現在最下位に沈むロッテは、苦しいチーム状況ではあるが、若い選手たちの躍動が希望の光になっている。その一人が高卒5年目の中森俊介だ。
今季は“規定投球回到達”を目標に掲げ、オフから土台作り、強いストレートを求め、トレーニングを積んできた。開幕一軍を掴んだが、先発ではなく、先発が降板した後の第2先発のようなロングリリーフ要員。徐々に序列を上げていき、5月13日の楽天戦で3-3の同点の8回に登板すると、5月31日の日本ハム戦では3-1の8回と“勝ち試合の8回”を任された。
6月12日の広島戦では、5-4の9回に登板し1回・9球を投げ、0被安打、1奪三振、無失点に抑えプロ初セーブをマーク。この試合から勝ち試合の9回を任され、「すごいやりがいのあるポジションではあるので、意気に感じて投げています」と、現在4試合連続セーブ中だ。ここまで23試合・27回1/3を投げ、2勝2敗8ホールド5セーブ、34奪三振、防御率1.32と抜群の安定感を誇る。
特に6月は月間8試合・8イニングを投げ、イニングを上回る12奪三振、1勝3ホールド4セーブ、防御率0.00だった。
中森本人が「良かったと思います」と振り返った6月11日の広島戦の投球は素晴らしかった。先頭の秋山翔吾に初球の外角153キロストレートで見逃し、2球目の外角153キロストレートで見逃し、2球で追い込み、最後は138キロのフォークで3球三振。続く小園海斗に1ストライクから投じた2球目のインコース140キロフォークの空振りもストライクゾーンからボールゾーンに良い落ち。この日はストレートが力強く全て150キロ超え、当時の自己最速となる154キロを2球計測した。
6月は15日のヤクルト戦、4-4の9回一死走者なしで並木秀尊を見逃し三振に仕留めた外角154キロストレート、6月17日の阪神戦、3-1の9回二死走者なしで大山に1ストライクから投じた2球目の外角150キロ見逃しストレートと、“右打者のアウトコースのストレート”が非常に良かった。
中森は「(並木を抑えたストレート)あの日は状態自体は良くなかったんですけど、引っ掛け気味でしたし、サンタナに打たれたスライダーは2球とも浮いていたので、状態自体はいいとは言えないですけど、結果的に抑えられたと思います」と反省した。
ストレートで追い込み、フォークで空振り三振を奪う場面が多く、6月は12個の三振を奪ったが、そのうちフォークでの三振は7個。
「フォークは空振りが取れてきているので、そこを決め球に使いたいというので逆算して2ストライク、早めに追い込むことと、追い込むまでの配球ですよね。そこを意識してやっています」。
気になったのは、6月22日のDeNA戦、10-9の9回に先頭の牧秀悟を1ボール2ストライクから空振り三振を奪ったフォークはストライクゾーンからストライクゾーンのフォークだったこと。
「あれはフォークなんですけど、フォースラ気味。いつも通りベース盤に落としたかったんですけど、コントロールミスであっちに行っちゃったんですけど、結果空振りで良かったかなと思います。手応えはなかったです」。
1イニングで投げるようになってから投球スタイルもストレート、フォーク、時々スライダーとほぼストレートとフォークが中心。先発の時に投げていたカーブ、チェンジアップといった球種はほとんど投げていないように見える。
「カーブ、スライダーも投げたりしていますけど、あくまで真っ直ぐがいちばんの軸として考えていますし、1イニング投げるとなった時に選択肢が増えすぎると自分の中で迷いが出てしまう。先発の時に投げていたスイーパー、チェンジアップもキャッチボールでは投げてはいるんですけど、あえて試合で使わないようにというか、選択肢を増やさないようにしています」とその意図を説明する。
チームは苦しい戦いが続くが、中森にとっては1試合1試合が将来につながる大事な経験、実戦の場となる。「僕は今まで通り任されたイニングを無失点で抑えられるように頑張りたいと思いますし、仕事なので、そこはしっかりオンオフを切り替えてやっていきたいと思います」。チームとしても、今夜こそ中森がマウンドに立つような場面を作り、神戸に集まったマリーンズファンの前で勝利を届けたいところだ。
取材・文=岩下雄太