巨人・戸郷翔征 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第15回

 阿部巨人がもたついている。

 11日からの広島との3連戦に3連敗。開幕直後は5勝1敗と順調に滑り出したかに見えたが、その後は黒星が積み重なり、ついに借金生活に突入。気がつけば5位に沈んでいる。(14日現在、以下同じ)

 転落の象徴はエース、戸郷翔征の変調だ。

 3月28日の対ヤクルト戦で開幕投手を務めるが5回4質点。続く4月4日の阪神戦では3回3失点と調子か上がらない。さらに直近の広島戦では4回途中で10安打を浴び、10失点の衝撃KOで、翌日から自身4年ぶりの二軍調整が決定した。

 3試合に先発して0勝2敗。防御率11.12は、およそエースの数字ではない。昨季は5月の阪神戦でのヒットノーランを達成。シーズンを通しても12勝を上げて奪三振王のタイトルを獲得、リーグ制覇の立役者となっている。今や球界を代表する25歳の右腕に今年は何が起こっているのだろうか。

 「たぶん、クセがわかっているから。あれではバッティングピッチャーみたい。相手の研究も大事だけれど、自分の研究もして欲しい」と阿部慎之助監督は昨年との違いを指摘する。

 確かに広島戦でも、ストレートで討ち取れないだけでなく、三振を多く奪ってきたフォークボールも、打者はやすやすと見極めてボールゾーンは振って来ない。やはり、指揮官の言う通りに投球の際の新たな癖が見破られているのか。

 一方で、12日付のスポーツニッポン紙上では、野球評論家の野村謙二郎氏が別の見方を伝えている。

「あれだけの連打を許すのは本来のボールを投げられていない証拠。体のパワーで何とかしようとして、上半身と下半身のバランスにズレが生じているのかなと感じる」

「開幕投手を務めながら、勝てていない重圧が必要以上の力みにつながっているのかも」

 戸郷と言う投手は、佐々木朗希(ドジャース)のような160キロ近い快速球と“伝家の宝刀”フォークで三振の山を築くタイプではない。

 150キロ近くのストレートに、カーブ、スライダー、チェンジアップにフォークと多彩な変化球を駆使して、コントロールと投球のコンビネーションで討ち取っていくのが強みだ。

 そんな戸郷にとって、今年はいくつかの変化を求められるシーズンでもある。

 昨年までの投手陣の大黒柱と言えば菅野智之だったが、メジャーへの移籍によって二番手エースから真のエースに立場が変わった。

 元々、研究熱心な男は次なる高みを目指してこのオフに、新球のマスターに取り組んでいる。

 広島の大瀬良大地投手のカットボールに興味を持ち、元広島に在籍したことがある丸佳浩選手の仲介で投法を伝授される。キャンプ、オープン戦でもこの新しい武器に手応えを感じていたが、ここで次なる問題が発生したと言う。

 ストレートに近い握りで投げるカットボールを投げ続けていくうちに、ストレートの握りまでおかしくなって、従来のスピンが効かなくなっていると言う指摘がある。このわずかな変化が、昨年までの戸郷の球威を奪い、新たな癖を生んでいるとしたら、前向きなモデルチェンジが空回りをしているのかも知れない。

 さらに、毎シーズンをフルに投げ抜き、昨年オフには侍ジャパンの一員として「プレミア12」に出場。今春はドジャースやカブスの日本開幕にともない巨人も特別なオープン戦が組まれ、例年以上に速い調整を求められている。こうした“勤続疲労”も考えられる。

 チームは開幕から、丸の負傷離脱で一、二番の打順構成に苦慮、坂本勇人選手の調子が上がらず三塁が固定出来ない。加えて新外国人、トレイ・キャベッジ選手がここへ来て左手親指の負傷で打線から外れるなど不安材料は増すばかりだ。

「これだけチームに迷惑をかけた。やっぱり柱になる投手がこういう投球だといい影響は流れない。また見つめ直して、強くなって帰ってきたい」と戸郷は言う。

 エース格になってから初めて味わう挫折と試練。心身ともミニキャンプで鍛え直して、いつ、どんな形で復活を果たすのか。

 最後にG党に希望のデータを提示しよう。昨年の戸郷の初勝利は3月29日の開幕戦だったが、2勝目は5月3日の阪神戦までかかっている。まだ、致命傷の二軍落ちではない。挽回の時間は残されている。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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