野茂英雄氏、イチロー氏(写真=GettyImages)

 先日発表された米国野球殿堂入り。イチロー氏は惜しくも満票選出に1票届かなかったが、得票率99.7%で、日本人選手として初となる殿堂入りを果たした。

 イチロー氏が新庄剛志現日本ハム監督とともに日本人野手として初めてメジャーリーグに挑戦したのは2001年。オリックス時代に7年連続で首位打者に輝く活躍を見せていたとはいえ、筋肉ムキムキのメジャーリーガーに交じって、小柄なイチロー氏が通用するかどうかには懐疑的な見方も少なくなかった。

 しかし、いきなり1年目に242安打を放ち首位打者に輝くと、MVPと新人王も手中に収めた。その後の活躍はもはや説明するまでもないだろう。

 そんなイチローもある人物の存在がなければメジャー挑戦が数年遅れたか、そもそもなかった可能性すらある。その人物とは、1995年にメジャー挑戦を果たした野茂英雄氏である。

 近鉄のエースとして球界を代表する投手に君臨していた野茂氏は、前年オフに所属する近鉄と揉めに揉め、前代未聞の任意引退を表明。当時のメジャーリーグはストライキ中だったが、2月にドジャースとマイナー契約を結んだのだ。

 野茂氏よりも以前にメジャーを経験した日本人は村上雅則氏(1964~65年=ジャイアンツ)のみ。30年ぶりとなる日本人の挑戦が成功するかどうかは全くの未知数だったが、開幕から三振の山を築き、人気凋落が叫ばれたメジャーでトルネード旋風を巻き起こし、全米を席巻した。1年目に残したインパクトは、2001年のイチロー以上だったといえるだろう。

 しかし、野茂氏は日米通算201勝を挙げたが、有資格1年目の得票率がわずか1.1%に留まり、米国野球殿堂入りの夢は叶わなかった。

 90年代以降にパ・リーグとメジャーリーグを沸かせた野茂氏とイチロー氏。チームメートとして一緒にプレーすることはなかったが、対峙する機会は何度もあった。

 NPB時代は13打数4安打(打率.308)の成績が残っているが、イチロー氏のプロ入り第1号本塁打が実は野茂氏から放ったものである。

 イチローが海を渡った01年以降はメジャーでも対戦し、12打数4安打(打率.333)。日米通算は、25打数8安打(打率.320)なので、2人の直接対決はイチロー氏に軍配を上げてもいいだろう。

 もし2人のうちどちらかのメジャー挑戦が失敗に終わっていれば、今ほど日本人メジャーリーガーも誕生することはなかっただろう。同じ時期にトルネード投法と振り子打法という個性を持つ2人が登場したのは奇跡だったのかもしれない。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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