「ジャパンに向けてです」。
11月15日と16日に開催される『ラグザス侍ジャパンシリーズ2025 日本vs韓国』の日本代表に選出されたロッテの種市篤暉は、8日から始まった秋季練習に参加しているが、代表戦に向けて準備を進めている。
今季の種市はオールスター前は14試合・86回1/3を投げ、3勝6敗、67奪三振、防御率3.65だったが、「一人でメカニックのことを考えてやれていたのが一番かなと。個別を長くしました。全体練習を早めに上がって、30分、1時間考える時間を作るようにしました」とストレートの威力が戻ったオールスター明けは、10試合・74回1/3を投げ、6勝2敗、94奪三振、防御率は脅威の1.45。
10試合中9試合でクオリティスタート(6回3自責点以内)を達成し、QSを逃した10月4日の日本ハム戦は、もともと登板イニングが5回と決まっており、その中で5回を無失点に抑えた。9月27日の日本ハム戦で1試合自己最多の15奪三振を記録するなど、2桁奪三振をマークした登板はオールスター明けは4度、8月の月間41奪三振、9・10月の月間48奪三振はリーグトップの記録だ。
チームは悔しい結果に終わったが、オールスター明けの投球内容を見れば、納得の代表選出だ。種市は新人時代から野球を上手くなろうという向上心、探究心は変わらず持っている。常に上を目指す姿勢が、春先苦しんだ中で、夏場以降の活躍の解決策につながったのだろうかーー。
「日々投球のヒントを練習で見つけるようにしています。毎日1つか2つ終わった後にテーマを決めて、次の日にやってそれをまた良かった、悪かったで、改善していく。それがシーズン中は楽しかったですね」。
頭を使って日々練習しているからこそ、ひらめきやヒントが見つかってくる。それをプロ入りから毎日コツコツと積み重ねているから今がある。
種市はプロ入りから“圧倒的なピッチャーになりたい”と常々口にしてきている。今年の2月9日の石垣島春季キャンプの取材でも、「昔から言っていますけど、圧倒的なピッチャーになりたい。良いピッチャーじゃなくて、エグいピッチャーになりたい。こいつまとまっているなという感じじゃなくて、球えぐいな、フォークやばいなとかそっち系の他の人よりも突出したピッチャーになれるように。フォークもそうですけど、真っ直ぐも平均球速を上げたいと思って頑張っています」と話していた。
2025年10月12日取材時点で、“圧倒的なピッチャー”、自分が目指しているところに近づいてきている感覚があるか訊くと、「本当にちょっとだけ、はい」と謙虚な答えが返ってきた。オールスター明けの投球を見れば、日本を代表する投手の一員に仲間入りしたように見えるが、まだまだ今の種市篤暉に満足していない。
この秋も日本代表に向けての準備を進めているが、その中でどういう部分に力を入れて練習していきたいか質問すると、「野球を上手くなるためにやっているので、シーズン中と変わらないっすね」と返ってきた。24時間365日野球のことを考えている種市に対して、かなり失礼な質問だったと筆者自身反省。
ドラフト6位でプロ入りし、ひとつひとつ階段を登っていく中で、トミー・ジョン手術をし、長期離脱した時期もあった。完全復帰した23年以降、毎年進化した姿を見せ、8月以降の種市は投げるたびに、ファンを魅了した。来年の3月に開催されるWBC日本代表入りするためにも、11月に行われる侍ジャパンシリーズでしっかりとアピールする必要がある。侍ジャパンシリーズに向けて、最高の準備をして、最高のパフォーマンスを発揮してほしい。
取材・文=岩下雄太