7月30日にマジック「39」を点灯させて以降、阪神は手綱を緩めることなく、2年ぶりの優勝に近づいている。
阪神は8月に入ってからも12勝6敗1分と好調を維持。2位の巨人が巻き返しているイメージもあるが、11勝9敗なので、両者の差は広がるばかりだ。阪神は2年ぶりの優勝に向けて、勢いが衰える気配は全くない。
その阪神を牽引している一人が、5年目を迎えた佐藤輝明だ。佐藤輝は今季3番打者としてスタートしたが、4月中旬以降は4番に定着。例年以上のペースで三振の山を築いてはいるものの、本塁打と打点の二冠王を独走中である。
佐藤輝は、24日のヤクルト戦で今季32号を右翼スタンドに叩き込んだが、これが9試合ぶりのアーチだった。この1本でリーグ本塁打部門2位につけるチームメートの森下翔太に14本差をつけた佐藤輝だが、一度打ち始めると止まらないタイプの打者だけに、再び量産態勢に入る可能性は高い。そうなれば2位以下との差はさらに広がっていくことになるだろう。
そんな佐藤輝の視界にうっすらと見えてきたのが“ダブルスコア”での本塁打王だ。セ・リーグとパ・リーグの2リーグ制となった1950年以降、2位の選手に2倍以上の差をつけて本塁打王に輝いた選手は一人もいない。
最も惜しかったのが、2011年に48本塁打を放った中村剛也(西武)で、25本塁打で2位に食い込んだ松田宣浩(ソフトバンク)に23本差をつけた。ちなみに、この年は新たに導入された統一球の影響でプロ野球全体の本塁打数が激減していたが、「投高打低」という点で今季のプロ野球と重なる部分もある。
それ以前には、1966年に王貞治(巨人)が48本塁打を放ち、26本で2位に並んだ江藤慎一(中日)と長嶋茂雄(巨人)に22本差をつけたことも。ただし、“世界の本塁打王”と呼ばれた王でさえ、現役時代は一度も“ダブルスコア”での本塁打王はなかった。
王や中村も達成できなかった異次元の記録。佐藤輝は残り29試合でどこまで成績を伸ばせるか。その先には、2年ぶりの日本一に加えて、MVPや個人タイトルなど多くの“ご褒美”が待っている。
文=八木遊(やぎ・ゆう)