感じなのかなと思います」。
与えられた機会で、シーズン終盤バットで結果を残したのは非常に良かった。レギュラーを奪うためにも、継続性が大事になってくる。
「バッティングはまだまだなので、しっかり来年は最初からスタメンで出られるようなバッティングをしていきたいと思います」。
取材・文=岩下雄太
試合終盤の“代走の切り札”として起用されることの多かったロッテの和田康士朗は今季、足だけでなく、プロ初本塁打を放つなど、プロ入り後最多の113打席に立ち、打率.265、3本塁打、9打点の成績を残したが、課題の残るシーズンと感じたようだ。
開幕は二軍スタート
和田は吉井理人監督が就任した今季、“代走”から脱却し、明確にレギュラーを狙いに行った。開幕はファームスタートだったが、ファームでスタメン出場し打席に多く立った。ヒッチして打ったり、バスター気味に打ったり、すり足で打ったり、時には打席で歩きながら打ったりと、色々な構えを試した。
「バスターの歩きながらみたいなのは、内田さんにそれも塁に出るひとつの選択肢だぞと言われました。それでやってみてそれが一番打ちにいけていて、良いスイングの軌道をしていると言われたので、それで打ったりしたりしています」。
巨人、広島で打撃コーチとして数多くの選手を育て上げ、今季臨時打撃コーチを務めた内田順三コーチの助言を積極的に取り入れた。
バットも春季キャンプでは池田来翔モデルのバットで打っていたが、「内田さんとずっと練習していて、軽いバット(池田来翔モデル)を使っていたんですけど、どうしても軽いから体を振って振ろうとしてしまう。だから重くて太いバットを使って、そうしたら体を振ったら振れない。しっかり最短距離で出せるようにという意味でこのバットを使うようにしました」と大石大二郎さんモデルのバットに変更。
5月2日に一軍昇格を果たすと、同日の楽天戦に『9番・左翼』で先発出場し、翌3日の楽天戦も『9番・左翼』で出場し今季初安打。4日の楽天戦では、0-0の3回無死走者なしの第1打席、2ボール1ストライクから松井友飛のストレートをセンター前に弾き返し出塁。一死後、2番・友杉篤輝の1ストライクからの2球目にスタートを切り、今季初盗塁を決めた。和田は四球で出塁した5回にも、この日2つ目となる二塁盗塁を決め、武器である“足”でアピールした。
セーフティバント
5月14日の日本ハム戦では、0-2の3回一死走者なしの第1打席、メネズが1ボール1ストライクから投じた3球目の外角ストレートを一塁方向へセーフティーバント。日本ハムの一塁手・マルティネスが素早く捕球し、一塁ベースカバーに入ったセカンド・福田光輝に送球したが、和田の足の方が速く一塁への内野安打。一軍の公式戦では初めてセーフティーバント安打を決めた。
「急がないことですかね。はやくセーフになりたくて、走りながらバントをやってしまうというのがあるので、急がず転がしてから走ること」を意識。「構えてから十分セーフになると言ってくれて、少しずつ感覚は掴めるようになってきました」と本人も手応えを掴みつつあった中で、一軍の公式戦の舞台で初めてセーフティーバントを成功させた。
育成選手時代の19年の10月に「堀さんには、足も武器だと言われているので、セーフティーバントの構えだけでもやってみろと言われています」と、堀幸一二軍打撃コーチの助言をきっかけに、セーフティーバントの練習を本格的に取り組み始めた。
試合前練習でセーフティの練習をすることはあったが、昨季までは試合でセーフティバントを試みる機会が少なかった。
「ずっと練習していましたけど、試合でどんどんやっていけと言われたら、今年特に言われていますね」。
「コーチからもセーフティバントを増やしていこうと言われていますし、一番は塁に出ないといけない。塁に出る手段としてですね」。
今季は一軍でセーフティバントを5回決めた。
プロ初本塁打
7月29日のソフトバンク戦では、「とにかく塁に出ようと思ってバットを振りました」と、先発・大関友久が1ストライクから投じた2球目の144キロストレートを振り抜き、ライトホームランテラスに飛び込む嬉しいプロ初本塁打を放った。ちなみに、7月下旬から軽いバットに戻した。
