中日・中田翔 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第33回

 夏の高校野球が熱戦を展開する今月15日、中日の中田翔選手が今季限りでの現役引退を発表した。かつては甲子園を沸かせた怪物が、この時期にユニホームを脱ぐ決断をしたのも、時の流れを感じずにはいられない。

 大阪桐蔭高時代には、けた外れのパワーと投手としても150キロの快速球を記録して桐蔭高黄金期を牽引した。ドラフト1位で入団した日本ハムでも早くから頭角を現し四番に定着。3度の打点王に輝くなど順風満帆な数字を残して来た。

 18年間の通算成績は打率.248、本塁打309本、打点は1087。打撃だけでなく一塁の守備もうまく5度のゴールデングラブ賞を獲得している。

 腰痛からの復活を期した今季は、大半をファームで送り、今月に入って一軍登録されたが、わずか5試合のベンチ入りと3打席の代打出場で12日には再び登録を抹消され、引退を決断した。

 試合出場の場を求めて昨年、巨人から中日に移籍したが、故障が長引く間に、中日では細川成也、上林誠知選手らがレギュラーに定着。今季は新外国人のジェイソン・ボスラー、マイケル・チェイビスらも、活躍しだしたことで居場所を失った格好だ。

 中田のプロとしての軌跡を見ていくと「光と影」がはっきりと分かれている。

 一見、強面の風貌ながら後輩たちの面倒見が良く、「中田会」は試合後の食事だけでなく時には広島の実家まで招待したと言う。

 自らの打撃を「レベルが違う」と言う意味で「レベチ」と表現するなど、まさに日本ハムのお山の大将だった。

 そんな「大将」が、お山から転げ落ちたのは21年のこと。チームメイトへの暴行が発覚して無期限出場停止処分から8月には巨人への緊急トレードが発表された。窮地に立たされた主砲に、当時の栗山英樹監督が、巨人の原辰徳監督に懇願して新天地での再出発が決まった。

 翌22年には四番として24本塁打を記録するなど、完全復活を期待されたが、この頃から古傷の腰痛が悪化。ある年は頑強な体を手に入れようと、筋力トレに励み、10キロ以上の増量に挑戦するが、翌年には腰への負担を減らすために13キロの減量をするなど、非科学的な試行錯誤を繰り返し、結果は出せなかった。

 巨人時代には弟子入り志願してきた秋広優人選手に猛特訓を課したが、その秋広も伸び悩むと、今季途中でソフトバンクにトレードで移籍していった。

 中田の打撃成績を見ていくと、暴行事件前の20年までに1319安打、257本塁打に対して、巨人に移籍する21年以降引退を決意するこの5年間では260安打、52本塁打と成績は急落する。

 この要因は故障によるものと考えられる。だが、日本ハムでそのまま「大将」でいたら、もう少し2000本安打や400本塁打に近づけたのではないか?

 親分肌の男。鉄拳の代償は「大将」のレッテルまで奪ってしまった。

 日本ハム時代の恩師でもある栗山英樹氏(現同球団CBO)は、教え子の引退に接してコメントを残している。

「中田翔と言う選手の才能を誰よりもわかっていました。もっともっと凄い数字を残せるはずでした。それが果たせなかったのは、半分はこちらの責任。そして半分は中田翔の責任だと思っています」

「選手として終わった時、この先どう進んでいくのか。私はこれからも中田翔に文句を言い続けます」

 球歴や人柄は元西武の清原和博氏にどこか似通っている。生き様も不器用そうである。だから、栗山氏の助言もまだ必要だろう。


 36歳の再出発。前途に幸あれと願うばかりだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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