走塁練習中、選手を集めて指示を送るロッテ・伊志嶺コーチ(撮影=岩下雄太)※撮影日:25年10月14日

 ロッテはZOZOマリンスタジアムで行われている秋季練習で、走塁練習に力を入れている。

 伊志嶺翔大コーチは「まずは積極的に次の塁を狙っていく意識を。それには打球判断、盗塁の質を上げるだったり、そういうのを意識してやっています」と明かす。

 ロッテといえば、井口資仁氏が監督時代に走塁への意識がチーム全体で高まり、“1つ先を狙った走塁”、“相手の隙を突いた走塁”で1本の安打で一、三塁、一塁からホームに還ってくれば、打者走者も打った安打に満足することなく、外野手がホームに送球している間に一塁から二塁に陥れることが何度もあった。

 足の速い選手だけでなく、昨季限りで現役引退した体重100キロを超える井上晴哉さんは現役時代、「走塁というのは相手の隙というか動き次第でなんとでもなる。走塁では、みんなと一緒にできるように自分で心がけています。あいつ無理か、いけないかではなくて、いってみてトライというのはまだまだやっています」と話すなど、“走塁への意識”はチーム全体に浸透していた。

 吉井理人前監督時代も、1年目の23年と2年目の24年は“足を使った攻撃”自体は減っていたが、相手の隙を突いて1本の安打で一気に一塁から生還したり、相手の守備の乱れを突いてホームインする“らしい走塁”はあった。チーム盗塁も23年がリーグ4位の73盗塁・成功率はリーグトップの.777、昨季もチーム盗塁数はリーグ5位の64だったが成功率は.821だった。

 最下位に終わった今季は、チーム盗塁数は昨年よりも多い68盗塁だったが、成功率は.723。センター後方のフライアウトで二塁走者が三塁にタッチアップできない場面や、1本の安打で一塁から三塁、一塁からホームに生還というシーンも少なかった。今年1年で判断力を含めて、走塁意識が落ちた印象を受けた。伊志嶺コーチは「負けているとそうやって見られがち。基本的には意識を持たせるようにしていますね」とのこと。

 今季は荻野貴司、角中勝也、中村奨吾といった走塁判断の上手い選手たちが一軍を不在にしている時間が長く、若手選手が積極的に起用されていたこともあり、走塁の意識付けという部分が少なかったのだろうかーー。

 「走塁は意識づけなので、積極的にいこうと思う意識を持てるか、ブレーキを強めに踏むことになると、どうしても消極的になるので、そこの思考を次の塁、次の塁という意識づけをやっているところです」(伊志嶺コーチ)

 若手選手に対して、走塁練習で伝えていることについて伊志嶺コーチは「若い選手に限らず、経験なので、こういう打球だとヒット、こういう打球をアウトというのを数多くやるしかない。若い選手はベテラン、中堅より経験が浅いというところで、バッティング練習の時でもそうですし、試合でも経験をしてどんどん経験値を上げていって欲しいなというところで数多くやらせるようにしています」と、“経験”の重要性を説いた。

 走塁練習だけでなく、シーズン中と同じように打撃練習の時も打者が打った打球に対しての判断の練習を秋季練習でも取り組んでいる。伊志嶺コーチは「特に打球判断よく、尚且つもう2つ塁を狙う意識をやっています」と話した。

◆ 髙部「強いチームがやっていること」

 “走塁意識”の高い選手で言えば、髙部瑛斗が当てはまる。チーム最多の20盗塁をマークし、“1つ先を狙う走塁”、“相手の隙を突いた走塁”が上手だ。

 今季もセンター前安打で、センターがダイレクトでホームに送球した間に二塁に陥れたり、9月22日の日本ハム戦では、2-0の6回一死二塁でソトの三ゴロでサード・郡司裕也がファーストに送球する間に二塁から三塁へ進塁した。

 髙部は「行ける部分もたくさんあると思いますし、平凡な相手の隙、空間を狙って次の塁に行くのは、日ハムさんもそうですし、強いチームがやっていること。それを僕らはやって行かないと、ああいうチームには追いつけないと思います。自分だけではなく、チーム全体で浸透していけたらなと思います」と危機感を示した。

 14日まで秋季練習に参加していた安田尚憲が、早速19日のフェニックスリーグでの楽天戦で、得点には繋がらなかったものの、暴投で捕手がわずかに弾いた間に一塁から二塁を陥れる好走塁を見せた。

 Aクラスに入っていた時は打てなくても、“相手の隙を突いた走塁”、“1つ先を狙った走塁”で得点し、そのリードを投手陣が守り切り勝利を重ねていた。今季限りで退団した大塚明氏がコーチ時代、口酸っぱく試合前練習で、試合のための走塁練習を行うよう選手たちに伝え、高い意識で取り組んできた。若い選手が増えた来季、もう1度、原点に立ち返った“足を使った攻撃”で得点を奪い、相手にいやらしさを与えていく。

取材・文=岩下雄太

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