日本ハム戦で体調不良のため降板した西武・今井達也 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第27回

 真っ黒に日焼けした顔と、額に浮かぶ玉の汗。

 ギラギラした太陽の下でこその高校野球。

 我々が長年、当たり前のように思っていたスポーツシーンが変わろうとしている。いや、すでに変わってきている。

 炎熱の日本列島。また7月の上旬だと言うのに連日の猛暑で35度近い記録的な暑さが各地を襲う。例年より2週間近く早い梅雨明けも宣言され、もはや我が国は亜熱帯圏に突入した感さえある。

 異変は、高校球児に限らない。

 交流戦が開けた先月27日、西武の今井達也投手が日本ハム戦に先発したが4回途中に緊急降板。理由は「熱中症」だった。西武ではその直後から滝澤夏央選手が熱中症で、古賀悠斗、元山飛優選手も体調不良で戦列を離れている。

 本拠地のベルーナドームは、ドーム球場でありながら、球場全体が外気から遮断されているわけではなく、この構造が夏の蒸し暑さを増し、逆に春や秋口は寒さを助長すると言われている。

 西武勢だけでなく、今月3日には巨人の吉川尚輝選手が体調不良で2年ぶりの先発欠場。門脇誠選手も脱水症状で途中交代。さらに4日の対ヤクルト戦では中日の大野雄大投手が完封目前の9回途中で左脚がつって無念の降板を余儀なくされている。同日には日本ハムの伊藤大海投手も楽天戦の5回に降板、試合後に新庄剛志監督は「プチ熱中症」とその理由を明かしている。

 これらの事象はすべて、ドーム球場で起こっている。炎天下の屋外でなくてもこれだけの体調不良者が出る。キャンプや日頃の練習で鍛え上げているアスリートでさえ、この有り様だから、今年の夏の異常さが覗える。

 高校野球では夏の全国大会に向けた地方予選が始まっている。

 全国高等学校野球連盟(高野連)では、すでに様々な時代に即した改革が実践されている。タイブレークの導入や、5回終了時に水分補給を兼ねた「クーリングタイム」も実施されている。いずれも炎熱対策の一環である。

 今年の6月30日からは新たに「7イニング制」に対するファンアンケートを開始した。野球と言えば9回制が当たり前に実施されてきたが、猛暑の中で2~3時間に及ぶ戦いが適正なのか? すでに国際試合などで採用されている7回制にした場合の問題点はどこにあるのか? など、別途全加盟校へのアンケートも実施されると言う。

 手元にスポーツニッポン新聞が実施した「7回制の賛否を問うアンケート」の結果がある。(6月3日付)高野連より一足早く、ファンの意向を調べたものだ。

 結果は217人中209人が「反対」で、「賛成」はわずか8人。実に96.3%が9回制を支持した。同紙によれば、アンケートの実施場所は春季高校野球関東大会が行われていた茨城・水戸の球場。野球に関心の高いファンや関係者が多くいる場所とは言え、予想以上に7回制への拒否反応は高い。まだまだ「暑さより熱闘」なのか?

 一方、高野連では例年行っている高校球児の競技人口調査も併せて発表している。今年度の公式野球部員数は12万5381人で前年から1650人減。同じく加盟校も3768校で前年比30校減と歯止めはかからない。

 人口減少問題や公立校の監督、部長らの働き方改革に加えて、猛暑の中の練習など時代に合わせた改革は求められる。

 真夏の甲子園が問題なら、ドーム球場に移行したら? と言う意見もある。炎天下の試合を避けて、朝と夜の二部制も検討されている。いずれにせよ、かつての常識が通用しなくなっている時代なら、高野連だけに任せていい問題ではない。文部省やスポーツ庁、さらには国全体が変革に舵を切る時がやってきている。

 6月には王貞治ソフトバンク球団会長らが提唱する「球心会」が設立された。野球の振興をさらに進めたい王会長の願いは、競技人口の拡大と、アマからプロまでが一体となった組織作りにある。長年、横の連携がなく野球界のウィークポイントと指摘されてきた問題だ。

 熱中症で頭が回らない? いや、そんな時だからこそ次なる一手が求められている。プロ野球選手までバタバタ倒れる異常な時代だ。

 メジャーでは移動日の練習は軽めが常識。日本でも練習時の短パン着用オーケーの球団も出て来た。この先はクーラー快適なロッカーとグラウンドに出て運動を始めた時の温度差をデータ化して選手の体調管理に生かす手立ても必要になって来るだろう。

 少なくとも、この先の戦いで熱中症の選手が出て、ペナントの行方まで左右することが無いよう祈るばかりだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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