トレイス・トンプソン(写真=GettyImages)

 レッドソックスの吉田正尚が打撃好調だ。5日(日本時間6日)のレイズ戦に3番指名打者(DH)で先発出場すると、3打数2安打1打点をマーク。これまでオープン戦3試合に出場し、打率.444(9打数4安打)と首脳陣に猛アピールを続けている。

 吉田はオフに右肩を手術しており、当面はDHでの起用が予想されるが、いずれ外野の守備に就く機会も回ってくるだろう。ただし、レッドソックスの外野手で好調なのは吉田だけではない。

 2月にレッドソックスとマイナー契約を結び、招待選手として参加しているトレイス・トンプソンも打撃好調の一人だ。

 トンプソンは日本では無名の選手だが、父マイカル・トンプソンは1978年のNBAドラフトで全体1位指名を受け、1980年代後半にマジック・ジョンソンらとともにレイカーズの黄金時代を築いた名選手だった。

 トレイスは3人兄弟の三男だが、実は兄2人もNBAでプレー経験がある。特に次兄のクレイ・トンプソンはステフィン・カリーと共に「スプラッシュ・ブラザーズ」として名を馳せたスーパースターだ。

 野球の道に進んだのは三男のトレイスだけだが、いまだメジャーリーガーとしてその地位を確立するには至っていない。

 今月15日に34歳の誕生日を迎えるトレイス。年齢的にはベテランの域に入っているが、2009年のドラフトでホワイトソックスに2巡目で指名されたように、ポテンシャルは高い選手である。

 メジャーデビューを果たしたのは、2015年で24歳の時。高卒選手としては決して遅いデビューというわけではなかったが、その後、ジャーニーマンとしてメジャーとマイナーを行ったり来たりする野球人生を歩んできた。

 15年のホワイトソックスを起点にレッドソックスがなんとのべ14球団の所属。その間には、DFA(事実上の戦力外)を含めると、6回もの戦力外を通告されてきた。

 メジャーでは16年と22年の80試合がシーズンの自己最多だ。パワフルな打撃が持ち味で、これまでメジャー369試合で45本塁打、マイナーでも1210試合で200本塁打を放っている。ただ、三振が多く確実性の低さがメジャー定着を阻んできた。

 昨季はメッツ傘下の3Aと、カブス傘下の3Aで合計23本塁打を放ったが、メジャー昇格には至らなかった。しかし、この春はオープン戦で打率.300(20打数6安打)、3本塁打、6打点と絶好調。OPS1.241は規定打席に達している選手の中では同僚のアレックス・ブレグマンに次いでメジャー2位である。トンプソンの打撃好調が続けば、吉田の出場機会を奪う可能性も考えられる。

 ただ、トンプソンがどれだけ打ってもまもなく34歳という年齢を加味すると厳しい立場に置かれていることに変わりはない。そんなハンデを乗り越え、険しい開幕メジャーの座をつかめるか。バスケファミリー末弟の今後に要注目だ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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