ロッテの若手野手で今一番、ファンをワクワクさせ、打席内での期待度が高いのはドラフト1位・西川史礁(青山学院大)だろう。
西川は昨年3月に行われた『カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024日本vs欧州代表』に大学生ながら、日本代表に選出され、同年3月6日の欧州代表戦でトップデビュー。同試合で、西川は5回一死走者なしから四球を選んだ塩見泰隆(ヤクルト)の代走で出場。続く小園海斗(広島)のセンター前安打で二塁へ進むと、近藤健介(ソフトバンク)のライトへのあたりで生還。さらに、4-0の6回二死一、二塁のこの日の第1打席、ファンガープの初球を捉え、三塁線を破る適時二塁打を放つなど存在感を見せた。
「本当に日本を代表する選手の中で入れて、1人1人の野球に対する考え方であったり、しっかりと聞いて学んだことは大学生活で結びつけてきた。たとえば、近藤選手であればウエイト、試合で疲れても毎日やったりとか、2ストライクから追い込まれてからどういうイメージで打っているとかというのは聞きました」
4年春のリーグ戦では打率.318、1本塁打、7打点で2度目の最高殊勲選手賞、ベストナインに選出されるなど、この4年間でドラフトの目玉選手に成長し、ロッテ、オリックスの2球団から1位指名を受け、ロッテが交渉権を獲得した。
「バッティングが1番の持ち味で、その中で長打も打てますし、単打も2ストライクに追い込まれてからも器用に打つことができるバッティングが1番の持ち味だと思っています」
その持ち味のバッティングで、2月16日から始まった対外試合で存在感を放ち続けた。対外試合初戦となった2月16日の楽天モンキーズとの練習試合、『3番・左翼』でスタメン出場すると、3-3の6回二死一、二塁の第3打席、「毎打席考えることは一緒で、どうしてもランナーを返したいという強い気持ちがあったので、そこで1本出たのはこの先自信になりますね」と、1ボール1ストライクから投じた3球目をレフトに一時勝ち越しとなる適時打を放った。
2月19日の広島との練習試合ではNPBの対外試合で初安打を含む3安打。2月28日の韓国ロッテとの練習試合では、0-0の初回無死走者なしの第1打席、パク・セオンが2ボールから投じた3球目の高めのストレートを左中間スタンドに先頭打者本塁打。これが対外試合初本塁打となった。
3月に入ってからも、ZOZOマリンスタジアムでの初のオープン戦となった3月6日の広島戦、0-0の初回二死走者なしの第1打席、床田寛樹が投じた外角の初球ツーシームをライト線に、マリン初試合・初打席・初安打となる二塁打を放つと、2-0の3回無死一、三塁の第2打席、松本竜也が2ストライクから投じた3球目のチェンジアップをレフトへ、オープン戦初打点となる犠飛を放った。
開幕に向けて一軍の主力投手の状態を上げてくるオープン戦の最後の1週間も、打率.471(17打数8安打)。オープン戦最終戦となった23日の巨人戦では、0-0の初回無死一塁の第1打席、石川達也が1ボール1ストライクから投じたインコースの146キロストレートを詰まりながらもライト前に運びチャンスを広げると、1-1の5回一死走者なしの第3打席は石川が1ストライクから投じた2球目のチェンジアップをレフト前に弾き返した。
勢いの止まらない西川は、2-1の7回の第4打席、泉圭輔が3ボール2ストライクから投じた6球目の140キロツーシームをライト前に運び、オープン戦では初の猛打賞を達成した。オープン戦は14試合に出場して、打率.410(39打数16安打)、6打点。2月16日からの対外試合の成績は16試合に出場して、打率.403(62打数25安打)、1本塁打、9打点だった。
対外試合で2試合連続無安打が1度もなく、初球から積極的に打ちにいっていることもあり、四球は3つと少なかったが、三振も5つとコンタクト率の高さも光った。
栗原健太打撃コーチは西川の良さについて「いろんなポイントで打てるところですよね」と話し、「ポイントの幅が長いので、詰まっても打てるし、変化球が来ても泳いでも打てる。そこは彼の良いところ」と説明した。
マリーンズファンが心配するのは、開幕してからもこのまま打ち続けることができるかどうかーー。
栗原コーチは「あれだけ初球から自分のスイングができる子で、タイミングを取るのが上手。クイックされても対応できるし、開幕したら結果がどうしても気になるところですけど、自分のスイングをしてくれたら自ずと結果は出てくると思う」と期待を寄せ、「僕らも本当にしっかりとサポートしていきたいと思います」と誓った。
西川史礁が背負う“6”は、落合博満氏、初芝清氏、井口資仁氏とマリーンズの右の強打者が背負ってきた番号。石垣島春季キャンプ中には「もっと映えれるように結果を残して頑張りたいと思います」と意気込んでいた。“6番背負った男の心意気”を開幕から魅せまくって欲しい。
取材・文=岩下雄太