「あんまり何もしていないイメージですね」。
ロッテの田村龍弘はプロ13年目の今季18試合に出場して、打率.158、1本塁打、3打点の成績で終えた。
出場機会は限られたが、出場した時の存在感はさすがだった。6月13日のヤクルト戦、4-4の5回からマスクを被り、八木彬(1回・無失点)、横山陸人(3回・無失点)、鈴木昭汰(1回・無失点)の5イニングを無失点に抑える好リードを見せれば、6月22日のDeNA戦は試合序盤から乱打戦となり、10-9となった6回裏の守備から途中出場し、横山(2回・無失点)、鈴木昭汰(1回・無失点)、中森俊介(1回・無失点)のリレーで、4回と5回に3点ずつ挙げていたDeNA打線を6回以降は無安打に封じ込んだ。
スタメン出場した7月12日の西武戦は1-5で敗れたが、同日に先発した種市篤暉は「西武戦でタムさん(田村龍弘)が大事なカウントの時に使ってくれて、カウントが取れましたし、ああいう使い方をしたら見逃してくれるんだなと分かったので、オリックス戦もカーブを試合の力感でどうやってカウントが取れるのかというのを勉強しながら投げたいと寺地と話をしました」と同試合は7回1/3を投げ5失点も、寺地隆成とバッテリーを組んだ7月19日のオリックス戦は序盤からカウント球でカーブを効果的に使い7回無失点で4月23日の西武戦以来となる3勝目を手にした。
7月12日の西武戦以来の出場となった7月21日のオリックス戦では、移籍後初バッテリーとなった石川柊太の良さを引き出し、6回二死まで1人も走者を出さず。試合序盤はストレートとカーブ主体も、5回は9球中8球、6回は26球中21球が変化球と、変化球主体の投球となった。
石川は「自分はまっすぐをいきたいと言っていたところを“こっちでいきましょう”という話もありましたし、そこは任せてしっかり投げられるようにというところは話しながら投げられました。うまくリードしてくれたなというところですね」と田村に感謝。
田村は石川を7回1安打無失点、2-0の8回は横山、9回はこれまで何度もバッテリーを組んできた益田直也と、オリックス打線を1安打無失点に抑える好リード。
今季数少ないチャンスで自身の持ち味を発揮した田村は、「与えられたところというのは自分で決められないので、出た時にどう仕事をするかが大事。今までできなかったこととか、できることとか色々あるじゃないですか。当たり前のことだとか。そういうことをしっかりすることだけは意識していましたね。自分の持っているもの以上のものを出そうとしても良いことはない。自分ができること、当たり前のことを任せられていること、色々あると思うんですけど、そういうのをしっかり丁寧にこなすことだけ意識してやりました」と、自分のできることに力を注いだ。
日々の積み重ね、準備がパッと試合出場した時に好結果に結びついたのではないだろうかーー。
「今年は寺地、去年は(佐藤)都志也がレギュラーとして出ていましたけど、あいつらに求められていることと、僕の求められていることが違う。逆に僕にはできないことを寺地や都志也ができることも多いですし、あいつらができないことを僕ができることもあると思います。できることというのを任せられていることを理解して、僕は寺地とか都志也みたいにポンポン打てるわけではないので、なんとか守備でリズム良く、最少失点でというところを求められていると思います。そこを意識して常に試合に出ていない時からベンチで出ているつもりで見たりというのは意識していますね」。
その中で、ファームで富山紘之進捕手を取材した時に「田村さん、柿沼さんにもアドバイスもらったりして、球種の使い方だったり、教えてもらえるので次の試合でもそういうことを活かすためにノートにまとめて、それを意識してやっていますね」と田村から配球について教わったと明かしている。
田村は今季ファームで過ごす時間もあったが、その中でもチームのために貢献できることを考え行動していた。
田村は「一軍で試合に出る、レギュラーで出るというところは毎年目指してやっているところではありますけど」と前置きをした上で、「どうしても試合出場というのは少なくなっているのが現実。自分のやってきた経験というのは、そんなに威張れるほどの経験、実績ではないですけど、少なからず今ロッテで出ているキャッチャーの中では、経験がある方だと思う。それが正しいとか間違っているとかは別にして、自分で経験してきたことを若いキャッチャー陣に“俺の時はこうだったけど、こうだったよ!”とか、“よく俺もそういうことで失敗したことがあるから、こうの方がいいと思うよ!”、自分の失敗した経験を教えることができますし、もちろん自分が成功した経験も教えることができる。あいつらより失敗の経験も、成功の経験もしているわけなので、寺地だけじゃなくて、都志也、富山だったりというところには伝えていかないといけない立場になってきたのかなと思いますね」と、後輩たちに自身の考えを伝えている理由について説明した。
今季チームは最下位に終わり、美馬学が現役を引退し、荻野貴司、石川歩、澤村拓一といった長年マリーンズを支えてきた選手たちが現役続行を目指し退団。気がつけば、田村も年齢的にはチームで上の方になってきた。田村自身、若手選手との接し方の部分で何か変えたりしているのだろうかーー。
「俺はないですね。来年32歳。まだまだベテランではない。全然中堅くらいだと思うので、うちは若いのが多いので年上になりますけど、基本的に僕のことを(若い選手たちが)舐めてるので(笑)。ボスじゃないですよ。お〜いみたいな感じなので、藤原、髙部、西川史礁、山本大斗、全然舐められてるっす。変えることはないです」。
来季からはサブロー新監督が就任する。「(サブロー監督は)厳しい方なので、いいもの、悪いものはっきりしていると思う。良かったら使ってくれるし、悪かったら使ってくれない。本当にわかりやすい監督だと思うので、やれと言われたことをやるだけですね。“9回にいけ!”と言われても、そこに必死にやりますし、難しいですけど、ただ本当にね、今年の2月から口酸っぱく丁寧にやれとずっと言われてたんですよ。お前は丁寧にやれ、雑になるなと言われて、それだけ意識してやっていたので、丁寧にやっていきます」。
来年プロ14年目を迎える田村龍弘。若手にはない経験という武器で、チームを支えていく。
取材・文=岩下雄太