浦和実業ナイン (C)Kyodo News

 18日に開幕したセンバツも残すところあと3試合。28日に準決勝2試合が、そして30日にはフィナーレの決勝戦が行われる。

 準決勝第1試合は連覇を目指す健大高崎と横浜による関東対決。両者は昨秋の関東大会決勝でも顔を合わせたが、そのときは横浜が延長タイブレークの末、サヨナラ勝ちを収めている。

 第2試合は浦和実と智弁和歌山が激突する。春夏通じて初出場ながら快進撃を続ける浦和実が、4回の全国制覇を誇る西の横綱の胸を借りる。

 浦和実はここまで18回を無失点に抑えている左腕・石戸颯汰の投球が目立つが、打っても3試合で23得点とバットがよく振れている。聖光学院戦の延長10回に一挙8得点を挙げた打線は智弁和歌山の投手陣にも脅威となるだろう。

 一方の智弁和歌山も打線が好調で、3試合合計22得点を挙げている。投手陣も1回戦の千葉黎明と準々決勝の広島商を完封。こちらもエース渡辺颯人が3試合で防御率0.43と好投を続けている。

 両チームにとって気になるのは投手陣の疲労だろう。27日に休養日があったとはいえ、やはり継投のタイミングが試合の行方を大きく左右しそうだ。特に浦和実は石戸を先発させるのか、ブルペンに待機させるのか、仮に後者ならどのタイミングでマウンドに上げるのかがポイントになる。

 石戸のストレートは最速が130キロ台ながら、変則フォームに惑わされた相手打者はことごとく振り遅れている。たとえバットに当てることができても、どん詰まりのフライになることが多い。

 毎日新聞×MBS(毎日放送)が提供する『センバツLIVE!』の記事のよると、石戸の投げるチェンジアップはチーム内で“魔球”と呼ばれているそうだ。「揺れて見える時がある」というこの魔球が智弁和歌山の強打線を封じ込めることができれば、浦和実にも勝つチャンスが生まれるだろう。

 ただし、その魔球が対峙しなければならないのが智弁和歌山の“魔曲”である。そう、試合の重要局面でアルプス席から鳴り響く「ジョックロック」のことだ。

 今や春夏甲子園の風物詩となった「ジョックロック」は、今大会も智弁和歌山の3試合すべてで流されている。1~2回戦はその後押しを受けて、智弁和歌山が得点を重ね、相手を突き放した。準々決勝の広島商戦こそ不発に終わったが、甲子園でこれまで何度も相手チームを魔法にかけてきた。浦和実が勝利をつかみ取るには、この魔曲を乗り越えなければならない。

 決勝戦は、浦和実が勝てば関東対決に、智弁和歌山が勝てば東西対決となることが決まっている。魔物がすむといわれる甲子園で勝ち名乗りを上げるのは石戸の魔球か、それとも智弁和歌山の魔曲か―――。注目の一戦は28日の第2試合に組まれている。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

もっと読む