早いカウントからの積極的な攻め
ロッテの攻撃といえば、井口資仁前監督時代は投手陣に球数を投げさせ四球を選び、犠打、“1つ先の塁を狙った”走塁で得点を奪うことが多かった。リーグ2位となった20年はリーグ最多の491四球、96犠打を記録し、21年はリーグ最多の107盗塁、22年もリーグ最多の132盗塁をマークしていた。
昨季のチーム盗塁成功率はリーグトップの.777だったが、チーム盗塁数はリーグ4位タイの73盗塁。四球数もリーグ3位の453個。相手投手に投げさせた球数も21年は143試合で21503球投げさせたが、昨季は143試合で20728球と減少している。
今季もここまでリーグ4位の139四球、盗塁数はリーグワーストの18盗塁だ。
吉井理人監督が就任してからは早いカウントから積極的に攻め、盗塁で1つ先の塁に進むのではなく、犠打で走者を送って得点する攻撃が多いように見える。
ロッテの金子誠一軍戦略コーチに、早いカウントから積極的に攻撃していることについて訊くと「内緒です」としながらも、「そもそも早いカウントで打つというのは、バッターの鉄則じゃないですか。あとは数年長打力がない。長打力は結局、しっかり早いカウントからスイングできているのかというのが傾向としてあるから、そこは意識してやりましょうと。爆発的に上がるわけではないけど、投高打低の時代だし、癖をつけていかないといけない」と説明した。
早いカウントで積極的に攻めていきながらも、11連勝中は相手投手に球数を投げさせる試合も多かった。
「球数云々は最初からそういう狙いはないですね。しっかり追い込まれてからきちっとバッティングを変えましょうというところ。それをできる人もいれば、できない人もいるから、できる人がやろうとしてトライしている。結果的に」。
球数を投げさせられる選手で言えば、小川龍成、中村奨吾などが挙げられる。小川は5月31日の阪神戦で6打席で34球を投げさせれば、同日の試合で中村奨吾も5打席で31球を投げさせている。
「そうそう、そういう印象が残っているだけで、それがいい感じでジャブとして効けばいいけど、それはあると思いますね」。
早いカウントで積極的に打ちにいきながら、結果的に球数を投げさせた試合がある。それは5月21日の西武戦の初回、今井達也に33球を投げさせ、打者一巡の猛攻で5点を奪った試合だ。
初回一死走者なしから友杉篤輝が1ボールから2球目の151キロストレートをセンター前に放つと、続く髙部瑛斗が1ボールから2球目の139キロスライダーを右安で一、二塁。先制の好機に4番・ソトが1ストライクから2球目の155キロストレートをセンター前に適時打を放ち幸先よく先制。
ポランコが四球を選び満塁とすると、中村が1ボール1ストライクから3球目の140キロスライダーがレフトへ2点適時二塁打、さらに佐藤都志也が2ストライクから3球目の138キロフォークをセンター前に適時打。勢いの止まらないマリーンズ打線は、安田尚憲が1ボール1ストライクから3球目の139キロスライダーをライトへ適時二塁打が飛び出し、四球を挟んで6連打、6安打全て3球目以内に放ったものと早いカウントからの積極的な仕掛けで5点を奪った。
「あの時の今井は立ち上がりしっかり捉えないといけないんだったら、仕掛けていかないといけないでしょう。球数は待ってたら増えない。振っていきながらというのが一番理想なので、それがあの初回だけはハマった。そのあとは相手が対策を立ててくる。変化球から入ったりとか、そこのシフトチェンジは試合の中で選手が感じてやっていくことなので」。
「球数を増やそうと思っても増えないもんで、ファイターズの加藤もそうでしょう。どんどんいけばいくほど前に飛んじゃったりもするし、無駄だと思っても前に飛んじゃったりというタイプもいる」。
5月のバント成功率は100%…盗塁数減少
ロッテのバント成功率が非常に高い。今季ここまで44度の犠打機会で失敗はわずかに4つ。4月28日の楽天戦の3回無死一塁で友杉が投犠打を決めてから、現在30度の犠打機会全て成功している。特に5月は25度の犠打機会全て成功させた。(※初球、2ストライクで犠打失敗は含まず。打席結果のみ)
金子コーチは「バントは去年も異常な成功率(の高さ)だったわけじゃないですか。結局、できない人にやらせていないだけで、できる人にやってもらっているから確率は上がりますよね。できない人にトライさせて失敗してというのは、ここでやるべきところにできる人にやってもらっているだけという話かな」と明かした。
盗塁数が少ないのも「バントと一緒で、ラインナップに(盗塁できる選手が)少ない。ギャンブルみたいに盗塁してアウトになって流れを変えちゃうよりは…。みんなで頑張ろうということで。髙部が入ってきて少し相手のプレッシャーが少し増えてきて、できる人がやれることをやっている」と、犠打と同じように盗塁成功率の高い選手が盗塁しているからだ。ちなみに6月3日時点でロッテの盗塁成功率は楽天と並びリーグトップタイの.818。
無死二塁での打撃
ノーアウト二塁で、荻野貴司、角中勝也、中村、田村龍弘など進塁打を打てる選手が多い。4月13日の楽天戦では、中村が5-1の3回無死二塁の第2打席、藤井が1ボール2ストライクから投じた4球目の142キロストレートで二塁ゴロで、二塁走者・山口を三塁へ進め、小川のレフトへの適時打に繋げた。
「そこは選手の成熟じゃないかな。ノーアウトでも相手の攻め方によってヒットを打ってと思うこともある。バッターが率先して当てに行くセカンドゴロじゃなくて、しっかりスイングしている中で反対方向をより意識してもらっているのが、結果的にセカンドゴロになったり」。
「今年は結構そういうのがヒットになっているのがあるよね。春先の池田だったり、友杉だったり、そこは状況に応じて。やろうとしていることがいい方に、やろうとしても相手が防ごうと思ったら防げる方法はいくらでもある」。
「そうなったときは引っかかってショートゴロになっちゃったりというのが多々ある。でもそこでやろうとする意識。それもできる人がやっている。そこの使い分けがこっちの仕事、好きにやってということで、バッターが反対方向が結果的にヒットというのはあるのかな」。
ロッテの犠打の成功率の高さ、盗塁数の少なさ、さらに進塁打も“確率”の高い選択をした結果で、早いカウントから積極的に仕掛けるのもチームとしての明確な狙いがある。チームとしての成熟度がさらに上がった時に、今以上に相手が嫌がる攻撃になっていくはずだ。
取材・文=岩下雄太