ロッテ・吉川悠斗[撮影=岩下雄太]※撮影日=2024年11月3日

 ロッテの3年目・吉川悠斗は支配下登録期限最終日となった7月31日に支配下選手登録を勝ち取ると、8月1日の西武戦でプロ初登板、8月21日の楽天戦でプロ初先発・初勝利を手にした。

 吉川は25年シーズンに向けて、オーストラリアのウインターリーグに参戦し、「先発ということだったので、長いイニングを投げることを目標に、日本とオーストラリアというところで環境の違いとか、コーチの教え方の違いとかもあるので、そういうところを吸収して、自分のピッチングをより良いものにすることを一つのテーマに、取り組んではいました」と先発として実戦経験を積んだ。ウインターリーグは、3試合・14回を投げ、2勝1敗、奪三振はイニングを上回る15、防御率3.86の成績を残した。

 2月は都城キャンプで過ごし、シーズンが開幕してからは3月18日のオイシックス戦、続く3月26日の楽天戦ではリリーフで登板。3月26日の楽天二軍戦では、「風が強くて、純粋に長いこと一本足で立っていると風が来ていると対応できないからです」と走者がいない時にノーワインドアップではなく、セットポジションから投げ、工夫を凝らした。

 今季3度目の登板となった4月10日の巨人二軍戦では今季初先発し、5回を投げ無失点に抑え、今季初勝利。続く18日のヤクルト二軍戦では6回2/3を投げ、2失点にまとめ2勝目を手にした。

 「7回を投げたのはこの前が初めてだったと思うんですけど、長いイニングを投げていたのは高校3年が最後だった。2、3年空いていると言うのもあって体力的にも厳しいというか、今ひとつという感じはしましたね」と課題点を口にした。

 昨季、ストレートを投げる上で、上半身と下半身の連動性を重要視していたが、そこについても「連動ができているかはわからないですけど、強い球が投げられているので、引き続きフォームの安定、練習をしっかりしていけたらなと思います」と明かした。

 ストレートともに投球を支えるチェンジアップ、スライダーについては「今のところはしっかりできているので、その2つあっての真っ直ぐというところもある。ある程度というか、もうちょっと操れるように。現状はできてはいるんですけど、さらにというところで突き詰めていきたいところではあるかなと思います」と自己分析。

 3・4月は5試合・20回1/3を投げ、2勝1敗、18奪三振、防御率3.10と支配下選手に向けてアピールした。しかし、5月に入ると9日のDeNA二軍戦で6回8失点、24日の楽天二軍戦も勝利投手になったが、3回4失点とピリッとしない投球が続いた。

 6月29日の巨人二軍戦で、初回から6回まで毎回のプロ入り後自己最多の12奪三振、打たれた安打も僅かに1本と6回・87球を投げ、1被安打、12奪三振、1与四球、無失点と圧巻の投球を見せた。

 特に3-0の4回一死走者なしでリチャードに投じた初球のインコース見逃しを奪ったストレートをはじめ、ストレートが力強かった。吉川本人も「いつもくらいのイメージだったんですけど、うまいこと空振りとか取れていたので良かったかなと思います」と振り返る。

 武器であるスライダーは、3-0の3回先頭の湯浅大を2ストライクから縦に落ちるスライダーで空振り三振、3-0の4回二死走者なしで三塚琉生を2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた5球目の外角スライダーはカット系のような球だった。スライダーは何種類か投げ分けているのか確認すると、「指のかかり次第ですけど、というくらいですね」と教えてくれた。

 6-0の5回二死走者なしで笹原操希を2ストライクから空振り三振に仕留めたフォーク系の軌道のチェンジアップも良かった。「チェンジアップが決め球なので、そこで空振りをしっかり取れていたのはどの試合もそうですけど、いい感じではあるのかなと思います」と自信を見せた。

 7月9日の日本ハム二軍戦では、「特にいつも通り腕を振ってという感じで、いつも通りやっていたら大丈夫だと話はもらいましたね」と、経験豊富な田村龍弘とバッテリーを組んだ。初回制球に苦しみ2点を失ったが、6回を3失点にまとめ、5勝目を手にした。

 ファームで12試合(8先発)し、5勝2敗、防御率3.67の成績を残し、7月31日に支配下選手登録を勝ち取った。

 同日にプロ初昇格を果たすと、8月1日の西武戦で、二軍戦から中5日でリリーフ登板。0-8の4回から登板し、4回・67球を投げ、1被安打、3奪三振、5与四死球、3失点だった。8月5日の取材で吉川はプロ初登板について「よくなかったなと思います」と悔しがり、近いうちにリベンジ登板できるかなと思います」と意気込んだ。

 具体的によくなかった部分については「緊張するのはしょうがないと思うんですけど、緊張しちゃって、そのせいとは言わないですが、コントロールがついていないところがありました。2つ当てちゃったのもありますし、もうちょっとコントロールをしなきゃいけないかなと思いました」と反省した。

 よくなかったところだけではなかった。4イニングを投げて被安打はわずかに1。「村田選手は二軍でもちょいちょい対戦しているバッター。傾向とかは、なんとなくわかっている感じのバッターでした。何もわからないと言うよりかは、やりやすかったかなと思います」と、2-11の6回無死一塁で村田怜音を1ボール2ストライクから4球目の118キロスライダー見逃し三振に仕留め、プロ初奪三振を記録した。

 一軍の登板を経て、一軍と二軍の違いはどこに感じたのだろうかーー。

 「雰囲気は全然違いますし、肌感というか、失投でいかれるのは二軍より高いなと。より神経質になってやらなきゃなと思いましたし、神経質にやる中でこの前みたいにボールボールになると苦しくなっちゃうので、その中でどれだけ大胆に行けるかと思いますね」。

 一軍登板の目標を達成し、「思いのほか早く一軍登板が叶ったので、しっかり抑えてかつ初勝利を挙げられたらなと思います」と、次の目標にプロ初勝利を掲げた。

 プロ初先発となった8月21日の楽天戦、初回、2回と危なげなく三者凡退に抑えると、2-1の3回に失点したが、4回まで1安打1失点のピッチング。すると打線が4回裏に山口航輝の1イニング2本塁打が飛び出すなど、大量9点を挙げた。11-1の5回に3点を失ったが、5回4失点でプロ初勝利。

 「ああいう感じで終えてしまうと後味が悪いみたいになってしまうんですけど、もともとの予定が最初っから全力出していってあとは気合でなんとかするみたいな感じの自分の中でのプランだった。思っていた通りと言えばまあその通りになったのかなと思うんですけど、最後あそこを例えば最小失点で抑えたとか、辰己選手を内野ゴロでゲッツーが取れるだとか疲れてきた中でできる最善の選択っていうのをもっと増やせていけたらなと今日投げていて思いました」。

 「あと一軍と二軍は違うなと改めて思いました。雰囲気もそうですし、5回の先頭もそうだったんですが、いつもならここで三振だとかここで凡打だなというところで欲が出て、ボールが浮いてしまってヒットされて苦しい感じになってしまったのでそこでの持ち球の使い方っていうのをもうちょっと一軍レベルでアジャストしていけたらなと思いましたし、組み立てとかを変えていけたらなと思います」。

 プロ初勝利を挙げた後は、一軍登板がなく、ファームで2試合登板してシーズンを終えた。「同学年というだけなので、誰が見ても差が明らかだと自分でも思いますし、ライバルというのは差がありすぎるかなと思いますね」と話す、同学年の田中晴也とともに、来季は先発陣を盛り上げてほしい。

取材・文=岩下雄太

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