ドジャースの新たなスター候補がオープン戦初登板で見事な投球を披露した。
4日(日本時間5日)に行われたレッズとの一戦。ドジャースは山本由伸に次ぐ2番手として、ルーキー佐々木朗希をマウンドに送った。
佐々木は5回から7回まで3イニング、46球を投げて、2安打、5三振。5回と6回に走者を得点圏に背負ったものの、後続を難なく打ち取り、無失点スタートを切った。
現地では佐々木の投球、中でも鋭く落ちるスプリットを称賛する声が目立った。
「世界最高の投手という言葉しか出てこない」
「佐々木がなぜこんなに注目を集めるのか疑っていなかったが、ここまですごいとは予想していなかった」
「佐々木のスプリットは突出している。まるでカーブのような落差だった」
実際に佐々木がこの日投じた18球のスプリットは落差が大きく、打者がスイングした8球のうち7球は空振り。もう1球もセンターへの平凡なフライだった。
MLB公式が運営するデータサイト『Baseball Savant』によると、佐々木が投じたスプリットのスピンレートは異常ともいえる値だったようだ。
スピンレートとは、投球されたボールが1分間で何回転するのかを表したもので、この日の佐々木のスプリットは平均で518をマーク。これは昨季スプリットを投じたメジャーの111投手と比べても最も低い数値である。
一般的に、スプリットのスピンレートは低いほど落差が大きいため、打者はコンタクトが難しくなる。この日の佐々木が記録した空振り率87.5%は、まさにその裏付けともいえるだろう。
心配されていたフォーシームの球速もこの日は改善していた。佐々木がこの日投じたフォーシームは28球。100マイル(約161キロ)には達しなかったが、最速の99.3マイル(159.8キロ)を含めて99マイル台が4球あり、平均も98.0マイル(約157.7キロ)と上々の数字。初登板で出力もやや抑え気味だった可能性が高く、開幕に向けてフォーシームの球速は徐々に上がっていくはずだ。
結果、内容ともにウワサに違わぬ投球を披露したといえるだろう。その一方で、幾つかの課題も見て取れた。
1つ目は、佐々木の制球力だ。マウンドに上がった5回の3人目の打者に死球を与え、続く6回は四球と暴投も記録。投げた瞬間にボールと分かる球も何球かあった。
ただ、佐々木はまだ渡米1年目でメジャー公式球やマウンドの硬さや傾斜に慣れていない。これに関してはNPBから移籍した日本人投手全員が通る道でもあり、経験を積むことで徐々に改善されていくだろう。
そして2つ目の課題が佐々木の球質だ。昨季はロッテで111イニングを投げ、被本塁打は2本だけだった。この日も長打は二塁打1本のみだったが、記録には残らない本塁打性のファウルが2本あり、オースティン・ウインズに許した初安打も痛烈な打球だった。
決して佐々木の球質自体が軽いというわけではないが、「投高打低」のNPBから強打者が集まるメジャーリーグに移ったとなれば、一発を浴びるシーンが大幅に増えてもおかしくないだろう。
そうはいっても佐々木は心身ともに未完成の23歳。オープン戦初登板で才能の片鱗を見せつけたのは間違いないが、その伸びシロは無限大だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)