アストロズ時代の菊池雄星(写真=GettyImages)

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▼ 第1回・菊池雄星

 今年6月に33歳の誕生日を迎えた菊池雄星。ブルージェイズの一員として迎えたメジャー6年目は、7月下旬まで22試合に先発し、4勝9敗、防御率4.75と不本意なシーズンを送っていた。

 ところがトレード期限間近の7月29日(現地時間、以下同)に若手3選手との交換でアストロズへ移籍。菊池にとってこれが大きな転機となった。

 新天地での初登板は、6回途中まで投げて2点を許したが、11奪三振の力投。白星こそ逃したもの、地区優勝を争うチームを勝利に導き、アストロズファンから拍手喝采を浴びた。

 そして移籍後2度目の登板となったレンジャーズ戦で勝利投手になると、その後は終始安定した投球を披露。結局、アストロズでは10試合に先発し、5勝1敗、防御率2.70と別人のような成績を残した。

 レギュラーシーズンの最終登板となった9月25日に移籍後の初黒星を喫したが、それまでの9試合は全てチームが勝利。“菊池が投げれば勝つ”という不敗神話も誕生し、優勝を争っていた古巣マリナーズを振り切る大きな要因ともいわれた。

 ではなぜ菊池はアストロズに移って大変身を遂げられたのか。

 一部では、チェンジアップの投球割合を増やしたことが成績アップにつながったとも囁かれていた。移籍直後はその傾向も見られたが、実際は菊池のスライダーに秘密が隠されていたようだ。

 まず全投球に占めるチェンジアップの割合を7月の移籍前後で比較すると、14.4%から11.6%へ減少しており、被打率は.193→.200とほぼ変わっていない。

 一方で、スライダーの投球割合は、22.2%から37.1%へ激増。被打率は.248から.172へと大きく改善していた。決め球としてだけでなく、カウントを整える役割も担っていたのがこのスライダーだ。

 また、フォーシームの伸びと切れも申し分なかった。平均球速はメジャー移籍後の自己ベストを更新する95.5マイル(153.7キロ)をマーク。10.55という自身2番目に高い奪三振率につながった。

 今季の菊池は移籍をきっかけに活躍する典型的な例となったが、残念ながらポストシーズンでは登板機会がなかった。タイガースとのワイルドカードシリーズで最終第3戦に先発を託されるはずだったが、チームはあえなく2連敗で終戦。チーム事情があったにせよ、地元アストロズファンを失望させる結末だった。

 FAとなり迎えたオフシーズンは、アストロズ残留も視野に入っていたようだが、地区ライバルのエンゼルスと3年総額6300万ドル(約95億円)でスピード契約。常勝アストロズから9年連続負け越し中と低迷するエンゼルスへの移籍は、果たして吉と出るか凶と出るか。

 来季は赤いユニホームを身に纏い、躍動する菊池の姿をみたいところだ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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