途中出場した8月20日の楽天戦、3-3の9回に守護神・松井裕樹が2ボール1ストライクから投じた3球目の148キロストレートを振り抜き右中間に二塁打。このチャンスメイクをきっかけに、荻野貴司の決勝打に繋げた。
特にこの二塁打は和田が今年よく口にしていた「コンパクトなスイング」ができ、取り組んできた成果を発揮できた打席にも見えた。「今までの僕だったら、甘い球が来たと思って力んでブンブン振っていたと思うんですけど、今年の練習を活かすことができたのかなと思います」と振り返る。
ライト前の安打を武器である足を活かして二塁打にしたように見えたが、「打った瞬間、右中間だったので二塁打というより三塁へいく気持ちで走っていました」と、三塁を狙っていたそうだ。
勝負の9月は代走メイン
勝負の9月に入ってからは代走での出場がメインになった。9月18日の西武戦では、0-1の9回、先頭のポランコがクリスキーからライト前に安打を放つと、和田はポランコの代走で出場。続く角中勝也の1ボールからの2球目に二塁盗塁を決めた。
今季は20盗塁中19盗塁が5球目以内での盗塁だったが、「今年は何球以内というのはあんまり考えていないです」とのこと。盗塁成功率の高さについても「今年は去年ほど思いつめずに気楽に。去年は代走で出て行って、いかなくちゃいけないという感じだったので、今年はそういうのをなくして、別にいかなくてもいいやという感じで走っています」と明かす。そういった考えに至った理由について「大塚さんからも今年は積極的じゃなくて、行ける時に行こうという感じと話していたので、そういうところかなと思います」と教えてくれた。
その和田が二塁へ進むと、角中が空振り三振、山口航輝が左飛で2アウトとなったが、安田尚憲が、クリスキーのストレートをライト前に弾き返す。浅い打球だったが、二塁走者の和田はスピードを緩めることなく三塁ベースを蹴り、ヘッドスライディングで生還した。和田は「まずはチームのために1点を取るというのが第一なので、しっかり1点を取れるような走塁をやっていきたい」と9月14日の取材で話していたが、まさに有言実行の走塁で同点に追いついた。
シーズン最終盤、バットでも存在感
「変わらずにバッティング練習をしっかり。なかなか打席に立てないと、バッティング練習でホームランを狙ったり、大振りになっちゃうんですけど、そこはいつスタメンで行ってもいいようにしっかりバッティング練習でもライナーを打つようにしています」。
代走での出場が多く、打席数が少なくなったが、準備はしていた。その準備を発揮したのが、9月最初のスタメンとなった24日のソフトバンク戦だ。ZOZOマリンスタジアムで初本塁打を放つなど、プロ入り後初となる1試合4安打。25日のソフトバンク戦でも和田毅の外角のスライダーに体勢を崩しながらもライト前に運べば、27日の日本ハム戦では2点適時打を含む2安打。そして10月1日の西武戦では、0-0の3回二死走者なしの第1打席、隅田知一郎が投じた初球のストレートをマリーンズファンの待つライトラグーン席へ先制の第3号ソロ、1-1の5回二死一塁の第2打席はセカンドへの内野安打、1-2の7回二死一塁の第3打席は隅田のチェンジアップに泳ぎながらもうまく合わせてライト前に運び、猛打賞を達成した。
「4安打打った時の最初のライト線とかこの間の日ハム戦の一塁線もそうですけど、大きい打球を打たなくても、低くて速い打球、間を抜けて二塁打、三塁打になるので、そういう打球を打てるように意識しています」。
昨季までの3年間、126打席立って本塁打は1本もなかったが、今季は113打席でプロ初本塁打を含む3本のアーチを描いた。コンパクトなスイングでも、しっかりと飛距離が出ている。
「全然(ホームランを)狙っていないんですけど、狙っていなくてもコンパクトなスイングをすれば当たれば飛んでいくので、そういうのを今はいい感じなのかなと思います」。
与えられた機会で、シーズン終盤バットで結果を残したのは非常に良かった。レギュラーを奪うためにも、継続性が大事になってくる。
「バッティングはまだまだなので、しっかり来年は最初からスタメンで出られるようなバッティングをしていきたいと思います」。
取材・文=岩下雄太