日本時間11日朝、メジャーリーグは両リーグの新人王を発表。ア・リーグは今季36本塁打を放ったニック・カーツ(アスレチックス)、ナ・リーグは捕手のドレーク・ボールドウィン(ブレーブス)がそれぞれ一生に一度の栄誉を手にした。
左投げ左打ちの一塁手、ニック・カーツは昨年のドラフト1巡目(全体4位)でアスレチックスから指名を受け、1年もたたない今年4月下旬にメジャーデビュー。昇格して17試合目にメジャー初本塁打を放つと、5月下旬以降に自慢のバットを爆発させた。
オールスター明けの7月下旬には史上最年少で1試合4本塁打を達成。4年連続負け越しに終わったチームの陰で、117試合に出場し、打率.290、36本塁打、86打点と上々の数字を並べた。
新人王の投票では、ライバル勢を抑えて、投票した30人の記者全員から1位票を獲得。2028年シーズンにラスベガス移転を見据える“借りぐらし”のチームに希望の光りをともした。
ただ、カーツはデビューがやや遅かったこと、夏前に約2週間の離脱があったことなどもあり、僅かに規定打席(502打席)には到達せず。それでも489打席で、長打率と出塁率を足したOPSは1.000を超え、1.002をマークした。
新人王の有資格選手が400回以上打席に立ち、OPS1.000を超えるのは、カーツが史上8人目。レッドソックスのレジェンド選手、テッド・ウィリアムスを筆頭に錚々たる顔ぶれが並んでいる。
◆【OPS1.000超えの新人王有資格選手(400打席以上)】
ルディ・ヨーク(タイガース、1937年) 1.026
テッド・ウィリアムス(レッドソックス、1939年) 1.045
バーニー・カルボ(レッズ、1970年) 1.004
アルバート・プホルス(カージナルス、2001年) 1.013
ライアン・ブラウン(ブルワーズ、2007年) 1.004
アーロン・ジャッジ(ヤンキース、2017年) 1.049
ニック・カーツ(アスレチックス、2025年) 1.002
1970年のカルボ以降は30年以上にわたって、達成者が出ていなかった。しかし、2001年にプホルスが31年ぶりに大台にのせると、2007年にブラウン、17年にジャッジがそれぞれ1.000超えを果たした。
特にプホルスは2022年限りで引退するまでに通算703本塁打を放つなど、歴史的な打者に成長。そのプホルスと世代交代するように現れたジャッジは、2022年にア・リーグのシーズン最多記録となる62本塁打をマークすると、24年に58本塁打、今季も53本塁打と、プホルスをしのぐペースでアーチを量産している。
そのジャッジ以来、史上8人目の快挙を成し遂げたカーツもまた、彼らと同じ軌跡を辿ることになるのか。才能あふれる長距離砲の今後に要注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)