ロッテ・安田尚憲(撮影=岩下雄太)

 「出場機会は増えましたけど、ホームランが打てなかったことが一番悔しい。最後はホームランを打とうとしたスイングで、シーズン中に意識を変える難しさもあった。秋からは角度をつける練習しているので、しっかり来年をそれを出せれば」

 ロッテの安田尚憲は昨季の55試合を上回る93試合に出場したが、打率.243、25打点、本塁打は2年連続でなかった。

 25年シーズンに向けて、「バッティングコーチ、アナリストの方と話しながら、こういう方向性でやっていこうと話をして、それで自分もやっぱり時間をかけながらやらないといけないなと思ったので、今年は一人でやっていました」と自主トレは1人で行った。

 「考えられる時間が増えるので、この時期は。自分一人でやって、自分のできる、やれることをしっかりやることはやって、はい。集中していい練習ができたんじゃないかなと思います」と振り返った。

 2月の春季キャンプは都城組でスタートし、沖縄本島の練習試合から一軍に合流。2・3月の練習試合、オープン戦は23試合に出場して、打率.208(53-11)、5打点だったが、開幕を一軍で迎える。

 開幕から2試合守備固めで出場したが、4月2日に一軍登録を抹消された。ファームでは「練習量も多かったですし、サブローさんにもいろいろ指導していただいて、そこの1ヶ月半くらいはしっかりと野球に打ち込めたのかなと思います」と振り返った。

 「ずっと(バットを)短く持ってファームでもやっていたんですけど、ファームで過ごした最後の1週間、2週間くらいはもう1回戻そうとなって、堀さんとかとティーをしながら、もう1度前までやってきた形でやったら、ヒットも出だしたのでそれで戻した感じですね」と、再びバットを長く持つようになった経緯を説明。

 5月15日に再昇格を果たしたが、昇格前最後の1週間となった5月7日〜14日にかけてのファームの打撃成績は、13打数7安打、打率.538と打ち、5月4日のヤクルト二軍戦後に一時.217まで落ち込んだ打率も、14日のくふうハヤテ戦後には打率.268までアップ。状態を上げて再昇格となった。

 6月10日の広島戦では、玉村昇悟、塹江敦哉、長谷部銀次と昨季まで苦手にしていた“左投手”から安打を放ち、猛打賞を達成。安田は「1本目詰まったあたりだったんですけど、あの1本でいい感じが出たので」と、0-0の2回一死一塁の第1打席、玉村が2ストライクから投じたインコースのシュートを詰まりながらもライト前に運ぶ安打をきっかけに、「その後の打席も左ピッチャーに対して内容のある打席があったんじゃないかなと思います」と話した。

 この時期、左投手から打っていた理由については「今年は左ピッチャーの時も数多く、試合に出させてもらっているので、慣れという部分もあると思いますし、ファームでやっていた時も左ピッチャーとの対戦も多かった。その辺の慣れの部分もあるのかなと思います。今はまだ打席数も少ないので、なんとも言えないですけど」と説明。

 6月28日のソフトバンク戦、1-0の初回一死走者なしの第1打席、「最近ちょっとゴロが増えてきているので、あんまり良くない傾向。上沢さんを打った時のような打球を増やしていければいいなと思います」と、上沢直之が2ボール2ストライクから投じた5球目の148キロストレートライトオーバーに放った二塁打は非常に良かった。

 交流戦明けから『3番』の打順で出場する機会が増えたが、安田は「サブさん(サブローヘッドコーチ)からは『1日1本のヒットと四球を取ってくればそれでいいから』と言われているので、それを目標にして試合ではこなしています」と話した。

 1日1本の安打と四球を目標にし、プレーをしていたが、ファンが望んでいる長打がなかなか出なかった。シーズン中の取材でも、「長打は最近少ないので、もう少し増やしていけたらなと思います」とポツリ。7月13日の取材で「ホームランも長打も早く打ちたい」と話していたが、「ツーベースもどんどん増やしていけたらいいなと思いますし、その延長でホームランを打てたらなと思います」とその想いは変わらず。

 捉えた当たりがゴロにならないように打ちたいと話していたが、そこについても「最近ゴロは少なくなってきているんですけど、もう少し角度をつけられたらなと思います」とのことだった。

 長打もそうだが、マリーンズファンが安田に求めているのは“得点圏”での打撃。8月2日の西武戦、「チャンスでしたしフォアボールの後だったので初球から狙って積極的にいきました」と3-4の9回一死満塁で、平良海馬が投じた初球のセンター前に弾き返す値千金の同点打を放てば、翌3日には1-1の9回二死一、二塁の第5打席、佐々木健が投じた初球の147キロツーシームをセンター前に決勝の適時打。チャンスでのバッティングについて「あんまり変えないように。普段のいつも通りのことを意識しながらやっています」と平常心を貫いた。

 シーズン中にサブロー現監督から“1日1本の安打と四球”の指令を受けたが、最終的に1安打・1四球“を達成した試合は15。

 「シーズンの最初の方は四球も取れてたんですけど、ホームランを打てないとストライクゾーンで勝負してくるので、そうなるとやっぱり、ボールゾーンに来ないと四球を取れない。やっぱりまずはバッテリーに怖いと思われるような打者にならないとできないと思います。サブローさんからも目標を立ててもらってやっていましたけど、なかなか実践ができなかったので、ヒットだけじゃなかなか四球にもつながらない。大きいのをもう1回打てるようにしっかりやりたいと思います」。

 さらに安田は「シーズンの途中からサブローさんから“それはいいから(1安打・1四球)とりあえずホームランを打って”と言われていた。それも実現できなかったので、まずは本当に自分の中でも苦しんでいる部分でもある。早めに1本打てるように頑張りたい」と告白。

 10月に行われたドラフト会議で内野手登録の選手の指名がなかったとはいえ、フェニックスリーグで外野手登録の山本大斗がサードで出場したり、上田希由翔、池田来翔などライバルが多い。オフはソフトバンク・柳田悠岐に弟子入りし、技術的な成長をしていく予定。競争を勝ち抜くためにも、とにかく打つしかない。

取材・文=岩下雄太

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